ふがいない僕は空を見た [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
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感想・レビュー・書評

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  • R-18文学賞を受賞した「ミクマリ」を含む短編集。
    いや、最初の短編を読んだ時はどうしようか……とタイトル通り天を仰いだけれど、読み進めてみるものだな。
    後半の短編は好きでした。

  • 「セイタカアワダチソウの空」がよかった。少し「リバーズ・エッジ」を思い出したのはタイトルと空気感のせいか。田岡さんと福田くんのその後が気になる。ほかの作品も読んでみたい。

  • 章ごとに人物の視点が変わり、まるで違った印象を受けるのが衝撃的だった。
    登場人物の表面と内面を早く知りたくなって、頁を捲る手が止まらない。
    それぞれが抱えている問題が重くて読み進めながら苦しくなるが、立ち止まらないで少しずつ歩こうとする姿が印象的。
    特に卓巳と仲の良い良太の行動は、読んでいて切ない気持ちになった。
    読後感は重いけど、読み終わったら前を向こうって気持ちにしてくれる。
    面白かった!

  • 産院の息子、高校生の卓巳はコミケで半ば強引に連絡先を交換した
    本名を知らないあんずと名乗る主婦のマンションへ通う
    淫行、けれど卓巳には愛情がありある日それがぷつりと終わってしまう

    両親のいないあんずは義母の勧めるとおりに
    不妊治療を受け、流されるように毎日を生きている

    卓巳に好意を寄せている七菜には兄がいて
    宗教施設から帰ったあとずっと家にこもっている
    大雨が降り川が増水し避難勧告が出た日
    家へ送ってくれた卓巳と共に七菜の家族は
    家から出られなくなる

    街の人からどうしようもないやつばかりいる団地と言われる団地に
    良太は住んでいる、新聞配達とコンビニのバイトをし
    生活費を稼ぎながら認知症の祖母の面倒を見る
    バイト先の田岡さんに勉強を教えてもらいながら
    進学について考える

    卓巳の母、自宅で産院を営みたくさんの出産に立ち会いながら
    あんずとの一件を気にひきこもってしまった卓巳を心配する


    世界がすこしずつ、本当にすこしずつ動いていく
    誰かの気持ちも、世界も、すこしずつ

  • 序盤の描写である意味萎えかけたが、結果的には良かった。上手く感想が言えないのがもどかしいですが、とにかく最終話が個人的に好み。

  • 「ふがいない僕は空を見た」
    これは恋か。はたまた。


    <blockquote>
    ★ミクマリ
    ★世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
    ★2035年のオーガニズム
    ★セイタカアワダチソウの空
    ★花粉・受粉
    </blockquote>


    「ふがいない僕は空を見た」を漸く読みました。 5つの短編から連なるストーリーで、登場人物は、斎藤、あんず、松永、福田、あくつ、斎藤母と共通してます。


    色んな媒体で紹介されていたあらすじからすると濃厚な恋愛描写が先行してる感じで面白さが分からない小説かなと思ってましたが、読んでみるとちょっと違いましたね。


    当初は、濃厚な恋愛を経験しながら、思春期の主人公斎藤が、思春期ながらの葛藤に悩み、学び、成長していく様な明るいものかと思ってました。しかし、実際はそうでは無かったです。


    まず、松永が斎藤に抱く思春期ならではの甘酸っぱい恋愛の要素はあるものの、その斎藤は、10代の性にがっつく形ではなくなんとなくの流れで不倫に至り、相手をいつの間にか愛してしまう。不倫での恋愛から脱しきれない斎藤に対する松永の思い。どろどろ+甘酸っぱいで、結局、甘酸っぱさゼロな恋愛。強烈な性描写が多い為、官能小説みたい。


    2つ目は、明るいだけでは決してないということ。斎藤は勿論のこと、松永は天才肌の兄がいなくなったり、福田は、母子家庭で母はダメ人間且つ周りの環境は劣悪、あくつは短編主人公としてフォーカスされてないが(名前も平仮名のあくつ)、松永の親友でありながら松永が好きな斎藤を辱める行為を福田とせっせとしている。


    とにかく、皆もみな、何かしら暗い部分を抱えている。タイトルは、この暗い部分に対してどこか受け入れてしまっている自分に対してふがいない、そんなダメな自分から変わる為に空を見た、ってことを意味してるのかなとふと考えました。ま、ストレートに言ったらそりゃそうかってな感じなんですが。


    前半2編のどエロな描写で手を止めず、最後まで読んで見て欲しいです。個人的には、斎藤母の短編が良かったです。とりあえず斎藤、しっかりしろ。


    映画化されそうな題材だ。

  • いのちの話。短編集だけどそれぞれの話が繋がっていて、長編を読んでいる気分になった。「セイタカアワダチソウの空」がいちばん印象に残った。心から生徒思いの先生が子どもへの強制わいせつ罪で捕まるって、闇が深すぎるよなあ。でも、自分ではどうしようもない欲求というのがあるんだろうなあ。

  • はじめての窪美澄。
    水分をミクマリと読むんだとはじめて知った。
    母である前にわたしたち女です、と静かにでも確かに一冊を通して感じた。

    更年期で閉経を迎えた女性の話が印象に残っている。母の力が弱まって、家族もなんとなくバラバラになって、それでもある日やはり母は母なのだ、と子供たちを守ろうとするその力強さが女の強さなのだと思った。

  • はじめは濃いドロドロしたピンク色。後半からふんわりした淡いピンク色に変わった。

  • 登場人物みんな、おかしな一面を持っている。
    多分読者である私にもその一面があって、ギリギリのところで事件にならずに済んでいるんじゃないか。と思わされた。

    そして世の中には普通の顔をしていても、事件になるかならないかギリギリを保った人がきっと沢山いて、そういう人間の”どうしようもない”ところをこの作品はよく受け止めているなぁと思った。

    この手の話が一歩社会へ出れば間違いなく嘲笑の対象となる。
    しかし、多くの人が人間の危うさを実は感じているような気がして、それをこの作品は”こんなこともあるよね”と言うテンションで書いていて人を救う力がある小説だなぁと思った。


    この作品を読んで窪美澄さんが大好きになりました。

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著者プロフィール

1965年東京生まれ。2009年『ミクマリ』で、「女による女のためのR-18文学賞大賞」を受賞。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10」第1位、「本屋大賞」第2位に選ばれる。12年『晴天の迷いクジラ』で「山田風太郎賞」を受賞。19年『トリニティ』で「織田作之助賞」、22年『夜に星を放つ』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『アニバーサリー』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『夜空に浮かぶ欠けた月たち』『私は女になりたい』『ははのれんあい』『朔が満ちる』等がある。

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