100万分の1の恋人 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ※当時私が読んだのは、Kindle版ではありません(^^;

     恋人同士、不治の病、究極のラブストーリーと聞けば、ああ、あれねと思う人が少なくないでしょう。私も最初はそっち系のお話かと思ったのですが、読み進めていくうちに、その深さにどっぷりと浸ってしまいました。

     ※ちなみに本の帯には、究極ではなくて
     「極純のラブストーリー」と書かれています。

     あの作品の主人公たちは、たしか高校生でした。この作品は、大学院を卒業する年代の男女が主役になっています。その差はわずか6~7歳ですが、いろいろな意味で大きな違いがあると私は思います。

     あの作品の女の子は、白血病にかかってしまいました。この作品の女の子は、ハンチントン病のキャリアの可能性があるという設定です。正確に言えば、まだ発病していませんので、発病する可能性が焦点になります。

     こうした設定の違いで、似ているように思われた二つのストーリーが、ずいぶんと違った展開をしていきます。

     あの作品では、どうしても「女の子の死」という現実から離れることができません。そして高校生の男の子は、読者が期待する通りの理想的とも言える言動をします。自分が実際にそうするかどうかは別として、思わず二人を応援しながら熱くなる場面がいくつもありました。

     でもこの作品は、重い病気を扱いながらも、まだ発病していないこともあって、ハッピーエンドの期待感があります。途中で、二人の関係は揺れますが、それでも、きっといつかは思い直してくれるだろうと、期待しながら読み進めることができます。そういう安心感は、個人的には嫌いではありません。

     また、大学院を卒業する男の子の言動は、必ずしも理想的とは言えません。態度を決めかねる彼の姿が繰り返し描写されています。決してかっこよくはありませんが、私には好感が持てました。別の言い方をすれば、リアリティがあると思います。

     ちなみに、私は40歳のおじさんであり、既婚者で、二人の子どもがいます。そして、私のこの性格。どちらの話も涙をこらえて読みましたが、あえてどちらかと言うならば、こちらの作品の方が自分に引き寄せて読み、身近に考えることができました。

     人間って、そんな簡単に理想通りの行動なんてとれないんですよね。頭ではわかっていても、やっぱり悩んでしまう。それが自然だと思うのです。一生懸命彼女のことを思い、それでも二人の将来に不安を覚えてしまう、このお話の主人公に、私はとても共感します。

     この歳になって、家族ということを意識することが多くなった気がします。恋愛小説は若い人が読むものという頭がありますが、若い人はもちろん、私と同世代の人たちにもぜひ一読をお薦めします。

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