プロレス少女伝説 (文春文庫) [Kindle]

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  • クラッシュギャルズの時代の女子プロレスが題材ではあるが、丹念な取材をもとにした文化人類学論とも言える一冊。

  • クラッシュ・ギャルズ人気が最盛期を過ぎたころの三人のレスラーに焦点。
    ・天田麗文、デブラ・ミシェリー、神取しのぶ
    目次
    〇女子プロレス少女群像
    零文の言葉「わたしは、今、この国で生きています。一生懸命生きてますけれども、きっと、この国では死なないでしょう」
    〇彼女たちの歴史
    中国帰国子女としての生い立ち、モデルやいろいろな仕事をしたミシェリー、高校の頃、ケンカばかりしていたという神取。
    〇アメリカの女神たちと女相撲
    アメリカの女子プロレスは男子プロレスの余興。
    女相撲の歴史、大夫=力士の相撲と歌や踊りの二部構成での巡業。明治から昭和にかけての歴史。1949年に猪狩兄弟が女子プロレスを誕生させた。
    〇孫麗雯のプロレス
    長与千種が抱いていた同一団体の中だけでの戦い=マンネリ。ダンプ松本との試合
    〇神取しのぶのプロレス
    柔道からジャパンプロレスに入った。受け身の違い。ジャッキー佐藤とはじめに理想的な試合をしてしまった後悔。
    〇衝突!
    ギャラのことなど。
    〇ガイジンたちのプロレス
    今までなかったウチなる外人としてのメデューサの苦悩
    〇賭けの結末
    神取しのぶとジャッキー佐藤との試合。神取と長与、どちらも試合を求めていたが、できない苦悩。神取の契約問題などなど
    〇麗雯の帰郷とミシェリー家のクリスマス
    〇彼女たちのいま

  • 「1985年のクラッシュ・ギャルズ」で作者の柳澤健が、
    あとがきで「この本はあなたが書くべきでした」書いたのが、2001年に
    亡くなったノンフィクション作家の井田真木子。この作品で大宅壮一ノン
    フィクション賞を受賞し、その後もいろいろな女性たちを題材に突き刺さ
    るようなノンフィクション作品を多数リリースした才媛である。

    この作品は1990年に発売されたもの。
    いわゆるクラッシュ・ギャルズ時代の末期に、3人の女子プロレスラーを
    チョイスして構成された作品。その人選、今になって思うと神が降りてき
    たと考えるより他に無い。

    この作品のあと、天田麗文はFMWのリングでインパクト満点の復帰を果た
    し、我々のようなコテコテの男子プロレスファンから絶大な評価を得たし、
    メデューサはWWF・WCWで女子王者になるなど、完全にメジャーなプロ
    レスラーとして成功。そして、神取しのぶに関しては今さら書く必要も無い。
    半ば伝説となっている北斗晶との一戦を境に、日本国中の誰もが知ってい
    る女子プロレス最強の男となった。

    それぞれに複雑な事情を持つ3人のインタビューはもちろん興味深いのだが、
    やはり井田が神取から引き出した「心を折る」という言葉の存在感がもの凄い。
    プロレスはもちろん、総合やキック、そしてボクシングの世界でも実況アナ
    ウンサーが必ず使う表現であり、今では一般の人が普通に使用する慣用句ま
    でその地位を上げた言葉が、女子プロレス発信である、という事実。もちろ
    ん僕は知っていたが、改めてこの本を読むとその言葉の重さが更に深まる。
    そういう意味で凄い作品だと思う。

    一昔前の作品だから、一般の人が素材に古さを感じるのは仕方無いかと。
    ただ、僕と同じような立場のプロレスファンであれば、いつ読んでもゾクゾク
    すると思う。

    個人的に一つだけ書いておくと・・・。
    その後の天田麗文はもっともっと評価されて良い名選手。
    全女の凄さを一般のプロレスファンに強烈に突きつけた事実は歴史的偉業で
    あるし、邪道姫の異名を取った工藤めぐみをブレイクさせたのは、最高の
    ヒールだった麗文である。FMW以降の彼女が知りたい、という欲もある。
    誰か、書いてくれないかな?

  • 「心を折る」という言葉が最初に登場したのは本書だという。1987年7月18日、神取しのぶとジャッキー佐藤の試合を振り返って、神取が「あの試合のとき、考えていたことは勝つことじゃないもん。相手の心を折ることだったもん。骨でも、肉でもない、心を折ることを考えてた」と著者である井田真木子のインタビューに答えたのが広がったらしい。

    本書では、その神取のほか長与千種、中国残留孤児の娘だった天田麗文、米国から来たデブラ・ミシェリーの4人のレスラーの生き方を通して、女子プロレスの栄枯盛衰を描いている。

    対象にのめり込んでいくようなスタイルは著者独特のものがあり、それが一番発揮されたのが最初に紹介した神取のコメントのところであろう。このインタビューを記した数ページは異様な迫力があって、心に残る。

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著者プロフィール

1956 年7 月19 日神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。フリーライターを経て2冊目の著書となる『プロレス少女伝説』で91 年大宅壮一ノンフィクション賞、92 年『小蓮の恋人』で講談社ノンフィクション賞を受賞。その他主な著書に『同性愛者たち』『フォーカスな人たち』『十四歳』『かくしてバンドは鳴りやまず』など。2001 年3月14 日肺水腫により死去。享年44 歳。

「2015年 『井田真木子 著作撰集 第2集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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