- Amazon.co.jp ・電子書籍 (228ページ)
感想・レビュー・書評
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誰にも感情移入できないが、いい作品って結構少ないと思うんだけど、これは数少ないそれかも。
悦子が象徴的に変化する時代に取り残され
佐知子が急進で
緒方は保守
その結果生まれたモザイクな時代を万里子とニキが担っている感じ
薄明のトーンに貫かれてる感じとあとがきにあったが
これはかなり不気味さが強調されていた気がする。 -
何か事件とか派手なことが起きるわけでもないのに、グイグイ読まされ一昼夜で読み終えた。この人はこういう人で等の説明はなく、会話や語り手の印象で語っていく。ストーリーがあるわけではないので、なぜそのエピソードを回想し、語っていくのかを読み手が解釈していく面白さがある。淡々と狭い焦点で語られていく過去から現在の状況が合わさり、少しずつ語り手の言わんとする想いが滲み出てくる。全体にホラーめいた不気味さが終始漂っていて、それも惹きつけられる要因なのかなと思う。「浮世の画家」はスリラー、こちらはホラーな感じ。
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戦後にケーキ作っただの、一国の指導者を選挙で投票するだの、わけわかめなところが散見出来て、そこばっかり気になった。
でもこの瑣末な問題よりも私がもっとも受け入れられず理解できない根源は「娘が第一なの」といいながら
娘をないがしろにして自分の幸福を掴もうとする佐知子に対する主人公の距離感である。
義理の父親とはまだ若妻らしい愛嬌のある会話まで出来る主人公が佐知子には異様な遠慮がある。
異様な遠慮がありながら主人公は佐知子に魅入られているが如く唯々諾々である。
この態度の理由が「子供」「妊娠」「結婚」「自殺」「子殺し」「欺瞞」といったキーワードにつながっていくのだとは感じるけれども作者はそれらを一切明らかにしない。
文学過ぎて消化不良。 -
長崎出身の英国人である作者が、長崎と英国を舞台に描いた処女長編小説。会話から想像する過去の出来事は、どこかぼんやりと悲しい。戦争と原爆は、親子にどんな影を落としたのだろう。
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戦後の日本を舞台設定に、もうすぐ子供の生まれる女性と、親子で近くに住む女性の、薄明かりのような交流を、回想という形で書かれています。読み終わってなんというか、不思議な、説明しがたい小説でした。不透明な時代背景があり、その中を不透明なまま生きて行くこと。明確なもの(目標や現実)がないと生きていけないと考えている現代の私たちに対して、その意味を問いかけられているかのようでした。あなたは何をしたいのか、子供のために良かれとしたことは本当に良いことなのか。そもそも良いことをする意味はあるのか。そのスッキリしないまま物語は進み、時代が経ち、老年になった主人公が、いろいろな後悔を背負って、それでも生きている。それでも時間は進む。人生についての見方を問い直されたように感じました。
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外国に移住するまでの胸の内とかが描かれているが、誰が何をしようとしているのか、何が描かれているのかがわかりにくく、話に入り込めなかった。折を見てまた読んでみたい。ということで無評価。
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まだ戦災の深い傷が残る長崎に住む日本の女性と
30年程のちのイギリスの女性、
母娘ではあるが、
世代、国を越えて女性の生き方の変化・違いが興味深い。
戦後の日本の混乱期を、
日本人があまり気づかない切り口で綴っているのに感心する。