わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 1996年頃のドローン羊ドリーを思い出した。
    作品は2005年でドラマ化され、ちょっとだけ気になり、読んでみた。
    クローンの経緯は一切語られず、謎のままです。
    臓器提供クローン人と、支える介護クローン人の物語。

    タイトルの付け方、歌のワンシーンは上手いなと思った。
    日本人だと「little baby」でも小さい赤ちゃんと思うよね。

    人間らしさの表現で性的な表現もされている。
    なんとなく、アンネの日記を思い出した。

  • イギリスのヘールシャム地方で友人たちと青春時代を過ごした女性キャシー。彼女が語る過去は、ちょっと訳アリっぽい。

    「介護人」、「提供者」、「保護者」と呼ばれる人々が何人も登場するが、どんな職業なのか、詳しい説明はない。また、キャシーたち学生は寮で集団生活をしているのだが、その学生生活もなにか妙だ。彼らはどこから来たのか、卒業してどこへ去っていくのか。やたらとセックスと死が身近なのも気にかかる。

    なんとなく不穏で違和感だらけ。そんな感想を持ちながら、読み進めていけば、隠されたテーマにはなんとなく想像がつく。

    が、本作品のジャンルをSFミステリーとするにはちょっと違う。また、人類の未来と奢りを描いた社会派小説でもないし、もちろん若者の友情と恋愛を描いた青春小説でもない。

    作品ごとに全く違うジャンルに挑み続けるノーベル賞作家の新しい作品としか説明できない。これこそがカズオ・イシグロっぽさだ。

  • 不完全ながらも完結した世界で生きる子供たち。無垢で幼く、それが時に痛々しく思えもした。
    そういった純真な少年少女が育っている施設での青春が現実感を持って描かれる。
    序盤からそこはかとなく、破滅の色は見えていたけれど、こういった秘密があるとは…。ホラーではないけれど、今まで読んだ本の中で、もしかしたら一番怖い物語かもしれない。
    あらかじめ失われることが分かっている世界でどうしてこんなにも淡々と語ることが出来るのか。
    主人公の、ひいては作者の精神力に畏敬を抱いた。
    ロストコーナーのくだりは読み終えた後も強く心に残る。

  • とても面白かった。登場人物たちが子供の頃は無意識に、大きくなってからは自らの役割として淡々と己の境遇を受け入れているという世界たリアル。これ少年漫画だったら自己主張を声高に叫び自由を求め制度と戦うとこだよ。あと生殖ってやはり生物としての骨幹だなと感じました。

  • 主人公キャシーによって、なんでもない学校の日常が淡々と語られていく。ただそれだけで、起伏が無いなあ、と思っていたら突然出てくる「提供者」「ポシブル」という耳慣れない言葉。気になりながらも、なかなか全体像が現れて来ず、ようやく最終章で、ヘールシャムの生徒たちは臓器を提供するためのクローン人間であることが(そうだと明示されてはいないけど)理解できる。
    途中、じれったく思いながら読み進めたが、この物語は主人公がヘールシャムの出身者で語られ、最後の最後まで全体像を語らないことに意味があるのだ、と感想を抱いた。ヘールシャムの生徒達は結局は臓器を提供する提供者であり、結婚をして家庭を持ったり、提供者・介護者以外の仕事に就くといったことはない。生まれた時から可能性は閉ざされており、だからこそキャシーはその事実を嘆くこともない。そしてヘールシャムの教師たちは、時に生徒たちに向き合うことができず去っていく。こう書くと閉塞感しか見えないが、作中の登場人物は感情豊かに活動し、笑い、怒り、悲しむ。将来は提供者しかないが、その運命も彼らにとっては人生の一部で、いたずらに嘆かないといけないものではない。

    もしクローンができて、作中の提供者というシステムができたらどうなるのか、という思考実験にも見える。しかし私は、この物語は現在進行形で起こっていると考えている。例えば、チョコレートを食べるためにはカカオが必要だけど、そのカカオは児童労働によって栽培・収穫されていること、携帯電話を作るために、アフリカで紛争が起きていること。
    作中には提供を受ける人々がどんな様子なのか、どんな考えを持っているのかは書かれていないが、今、私達がチョコレートを食べて携帯電話を利用しながら、児童労働や紛争についてどれくらい意識的か考えると、だいたい想像はついてしまう。問題意識を持っている人は居るけど、大半は意識をしていない。意識しないで済むような仕組みが構築されてしまっている。

    本書は2回読むことを勧める。全てがわかった後で見えるキャシーの語り口は、何かどうしても悲しいものを感じてしまい、1回目と同様に読めなかった。

  • 「表現を記録として残すこと」が人間らしさだと思われてたのかしら。

    サッカーでゴールを決めて得意になること、マグカップにお茶を入れて夜中に2人で話すことは人間らしさではなかったのかな。

    動物の身体の一部が金属になっている絵を描くことは、主人公たちの境遇を表現しているようだった。
    金属は取替えできるし、人間らしさから遠いもののはずだけど。

    テレビ番組でAIが大喜利を作っているのを見たけれど、AIは人間じゃないんだよね。

  • 読む前は何も見てはいけない。少しでもネタバレがあると、面白さが損なわれる物語だと思う。

    白黒の世界で漂って悲しい気分。

  • ミーハーな 私は 受賞した作者だからと 
    読んで みました。

    はじめは なんだろう???
    学生? 寮??? 
    (日本ではドラマになっていたそうなので 皆さん周知のお話ですが 見ていないので はてなと 言う感じで 読みました)

    読み進めて やっと 主人公たちは クローン人間で いつかは 誰かに その肉体を与えて そして 使命を終える存在であると わかりました。

    多分 こういうことは 将来ありえそうですよね。
    病気で どうしてもその部分を交換せねばならない けれど 他人から 拒絶反応とかもあるので もらえない、となると 自分の細胞から コピーして 造れば良い。
    ひょえ~~ 細胞だけとか 組織だけとかを 作るならまだしも 人間を造っちゃって その人間を あっさりと 使ってしまう。。。

    この本がミステリー?って はじめは 疑問でしたけど 読んでいくうちに こういう事って あってはならないけど ありえそうで 怖いなぁと 思いました。
    まさに ミステリーでしたね。

    登場人物の名前が カタカナなので 最初は 男女がわからず混乱して読みました(笑)

  • 最初からずっと一抹の物悲しさがあって、それが払拭されることはなかった。

  • 主人公のキャシーが語り手のような書き方をしていて、外界と隔てられた施設で育った少年と少女の生活を振り返る形で淡々と語られていた。
    この話で強く印象に残ったのは、出てくる登場人物たちが暮らしていた施設での残酷な真実を知り抵抗をしようとするが、それはわずかな猶予を得るという根本的な解決にはならないことであり、無意識のうちに抗えなくなっているという恐ろしさが存在していた。
    読んだ後に単純な満足感だけでなく何か心にのしかかるようなものを感じる作品だった。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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