時の娘 [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 六十年前の作品らしいが、扱っている題材が十五世紀の話(英国王リチャード三世)なので、古さは全く感じられない。歴史ミステリーを敏腕刑事が推理していくその過程は思わず先を早く読みたくなるほど引き込まれてしまった。
    唯一の欠点は、英国の歴史なので、日本人には馴染みがないということ。まあ、これは自分の勉強不足がいけないだけだが。

  • イギリス史でリチャード三世といえば甥の王子二人をロンドン塔に幽閉し密かに殺した人物としてシェイクスピア(昔風に言えば沙翁)や夏目漱石の作品に登場する有名人。この本は入院中のスコットランド・ヤードの刑事が彼の肖像画や公的文書からそれがいわれなき罪であると解き明かすというミステリ。

    イギリス史、特に薔薇戦争に詳しくないと登場人物がよく分からないし、動けない探偵役のためにいろんな人が病室に現れて話を進めていくので出たり入ったりで盛り上がりに欠ける前半はだいぶもたもたしたが、真犯人に近づくところからはグラント警部同様に次の証拠はまだかと気がはやる。

    トニイパンディ(まことしやかに語られる偽史)は自分たちの身近でも日々起きているよなぁ。正しい意味で「トニイパンディを忘れるな」と戒めておきたいところ。

  • 英国民ならもっと楽しめたのでしょうが。
    私たちが「本能寺の変の真実は?!」とかいうレベルの
    イギリスの歴史なのでしょうね。
    ロンドン塔の二王子、確かに悲劇には違いないのですが、
    百年戦争、薔薇戦争、名前だけ知ってるレベルでは追いつけませんでした。自分の勉強不足ですが。
    それでも、ユーモアを交えて文献を抑えて推理を構築してゆくという質の高いミステリーには違いないのです!

  • 英国の歴史に興味がある人におすすめ

  • 名高い歴史ミステリ。ベッド・ディテクティブものでもある。歴史ミステリとして、探偵役の現実世界の(フィクションだけど)事件が何もないものというのも珍しい感じがする。リチャード3世が甥を殺した歴史的事実、とされる事件を、犯人追跡中に怪我をして入院しているグラント警部が警察の事件捜査の目で調査する、という筋。

    表紙にもなってるリチャード3世の肖像が、見れば見るほど語りかけてくるような気がしてきて、面白かった。
    訳者あとがきに曰く「読者の側でも史学を勉強しようとするのかミステリを楽しもうとするのかさっぱりわか、ぬ態度でこれを迎えたりするのは、まことに筋違いに思われます」というのは全く尤もなのだけれども、いかんせん前提となる知識が不足し過ぎていて、ついついWikipediaに脱線しながらの読書となってしまった。
    推理小説というものが知的遊戯、論理パズル的面白さを持つ娯楽だということを再認識させてくれる小説だった。おもしろかった!

  • 英国史でも悪評名高いリチャード3世の真相に迫る歴史ミステリーの名作は、オールタイムベストの常連と評されるほど。
    が、いかんせん、英国史に馴染みがなく、舞台である薔薇戦争自体も名前ぐらいしか知らないものからすると、本書を読むにあたっての当たり前とされる知識や背景といったものがないので、まぁ、わからん。これは個人の問題ですが。。
    情け程度の薔薇戦争の概要や家系図も焼け石に水。同じ名前の人物も多くて、誰のことを説明してるのか混乱すること多数。なので、途中から細かいことを気にせず読むことに。おそらく通常の半分も楽しめていないと思うのですが、それでも装丁にあるリチャード3世の肖像画に対する印象は、最初と最後でがらっと変わりました。
    見る目がないと言われればそこまでですが、先入観というか、人の印象というのはかくも脆弱なものなのだなと。そう思うと、歴史というのも切り口によって受け取り方も様々なので、似たようなものかもしれません。

  • 英国史上最も悪名高い王、リチャード三世——彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。

  • イギリスの歴史を知らない身には最初のころは何が何だか。
    それでも懸命に調べてそれなりに納得して読み進んで行って、だけどやっぱりところどころわからなくってね。
    ただ、歴史をまるまる信じることは愚かなんだってことはよくよくわかったな。
    それがわかっただけでも読んだ甲斐があった。

  • リチャード三世と言っても読み進んでも分からない。英国史に疎いから。Wikiを探してようやく納得。シェークスピアの戯曲にある。残虐な王様と言われている。でも本当か?本当に兄王の二人の王子を惨殺したのか?足を骨折して病院に入院した警察官は動くことができない退屈を紛らわせるためにリチャード三世の謎を探りだした。犯人を捜す上で「誰が得をするのか」という警察官の信条を元に。【2012年、英国でリチャード三世とDNA鑑定された遺骨が駐車場跡地で発掘された。噂通り背骨が曲がっている遺骨だった。】

  • 本書を知ったのは45年前。以降、2回読もうとしましたが、2回とも挫折。そして、2018年、暇で暇で仕方ない休日に、やっと読破できました。ただ、読破はしたものの、ほとんど内容は忘れてしまっていました。これは本書が扱っている「リチャード3世」が日本人には馴染みが薄いというのが理由。英国人にとっての吉良上野介みたいなもんです。今回、読もうとしたのは映画「ロスト・キング 500年越しの運命」が面白かったから。そして、「リチャード三世」(白水社Uシェイクスピア全集)も読んでみたら、これもスピーディで意表をつく面白さ。リチャード3世との距離が一気に縮まりました。

    前置きが長くなりましたが、本書は怪我で入院したロンドン市警の警部が暇つぶしにリチャード3世の甥殺しの真相を突き止めようとするもの。リチャード3世はヨーク家最後のイングランド国王。シェイクスピアの戯曲では天下の大悪人として描かれています。
    リチャード3世が活躍したのは15世紀末の薔薇戦争末期。高校で世界史をかじったことのある人は、この辺りの世界史のつまらなさと複雑さはご存知と思います。
    要は「時の娘」は我々日本人にはおおよそ退屈な中世の英国王の犯罪を推理する小説であり、極論を言えば、どうでも良い本です。
    一方、英国推理作家協会の「史上最大の推理小説100」では堂々1位に選ばれ、日本の出版社が時々行うベストミステリーのアンケートでも常に上位に食い込んできます。ミステリーファンとしては無視できない小説です。

    最初の挫折は冒頭の「薔薇戦争」の説明の分かりにくさ、2回目の挫折はヨーク家、ランカスター家の複雑な家系図が原因でした(関係する人物が多く、しかも同名が何人もいる。さらに家系図には存在しない人物も登場する。また、『時の娘』添付の家系図は非常に難解)。

    本書を楽しむコツは
    1)冒頭の薔薇戦争の説明は読まない。
    2)本書添付の家系図は無視し、別の家系図を準備する(お勧めは上記の白水社版)。
    3)戯曲「リチャード三世」を観るかもしくは読んでおく。因みに新潮文庫版は挫折。上記の白水社版の方が読みやすかった

    で、リチャード3世との距離を縮めての再読ですが、結論を言えば、面白かったです(笑)。警部がリチャード3世の肖像画を見て2人の子供を殺すような人物かと疑問に思うシーン、助手を得て資料を集めるシーン、甥殺しで誰が得をするのかという捜査の基本に立って下す結論。ストンとくる小説でした。
    やはり、世界最高の推理小説と思える面白さ。ただし、ハードルは少々高く、一気に読まないと挫折する可能性は高いと思います。

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著者プロフィール

Josephine Tey

「2006年 『列のなかの男 グラント警部最初の事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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