星の王子さま (角川文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 大好きな本。

    私の人生でこの本に出会うときはいつも、
    砂漠の中できらきらと輝く砂金を見つけたような気持ちになる。

    読むたびにこんなに美しい物語はない、と思うのに、
    いつのまにか心いっぱいに積み重なっていた砂が、大切なものを
    見失わせるからなのかなと、

    この本に感化されて多少詩的に表現すると、そうなる。

    わたしが初めて「星の王子さま」と出会ったのは、ちいさな頃で、
    舞台で、だった。
    花を好きなキャストに渡してほしい、と言われて、
    わたしはばらの花に花束を渡しに行ったのを覚えている。
    ばらの花が一番好きだったからではない、ばらの花は一人きりで
    寂しそうだったからだ。
    王子さまにはわたし以外のたくさんの子供たちが列を作って花束をささげていたからだ。

    そんな思い出が強く焼きついて、
    人生で初めてこの物語と出会ったときは
    「王子さまとばら」が気になった。
    人生で二度目、たぶん大学生のころ、すっかり忘れて読み返したときには
    「孤独な王様」のことが気になった。
    そしていま人生で三度目、25歳のいま、思うのは
    「五億の鈴」のことである。

    この訳は私がいままでに読んだどれよりもフランクだったのだけれど、
    それが、王子さまをひとりの人間らしく描けていて、かえって
    「別れの物語」としての印象を際立たせた。

    王子さまは小さな星に住んでいる。
    ぐるりとすぐにまわってしまえるような小さな星だ。
    バオバブの木がすぐに芽をだす。
    小さいうちにはそれは花と見分けがつかない。
    けれど小さいうちに摘んでしまわないと、それは星を破壊する。

    言わずもがな、これが「善と悪」。
    とか、解説していくのも恥ずかしくなるので、あとは割愛するけれど。

    王子さまはそのうち咲いた薔薇の花と出会うけれど、
    彼女の自尊心の高さに辟易として星を出る。

    そしてさまざまな星を旅する。
    孤独な王様、恥ずかしさを隠す酒飲み、ランプの消灯係、
    地理学者、星を数えるビジネスマン。

    これらの旅のなかで王子様の語る「責任」論はずしっとくる。
    所有するということは役に立つことである。
    命じるということは、道徳の範疇でのみ許されることである。
    このあたりは大人こそ心に響く教訓かも。

    そして
    王子さまは旅の途中で知る、自分のもといた星も、
    あんなにとくべつに思えた薔薇も、なんの変哲のない、ありふれたもの
    だったことを。そして泣く。

    けれどそんなとき、王子さまはきつねと出会う。
    きつねは自分を「なつく」ようにしてくれと王子さまに頼む。
    そして二人は時間をかけてゆっくりと懇意になる。
    そして別れのとき、ぼくは君を悲しませるだけじゃないかと言う王子さまにきつねは言う。

    自分はパンを食べないから、自分にとって小麦畑は意味のないものだったが、きみに「なついて」からは、きみの髪の色だと思う。
    それだけで意味があるんだ、と。

    人が人を想う美しさや尊さが現れた一文である。
    王子さまはきつねとの出会いを経験して、
    薔薇の花がありふれたものなんかではなかったことに気付く。

    そして王子さまは地球に漂着し、語り手である「ぼく」と出会う。
    「ぼく」と「王子さま」の別れのシーンは、
    ただひたすらに美しく、悲しく、切なく、そして途方もなく優しい。
    筆舌には尽くしがたい、というか、
    正直、涙で前が曇って続きを読めなかった。

    「だれかが星空を見たとき、そこに咲く一輪の花のために星空は輝く。」

    祝福にも似た贈り物を遺して、王子様は星へ還る、
    大切な薔薇のもとへ。

    それでもときおり「五億の鈴は五億の涙に変わる」。
    それもまた真実だと思う。

    けれどこんなにやさしい物語を私は知らない。
    こんなに美しい物語を知らない。

    もう疲れた、と思ったらまた読みたい。
    大切な人との別離に際して、また読みたい。
    なんでもない日に読みたい、大切なひとを大切にしようという気持ちに
    火を灯すために。

  • 50歳手前で初読み。泣ける話だとは知らなかった。
    王子さまの訪れた星の人たちが、滑稽で哀しい。
    王子さまの言葉が心に刺さる。大切なことを教えてもらった気がする。
    子供の頃に読んでいたら、どんな風に感じたかな。もう知ることが出来ないのが切ない。
    訳者の方の名前に見覚えがあるな、と思って調べてみたら、『本は読めないものだから心配するな』の著者の方だった。とても素敵な文章を書かれる。
    紙の本で手元に置いておきたいので、文庫版を購入した。

  • あまりにも有名過ぎて、
    すでに読んだつもりになっていた

    有名なセリフ、
    「大切なことって目には見えない」
    それを実感しつつ、
    生きてきたなぁ

  • "段取りをすることだけに気が回っている"
    そんな人ばかりなのだろうか?と今日友人に話したばかり。そもそも世の中が段取りに忙しくなってしまう仕組みになっている気もするが、"自分にとっての何なのか?"そんな問いを大事にしていると、厄介者扱いされそうな気がするけど、それでも良いのかと思った。
    こっそり笑えることが増えるのは悪くない。

  • 名作ということなので読んでみました。
    読みやすかったのですが、一度読むだけでは、作者の意図するものが読み解けませんでした。
    また、時間を空けて再読したいと思います。

  • サンテグジュペリの哀しみや絶望がひしひしと伝わってきた。子供の時に読みたい本かもしれない。

  • -

  • 「本当に大切なものは、目には見えないんだよ」――。砂漠で遭難した主人公は、星の王子さまと出会う。小さな小さな星にたったひとりで暮らしてきた王子さま。彼が地球を旅する中で見つけたものとは…。

    Kindleで読む本ではなかったなぁ。それが残念。こういう本は、挿絵と合わせて手でページをゆっくりめくりながら読むのが良いと思う。ただ、ずっと気にはなっていたものの読む機会がなかったので、そういう意味ではKindleがあってよかった。

    いろいろな読み方や捉え方があるのだと思うけれど、全体を通じて感じたのは、社会への批判。自分のことしか考えていない人たちを見て、王子さまは「大人ってつまらないなぁ」と思う。そして少し変わってはいても、他の人のために働く人が「好きだ」と言う。ときどき読み返して、つまらない人間になっていないか、誰かのために行動できているかをチェックしたい。

  • 読んでて、心が浄化されたような気がする。とてもいい話。

  • 小さな王子さまが様々な星で多くの不思議な人たちと出会うのが楽しかった。

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著者プロフィール

作家、飛行士。1900年フランスのリヨンに生まれる。子どもの頃に飛行機に乗ったことがきっかけで、空への夢を膨らませるようになる。大人になり、フランスの民間郵便飛行機のパイロットになり、多くのフライトを経験。第二次世界大戦中は、空軍で偵察飛行の部隊に所属。1944年、偵察飛行中に消息を絶つ。著書に『夜間飛行』、『人間の土地』など。

「2015年 『絵本で出会う 星の王子さま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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