巷説百物語 「巷説百物語」シリーズ (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ、世界で一番透きとおった物語の中で、京極夏彦先生の本の版面の構成は先生ご自身でされていて、左ページ最終行は決して次ページに跨らないようにしていると記載されていてその確認のために読んだ。
    ホントでびっくり。かつ、凄く版面がスッキリしていて読みやすい。話の内容は昔の言葉遣いで漢字のふりがなも多いのだけど、どうしてこんなにスッキリと見えるのかわからない。余白と文字のバランス(白黒の対比)なのか。今まで京極先生の作品を毛嫌いしていて損したかも。これからは、色々読んでみたい。

  • 京極さんの本は京極堂シリーズしか読んだことがなかったので、試しに手を出してみた。
    どのお話も、怪談と謎解きを合わせたもので、一見妖怪の仕業かと思った出来事が、実は人間の仕業だったというのがおもしろい。
    時代背景が古いので、話に入り込めるか不安だったが、思っていたよりも読みやすかった。

  • 初、京極夏彦。お友達の紹介で、比較的読みやすそうなのでこのシリーズから読んでみることに。時代物ってあまり慣れていなくて(司馬遼太郎とはまた違うんだよなあ)、そうすらすらとはいかなかったが、妖怪及び時代風俗に関する基礎知識が増えて面白かった。

    ・必殺仕事人ぽい。というのもお友達の紹介の受け売りなうえに、必殺仕事人自体、片岡孝夫が出てる劇場版1本しか見たことないけど。裏街道を生きるいつものメンバーが、依頼を受けて、裏街道ならではの仕事をこなす。
    夕方に学校から帰ってくるとおばあちゃんが見ていた、時代劇ドラマの雰囲気。コメディ的な要素はないけど。「今週の主役」であるところの依頼人または悪役のシーンがあって、ふむふむ今週はそういう世界観か、と思っていると、おなじみのレギュラーキャストのシーンに切り替わる。毎回同じ衣裳の描写。
    そして最後は決め台詞があって、鈴がなる。この安定感。
    (どうでもいい話だが、おぎんの「江戸紫の着物に草色の半纏」という出で立ちは鮮やかでかっこいいなあと思っていたら、なぜか洋装バージョンで夢に出てきた。紫のコートに草色のショールを羽織った女性が。)
    ・仕事人一味(というふうに作中では呼んでないけど、便宜的にそう呼びます)や、そのかつての仲間などは、いわゆる下賤の身のもの。傀儡師やら、御行乞食やら、大道芸人やら。最近読んだ対談本がまさに「芸能と差別」をテーマにした本だったので、それのフィクション版を読んでいるようでグッドタイミング。電子書籍なので出てくる言葉をググりながら読めて、面白かった。
    ・妖怪が出てくる話と聞いていたので、もっとファンタジーな世界かと思っていたらちょっと違った。妖怪のせい、に見せかけて、仕事人たちは依頼をこなしていく。だから実際は、人の仕業(「仕掛け」と呼んでいる)。
    江戸時代のいつ頃が舞台かわからないけど、人がみんな妖怪の存在を素朴に信じているかというとそんなことはなく、ちゃんとみなさん合理的精神をもって日々暮らしている。だから、不思議な現象に対して「いやいやお化けなわけがない」という態度ではじめはいるのだけど、仕事人一味の巧妙な仕掛けによって、「ほんとに妖怪だったとしか、合理的に、考えられない」と思わされていく(全部が全部じゃないけど)。で、それは、実は世のお偉方が、自分達の落ち度を隠すためにそれしか道がなくて、仕事人一味に依頼していたことだったりする(「この人物をきれいさっぱり消してくれ」みたいな無茶な依頼など)。
    この構図は面白いなあと思う。私たちが暢気に「都市伝説じゃん?!」とかって騒いで他人事として楽しんでいる「不可思議な事件」は、実は、時の権力者と、人扱いもされずに生きている被差別者との、ねじれた共生の結果かもしれない。
    ・ずっと1話完結のお決まりパターンでずっと行くのかと思いきや、最後の最後は、仕事人リーダー格でいつも飄々としていた又市が、ちょっといつもと違ってセンチメンタルになって、未だ語られざる一面を覗かせて終わる。憎いね(笑) 続編シリーズはまだ電子書籍化はされてない模様。

  • 人の情とか業とかそういうのに巻き込まれて、ぐるぐるに落ちていく感覚になる。
    京極先生の本読んでるといつもこの感覚になるんだけど、この本もやっぱりそうなった。

    どのお話も仕掛けがあって、百介と同じく種明かしを読んで納得するの繰り返し。
    難しい言葉も多いんだけど話し言葉が軽快で、するする読める。

    続きも楽しみ。

  • かなり面白い。キャラもいい。百介が一人何も知らされず、わたわたするのも楽しい。
    騙しだとわかっていても、本当なんじゃないかと思っちゃう。というか、本当でもいいんじゃないだろうか?
    最後の「冥土は生者の心の中にある」っていうの、深いね。

  • よくできたお話。とてもおもしろかった。こういうの書きたい

  • 百物語だと思ったのに騙された!ということはなく、京極夏彦の怪談話はどれで読めるのか探し続けて、ひらすら著作を読むんだろうな、と思った。

  • 読んだのは紙やけど。
    友達から薦められて、何の情報もなく読み始め、最初は何のことかかわらなかったが、読み進めていくうちに、なかなか面白いものだと思った。
    実写化したら必殺仕事人のような。
    当て字みたいなのがちょっと読みづらいけどゆっくり読むのなら、それも面白い。

  • 絵本百物語に登場する妖怪をモチーフにしたミステリ時代小説。ある事件を解決するために仕掛人ともいえる又一らが仕立てた筋書きが、絵本百物語の妖怪をベースにしたトリックになっているのがこの小説の面白さ。
    登場人物の語り口が軽妙なのがいい。

  • 僕に読書の楽しさを教えてくれた運命の1冊。
    今回で読むのは3度目だけれど、読むたびに初めて出会った大学2回生(2004年)の夏を思い出す。
    あの頃この本に巡りあっていなければ、今の自分はなかったと思う。

    第130回直木賞を受賞した『巷説』シリーズのいちばんのおもしろみは、御行の又市一味が、江戸にはびこる悪事を妖怪がらみの大仕掛けで解決していくという時代小説風の凝ったストーリーにある。
    しかし僕はそれ以上に、京極さんの言葉の使い方に魅了された。
    圧巻は、「小豆洗い」でおぎんにさせているような一人語りだ。
    1人の人物に対話者の発言や質問を代弁させ、それによってただ1人の言葉だけで会話を進行させていくというその手法を初めて知ったとき、僕は本当に感動した。
    一方で、啖呵を切るようにまくしたてる又市のセリフも小気味よい。
    小説家って言葉を操る人なんだなって思った。

    1つ1つの文をなるべく短くすることにより、文が絶対にページをまたぐことがないよう編集されているのも意匠化である作者に似つかわしく、すばらしい(こういう美しさが僕は大好きなんだなあ)。
    カバーの装丁も含めて、この本は1つの芸術作品であると僕は思っている。

    シリーズで一貫して書かれているテーマは、人の世の悲しさだ。
    恨み、妬み、嫉み、憎悪、あるいは想いが届かぬ苦悩。
    理屈では割り切れない、ましてやお金では解決することができない人間の負の感情を丸く収めるべく、又市は悪を斬り、大掛かりな仕掛けをくり出す。
    生きていくっていうのはこんなにも悲しいことなんだと、又市の背中は読者に訴えかけてくるようだ。

    これからの人生で何百冊の小説を読んだとしても、この『巷説百物語』はきっと自分の中で「好きな小説トップ5」に入り続けているだろうな。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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