夜市 (角川ホラー文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
3.79
  • (61)
  • (106)
  • (60)
  • (21)
  • (4)
本棚登録 : 885
感想 : 90
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (13ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 〇妖怪たちがさまざまな品物を売る「夜市」。
    裕司は、小学生のころに夜市に迷い込み、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。そして、今夜、弟を取り戻すために再び開かれた夜市を訪れる。(「夜市」)
    〇父とはぐれた七歳の「私」は、見知らぬおばさんに教えられた奇妙な「未舗装の田舎道」を通って家に帰った。
    十二歳の「私」は、親友のカズキとともに再び「未舗装の田舎道」に足を踏み入れる。その道は「古道」と呼ばれる、死者や物の怪がうろつく道だった。(「風の古道」)


    不思議な世界観。どちらの話も不気味で、でも涙がでてくるような切ない結末。独特な、死者の世界を扱った話だからといって読みにくい文体でもない。
    表題作「夜市」も良かったけれど、「風の古道」のほうがおもしろかったかも。おもしろいというか、じわっと涙がでてくるようなあたたかさもあり、苦しさもあり。

    「おじさん、脅かしすぎだよ。間違った電車に乗れば、次の駅で降りればいい。そうだろ」
    優しくて軽快なレンの、実は悲しい出生の秘密。
    殺された恋人を生み直した母。そして自分を殺したのは・・・
    なるほど・・・と切なくなる。この設定がすごい。

    「相棒として予言してやろう。お前の人生は決して悪いようにはならない。おまえは生まれた瞬間から祝福されているのが俺にはわかる。外の世界の誰よりもだ。
    遠い未来、その肉体は大樹になり、その魂は古道を越えて世界を渡る風となろう。その頃また会おうや。」


    実はすぐそばにあるのかもしれない「あちらの世界」。
    他の作品も読みたくなった!


    「いかなる奇跡を用いようとも、生を得るとはそういうことではないのですか?そのはじまりから終りまで、覚悟と犠牲を必要とする。」

  • 『夜市』と『風の古道』の2作品で、どちらも現世から異世界に迷い込むお話。
    どちらかといえば『風の古道』の内容が好きだった。レンさんの生い立ちがなんとも切ない。

  • なぜか懐かしい雰囲気の話。

    日本人の原風景というか八百万の神や九十九神がいるかのような「場所」での話。

    法律や社会のルールで「こういうものだから諦めて」と言われるより、「この世界の掟だから諦めて」と言われた方がわだかまりなく諦められるような感じ。
    全然「しょうがなく無い」事でも「しょうがない」と思わせてくれる納得感がある。

    穏やかで心地よい後味の残る本。

  • すごい世界に踏み込んでしまった!幼い頃から、私が住んでいるこの世界は、何かもっと大きな世界のたった一つかもしれないとか、地球がある銀河系の外側には全く別の世界があるんじゃないかとか…妄想することがあったが、この物語こそ私のふわっとした妄想を現実の感覚に変えるような何か不思議な気持ちになった。
    少し興奮気味で何をどうやって書いていいか分からないけど。。とにかく読んでいる間は、違う世界に迷い込んだ感覚になれた不思議な話だった。
    でも…何が1番欲しい?と聞かれてパッと出てこない私は何か足りないのだろうか。

  • とにかく文章が綺麗でした。難しい単語が使われていないので、辞書を途中で引くこともなくスラスラと読めました。物語自体も綺麗。没入感あり。夜市の空間はおどろおどろしさがありつつも、やはりこれも綺麗。風の古道も好みでした。とにかくオススメです!

  • 表題作の『夜市』と、『風の古道』の二編からなる小説。
    ホラーというよりファンタジーのような、妖しさ溢れる世界観。読んでいると、まるで夢の中を歩いているような心地になる。幻想的で、切なさが残る作品。

    「道は交差し、分岐し続ける。一つを選べば他の風景を見ることは叶わない。ーー誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。」(『風の古道』より)

  • Kindle Unlimitedで読了。
    表題作の「夜市」と同時収録作の「風の古道」は同じ世界観で書かれた物語のようですね。古道の方に夜市という言葉が出てきましたので。
    夜市よりも古道の方に魅かれました。
    迷い込んでしまった異世界。悲しい生い立ちのレン。永遠に別れることになってしまった友。
    怖いお話ではなく、物悲しさのあるお話でした。

  • 個人的には、表題作より【風の古道】のほうが好きだった。爽やかで切なくて残酷な物語。圧倒的な世界観に入り込めて、長いようで一瞬の物語を楽しめる。言葉選びは淡白なようにも思えるが、どこかノスタルジックな文章だ。牛車で旅をしたひと夏の思い出、そこで永遠の別れを果たした親友、これからも風の古道を旅する青年…。読み終えた後としばらく余韻に浸かれる小説だ。

  • 日本ホラー小説大賞だが、ホラーって感じでは無いかな。でも独特な世界観が良かったかな。
    「夜市」人それぞれ大切だと思っている事は、実は明確ではない…いざって時に後悔しないように考えておこうと思えた。
    「風の古道」「道っていうものの中には、足を踏み入れていけないものもある…」若い時は、ありのままに生きて行きたい。でも一つの道だけでない…枝の様に沢山別れていて、何処かの道をあるいて来て皆んな同じ様に生きている。だから価値観が違うのは当たり前だと思った。

  • すごく好きな作品。夜市の妖しくて美しい雰囲気が自然と頭の中に入ってきた。表紙も儚くて綺麗。

全90件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

恒川光太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恒川光太郎
高野 和明
米澤 穂信
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×