或阿呆の一生 [Kindle]

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著者 : 芥川竜之介
  • 2012年9月27日発売
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (21ページ)

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或阿呆の一生の感想・レビュー・書評

  • 芥川の死後発見された作品で、冒頭に久米正雄への遺言の様なメッセージがついている。作中の登場人物は匿名になっているものの、ほぼ芥川の自伝。
    一緒に心中未遂までした不倫相手のことを赤裸々に書いてたり、『狂人』呼ばわりしてたりするところから、生前にこれを発表する気はなかったんだろうな…というか、これを書いてる時点で死ぬ気だったんだろうな、というのが窺い知れる。
    どこかのサイトで感想を読んだけど、芥川作品を読み、詳しくなってからこれを読むと「芥川の事どれだけ知ってるかクイズ」みたいな楽しみ方ができそう。
    過去のある作品を書いていた時、どんな気持ちだったかなどの記述が見られる。

    好きなのは第27、スパルタ式訓練。
    夕べ会っていた不倫相手と町中ですれ違う。傍らにいた知人がその女を見て「(知らないけど)綺麗な人だ」というと、芥川もその女を知らないふりして「本当に綺麗な人ですね」という。
    この話に、このタイトルがついてるのがウケる。
    不倫相手と町中ですれ違って、なんともないふりするのが苦しいからスパルタ式訓練なんでしょうけど、なんというか、少し女々しい…w

  • 芥川龍之介が、自殺したあとにみつけられた、短編小説。
    陰鬱な精神状態の中で、絞り出した文章で重々しい。
    度々でてくるセンテンスで、綺麗だなぁと感じるものがあった。

    『彼女の顔はかう云う昼にも月の光の中にゐるやうだつた。』
    きっと、美人女性なのだろう。
    翳りのある、憂いを帯びたような女性なのでしょうか。

  • 作中にもあるが、自叙伝のようだ。
    自叙伝というには、あまりにも瞬間的だけれど。
    思い出す作業を頭に浮かべれば――記憶がふっと脳裏に蘇り、長いこと留まらない――リアルとも感じる。

    また、『歯車』を読んだあとでは、明晰な思考で驚いた。
    表現も詩的で、私はこちらの方が好きだ。
    細く神経を土に這わす唐黍、虫に食われた羽をぶら下げる剥製の白鳥、芥川に自分を思い起こさせるそれらの光景は、なんとも侘びしく、心に刺さる。

    しかし『歯車』を読んで、相当精神が参った状態かと思えばこういう文に出会い、『歯車』もある効果を狙ってあんな風に書いたのか、それとも正直なところの感覚なのか、判断がつかなくなった。

  • "彼の前にあるものは唯発狂か自殺かだけだつた。彼は日の暮の往来をたつた一人歩きながら、徐ろに彼を滅しに来る運命を待つことに決心した。"

     「彼」の死へと向かって行く様が断片的な文章によってに綴られていく。それぞれの節は本当に断片的な文章ではあるが、切々たる苦しさに満ちている。

  • 自伝、と言っていいと思う。
    自己弁護はしなかったつもり、という文が既に自己弁護になっている。それが芥川という人なのだろう。

  • 芥川龍之介が自殺間際に自叙伝を「詩と真実」で書いたもの。ストーリーはない。ただ断片ごとの印象だけ。どうにも生活が窮迫していく様子が淡々と臨場感をともなってかかれている。

  • 文豪の書いた断片的な日記。自殺後に発表された文章。

    当たり前なんだけど、史実の人々って本当に存在していて、人間なんだなあ、と思った。歴史に残るような人々って、どこか存在が神話めいていて、記号的・ブランド的にしかみれなかった。
    でも、これを読んで、ああ人なんだなあ、と感じた。

    現実の人間だから、交友関係もある。
    谷崎潤一郎がでてきて、「先輩」といわれてたり、
    「先生」として夏目漱石がでてきたり。
    考えてみれば、同じ作家の世界なのだから人も繋がっているんだけど、不思議な感覚だった。

    以下、冒頭文引用。
    僕はこの原稿を発表する可否は勿論、発表する時や機関も君に一任したいと思つてゐる。
     君はこの原稿の中に出て来る大抵の人物を知つてゐるだらう。しかし僕は発表するとしても、インデキスをつけずに貰ひたいと思つてゐる。
     僕は今最も不幸な幸福の中に暮らしてゐる。しかし不思議にも後悔してゐない。唯僕の如き悪夫、悪子、悪親を持つたものたちを如何いかにも気の毒に感じてゐる。ではさやうなら。僕はこの原稿の中では少くとも意識的には自己弁護をしなかつたつもりだ。
     最後に僕のこの原稿を特に君に托するのは君の恐らくは誰よりも僕を知つてゐると思ふからだ。(都会人と云ふ僕の皮を剥はぎさへすれば)どうかこの原稿の中に僕の阿呆さ加減を笑つてくれ給へ。
       昭和二年六月二十日
    芥川龍之介
         久米正雄君

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