檸檬 [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 読友さんから教えてもらった初めての青空文庫。この手軽さではあるけれど、檸檬は重厚な黄金色を放つ。肺病を患う私。毎日が鬱屈として、興味がなくなってしまったのだが、大好きな八百屋で黄金色に輝く檸檬を1個買う。とてもワクワクな気持ちになるのだ。丸善に行き画集を手に取ってみるが興味がわかない。でも1個の檸檬を棚に備え付けた。その時のワクワクが何とも言えない。檸檬1つが人生の色彩を豊かにし、嗅覚を蘇らせる。とある日常に1つの檸檬が私の感性を高ぶらせるこの本の表現、ノスタルジックにも浸れる檸檬は別格だった。

  • 漠然とした不安を描いているのでしょうか。

    一過性で、どこか余裕すら感じさせる、若さ特有のフワフワした不安を文章にできるなんて素敵。

    20代前半の頃の私を思い出した。
    これまで楽しめていたものにも一時的に興味が無くなり、自暴自棄に似た、空しい時間を過ごした思い出がある。

    主人公「本で城壁作ったった。よっしゃこの上にレモン爆弾を仕掛けたるわ。ウヒャヒャ!」

    店員「もう・・・また本を戻さない客が・・・え!?」

    誰もがこうやって大人になっていくんです。(嘘)

  • 病と貧乏で鬱気味の大学生が、書店で本棚から引っこ抜いた画集を好みに彩りよく積み上げて、その頂上に爆弾に見立てた色鮮やかなレモンを置く。それが爆発する妄想をした後に片付けもせずトンズラ。レモンも置き去り。
    …とあらすじを書いてしまうと、私の言葉選びが悪いのか、どうにも、中二病臭のする大正版・微メンヘラ私小説って感じになってしまいますが。

    そう思う以上に、文章から滲み出る心中の静かな焦燥や不安感、寂寥感、孤独感に胸が打たれ、共鳴してしまうのは、やはり筆の力のおかげでしょうか。

    決して梶井基次郎を馬鹿にしているわけでも揶揄しているわけでもなく、私自身はこれまでの人生で「檸檬」を3、4回ほど読んでいるぐらいに、むしろ好きです。
    短くて気楽に読めるのもあり、あの侘しく悲哀に満ちた文章に無性に触れたくなる時があります。あまりいい傾向ではない気もしますが。

    京都の街や通りの精密な描写も好きです。
    私は関西在住なので、小説に登場する今はないけれど当時は実在した果物店や丸善の場所と位置関係はわかるので、主人公が辿った道筋を想像するのは楽しい。

    毎回気になるのに一向に答えが出ないのは、梶井はなぜ、主人公の男が好む画集をアングルのものにしたのかということ。
    フランスの画家アングルの描く絵は勿論素敵ですが、彼が描く人物の、まるで陶器の様な滑らかな肌の描写は温かみは感じられないので、心が慰められるのとは少し違う気がして…。静謐だけれども清廉な官能を感じさせるあの雰囲気がいいのかしら…?

    また次の機会に読んだ時に改めて考えてみたいです。

  • 大正6年頃からレモンの収穫量が増えて国内で需要がまかなえるようになったらしい。
    夏の暑い時期にレモン水をお茶の代わりに飲んだり、肺病の治療や養生に使ったりしている様子が様々な文献で見られる。
    急速に普及したこの新しい果物をどのような気持ちで手にしたのか。また小説の題材にしたのか。
    短いだけに、読み返すたび理解が及ばない部分に毎回気づかされて新鮮な感じがする。

  • 深く重く美しい表現力に圧倒される。
    檸檬に心奪われた。レモンを見る度この作品を思い出しそうなくらいのインパクト。

  • 私は丸善大好きです。

  • 不安感、気詰まりなあの感じ、焦燥感を掬い取るように描写するのが巧み。
    この小説はずっと前に書かれたものだけど、人間の憂鬱な気持ちはきっと、ずっと前から変わらない。憂鬱のアンティークのようなこの小説に触れられて、時代を超えて作者と一方的なコンタクトをとれている気分。

  • 特に前半が好き。
    自分が体験したことじゃないのになんか共感できるところがヨルシカみたい。
    不満の中にいて素朴なものに惹かれる感じがいい。生きづらさがあるくらいの方が生きてる実感を持てるんだ。

  • なんとなく気を紛らわすために読んだため、あまり内容を覚えていない。
    でもこう、主人公のうじうじしたような感情は伝わってきたかな。
    個人的には内容よりも日本語の使い方や表現が素敵だなと思えた。

  • Kindleで読んだ。
    この人と飲んだらむっちゃ面白いだろうなって思った。
    ツイッターとかフォローしたい。

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著者プロフィール

明治34年(1901年)大阪府生まれ。同人誌「青空」で活動するが、少年時代からの肺結核が悪化。初めての創作集『檸檬』刊行の翌年、31歳の若さで郷里大阪にて逝去した。「乙女の本棚」シリーズでは本作のほかに、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)がある。

「2021年 『Kの昇天』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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