恩讐の彼方に

著者 :
  • ALLVD (2012年9月27日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • 難しそうな文学作品を漫画で簡単に知るのではなく、原作を読もうかなとブクログで発言してしまった一冊。
    さっそく青空文庫で読んでみた。
    良かった…"読むよ読むよ詐欺"をせずに済んだ^^;

    市九郎が自らの罪業において良心の呵責に苛まれる描写が見事であった。
    また美濃国大垣にある浄願寺に辿り着き出家するのだが、寺の上人の言葉が良かった。
    「重ね重ねの悪業を重ねた汝じゃから、〜(略)〜現在の報いを自ら受くるのも一法じゃが、それでは未来永劫、焦熱地獄の苦艱を受けておらねばならぬぞよ。それよりも、仏道に帰依し、〜(略)〜身命を捨てて人々を救うと共に、汝自身を救うのが肝心じゃ」。
    人々を救う事で、己をも救う…なるほど。

    関係ないかもしれないけど、「一日一善」という言葉を思い出す。
    難しい言葉や四字熟語を知ったり、仏教の教えを考えたり、勉強になって良い読後感を持てた。

    • ポプラ並木さん
      なおなおさん、共読!嬉しいです。
      おっしゃる通り、<良心の呵責に苛まれる描写>ですよね。
      自分はそれにもまして、赦しとは何か?復讐心を凌駕す...
      なおなおさん、共読!嬉しいです。
      おっしゃる通り、<良心の呵責に苛まれる描写>ですよね。
      自分はそれにもまして、赦しとは何か?復讐心を凌駕する自戒、色んな意味合いを感じました。今の世界情勢、このような心が重要なのかもしれませんね。なおなおさんの感想、素直で心地よくて素晴らしいと思います!
      2022/05/25
    • なおなおさん
      ポプラ並木さん、こんばんは。

      赦しとは何か、復讐心を凌駕する自戒…そうそう、私もそれを言いたい!私のレベルではこんな言葉は出てこない。
      ポ...
      ポプラ並木さん、こんばんは。

      赦しとは何か、復讐心を凌駕する自戒…そうそう、私もそれを言いたい!私のレベルではこんな言葉は出てこない。
      ポプラ並木さん、ありがとうございます(^_^)
      2022/05/25
  • 罪を反省し、罪を償う事とはどうであるか考えさせられた

    刑務所に入れられるのは自分が受けること
    償う事は自ら行うこと

    これらは本当は別である事
    どうも刑期を終えたらそれで終わりとなっているようで
    そうすると再犯も可能性が高くなる

    償うという事は自分と向き合う大変な行為だと思う

  • 市九郎は妾を奪うために主人を殺害して逃亡、強盗殺人を繰り返す。
    ゲス過ぎてしょうがないが、猛省し仏門に入る。
    九州に渡り、通行の難所で何人もが命を落としている場所があり、そこでトンネルを掘ろうと決意する。
    犯した罪は消えないが償うため周囲の嘲笑を受けても止めない。
    次第にその懸命さに人々は心を動かされる。
    もちろん罪は犯すべきではない。
    罪を犯した人は更生できるのか、そして社会でも認められることができるのか、考えさせられる。

    主人の息子が仇討ちに来る。
    息子には大義名分がある。当然の報いだ。
    しかしラストは、ほぉぉっと感心させられ
    拍手したくなる。

    この物語に出てくる九州の手掘りトンネルは大分県中津市本耶馬渓町に実在する「青の洞門」がモデルらしい。手掘り…気の遠くなるような作業だっただろう。

  • 主人殺しの罪を負い他にも幾人の人を殺めた市九郎。深い良心の呵責に苛まれ懺悔の日々。出家し僧侶の道へ。自ら背負った罪の大きさに苦悶しながらやっと見つけた贖罪の道。それは一年に10人は命を落とすという難所にトンネルを掘り貫通させようというもの。「気が狂った」と馬鹿にされ嘲笑されながらも石工の槌と鑿を手に何かに憑りつかれたように掘り進める市九郎。揺るぎない贖罪への信念。一心不乱に槌を振る姿に胸が熱くなる。21年という長い歳月、ついに成し遂げた市九郎。ラストで"恩讐の彼方に"の意味を知り深い感動に包まれる。

  • 短い時代小説だけど面白かった。作りが上手だなと思う。設定の仕方と書きぶりが両方揃わないとなかなか納得はできないだろう。たしかな内面を書ける小説の良さみたいなのを改めて。

  • 主人の妾と慇懃を通じ成敗を受けようとした時に、かえってその主人を殺した上、その姦夫姦婦で様々な悪行の限りを尽くした市九郎が、罪を償うために出家し、仏道修行に肝胆を砕くようになる。市九郎のために非業の横死をとげた主人の一子である実之助は無念の憤りに燃え、報復を誓う。

  • 菊池寛はね、もっともっと読まれていいと思うんだ。

  • 悪人になって人殺しを続け、最終的には憎い女を殺すか殺されるか・・・・・どっちかだと思いきや、まさかの穴掘りのお話だった。執念深く、罪深く、懺悔の意味を込めて揺るぎない信念があれば、人の心は動かせるんだなぁ。ほんとうに面白かった。

  • 昔読んだことのある短編だと、途中で思い出した。短いながら物語がまとまっている。犯した罪を悔いる意識のありようが生々しく描かれ、仏教との出会い、仏教による悩める者に対する救済がわかりやすい。

  • 土曜日の午後10時20分~

    朗読「菊池寛作品集」
    (「恩讐の彼方に」新潮文庫 1994年) 【作】菊池寛【朗読】青木裕子

    文章の美しさといい人物描写の確かさと良い、素晴らしすぎる。菊池寛がこんなに優れた作家だったとは知らなかった。私が知らない事ってたくさんある。これからもたくさんびっくりするだろう。それが嬉しい。

    こんな風に朗読できるようになりたいな。

著者プロフィール

1888年生まれ、1948年没。小説家、劇作家、ジャーナリスト。実業家としても文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わる。戯曲『父帰る』が舞台化をきっかけに絶賛され、本作は菊池を代表する作品となった。その後、面白さと平易さを重視した新聞小説『真珠夫人』などが成功をおさめる一方、鋭いジャーナリスト感覚から「文藝春秋」を創刊。文芸家協会会長等を務め、文壇の大御所と呼ばれた。

「2023年 『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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