- Amazon.co.jp ・電子書籍 (490ページ)
感想・レビュー・書評
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古めかしい文体で書かれていたが、内容はメロドラマなのでサクサク読めた。
恋愛が全て!と思うような十代の若者ならいざ知らず、いい年した大人が読むには少々かったるい。
しかし通俗的ではあるけど、ドラマの組み立てなどは面白い。高利貸しを恨んで放火する老婆とか、貫一が闇討ちに合うシーンとか、見せ場を提供してくれている。
特に女高利貸しの赤樫満枝のキャラは面白い。こういう現実にはなかなかいないような人物を登場させる事で物語の流れを上手く運んでいる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
月夜の中、貫一の足にしがみつくお宮を振り払い、貫一は崇高なる志を遂げんと颯爽と立ち去る。そういう漠然としたイメージしかもっていなかったので原作を読んでみた。実際の話はイメージとは大分違った。
一瞬の心の迷いで最愛の人を捨て金持ちの富山のところへ嫁いでしまったお宮、最愛の人に裏切られ人生を捨てた貫一。貫一に同情しながら読んでいたが、自分の間違いを懺悔するお宮、最愛の人に許しを命を賭して請い、本当に死んでしまうお宮。結末はあまりにも切ない。
「愛してる」などと言葉を発するのが憚られる時代。それとない一言だけで幸せを感じ、涙を流せる時代。愛する人と一緒になれぬならと無理心中する人たちもいた時代。一方で、顔も見たことのない、家が決めた結婚相手に嫁いで一生添い遂げるような時代でもあった。このような両極端な恋愛観・結婚観が昔は同時に存在した。純愛に生きれぬなら諦めの愛に生きなければならない。陰か陽か、表か裏か。吉か凶かである。現代における恋愛観・結婚観はこれら両極が中和された状態にあると思う。昔ほど激烈な純愛ではないかもしれない。しかし嘘もないのだ。
恋愛に安寧を求めるなら現代の方が生き易いのかもしれない。 -
最後まで貫一がクソ野郎なのかと思ったら途中の展開で宮を許した所からちょっとずついい奴になってちょっと安心した。
宮があれだけの覚悟を以って行動に移したのに何も変わらなかったら虚しいだけだもんね。
未完なのが本当に残念だけど、3人でまぁまぁ楽しそうに暮らしてる描写もあるからそこから補えないわけじゃないね。長かったけど読めてよかった! -
文語体と口語体の混合が非常によかった、さすが古典といったところ
中盤の刺し違えたお宮を追っていくシーンは読ませた