こころ [Kindle]

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  • 2012年9月27日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 言わずとしれた夏目漱石の最高傑作。
    「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」という三部構成となっており、人間の本質が類稀なる表現力で描写されています。
    以下、簡単なあらすじと感想を述べておきます。
    学生である「私」の尊敬する「先生」にはどこか暗い影があり、私のもとへ突然届く先生からの遺書によりその影の正体が明かされることとなります。
    それは、先生の下宿先のお嬢さんと先生、そして先生の同郷の友人Kとの三面的な痴情関係に起因したものでした。
    下宿先ということで、お嬢さんとKが二人きりになることもあり、その度に先生は穏やかではない感情に苛まれていました。先生は、内心Kに嫉妬していたのでしょう。
    Kからお嬢さんへの想いを打ち明けられた先生ですが、先生は内に秘めたお嬢さんへの想いをKに伝えることはありませんでした。それどころか、真宗寺生まれであり道のためにはすべてを犠牲にすべきとの信条を持つKに対し、「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ。」と言い放ちます。
    これは以前に、Kが先生に対し述べた言葉ですが、先生のKに対するこの発言には表面的意味以上の意味合いが込められていました。
    それは、Kにこれまで積み上げてきた過去を放棄させず今まで通りの途を歩ませようとするもので、お嬢さんへの想いを断ち切らせようと意図したのでした。
    その後、先生はお嬢さんの奥さんへお嬢さんを妻としていただくと直談判し、結果的にKを出し抜くことに成功します。しかし、この期に及んで先生は良心の呵責に苛まれ、Kにこの気持を伝えられない日々が続きます。
    結局先生とお嬢さんとの結婚は奥さんからKへ伝えられますが、Kは先生の予想とは裏腹に以前と異なった様子を見せなかったため、先生はKの「覚悟」に気が付きませんでした。
    奥さんから結婚話を伝えられた2日後、Kは自室で自殺してしまいます。
    先生宛ての手紙が残されていましたが、そこには将来の行先の望みがないから死ぬとだけ記されており、先生への恨み言はありませんでした。
    しかし、手紙にはお嬢さんの名前は記されておらず、Kがあえて回避したことは明白で、先生はこの先一生をかけて友達の命と引換えに妻を手に入れたのだという事実を背負っていかなければならないと感じます。
    これが、先生のもっていた暗い影の正体でした。
    手紙の最期には、手紙に書かれたことは秘密にしておいてほしいと締めくくられています。

    「人間はいざという間際に急に悪人に変わる」
    作中で先生が私に述べた一節ですが、これは過去にKに対してしてしまったことを想いだしてのことだと思います。
    話は少し変わりますが、ある検察官が「私は罪を犯した人に対し尋問をします。しかし、私自身がいつ尋問される側にまわってもおかしくない、といつも思っていました。」と述べていたことを聞いたことがあります。人は身の置かれた環境によっていつ犯罪者になってもおかしくないという意味であると理解していますが、先生の言葉に通ずるものがあると思います。

    数十年語り継がれるまさに名作ですので、全ての年代の方に読んでいただきたい一作です。

    • Macomi55さん
      読書家のペンギンさん、はじめまして。「いいね」有難うございました。「こころ」高校の教科書でお目にかかった時には、私には理解が難しく、以来再読...
      読書家のペンギンさん、はじめまして。「いいね」有難うございました。「こころ」高校の教科書でお目にかかった時には、私には理解が難しく、以来再読する気には全くならなかったのてすが、読書家のペンギンさんのレビューを読んで、もう一度読んでみようという気になりました。ありがとうございました。
      2020/10/31
    • ペンさん
      Mabomi55さん、コメントありがとうございます。長らく通知に気づきませんで、返信が遅れてしまったことお詫び申し上げます。
      ところで、こ...
      Mabomi55さん、コメントありがとうございます。長らく通知に気づきませんで、返信が遅れてしまったことお詫び申し上げます。
      ところで、この度はとても嬉しいコメントありがとうございます。当時は難しかった本書も、当時とは異なった印象を与えてくれることと思います。是非お楽しみくださいませ。
      2020/11/14
  • 前半部分で先生の抱えている秘密がほのめかされ、後半は先生の遺書という形でその秘密が明らかになっていく。

    財産分与で揉めたり、恋に振り回されたり…そういった人間のこころは今も昔も変わらないなと共感しながら読んだ。一方で、先生の「明治の精神に殉死する」という考え方は理解できないものだった。社会の規範や道徳観みたいなものは時代とともに移り変わるもので、その対比が面白いと思った。


    教科書で終わらせるのは勿体ない。
    全体として物語を読んでみると全然印象が変わる本だと思う。

  • これは最初から最後まで男の物語なのだ。
    ホモソーシャルな空間に閉じこもった物語。

    名作であることは間違いないが、私のための物語ではない。
    自分の倫理的負い目に押しつぶされるのはいいけど、目の前にいるお嬢さんを蔑ろにしている矛盾はどう説明するつもりなんだろうね。

  • 恥ずかしながら、初めての夏目漱石。
    「千円札の人」から「素晴らしい文才を持った文豪」へと変化を遂げました。
    美しい日本語に、この国に生まれて良かったとまで思ってしまった。

    誰もが人には言えない事はあると思う。一人それを抱えながら生きていく。
    心を開くことができる存在というものは、掛け替えのないものなんだと感じた。
    自分の人生を少し振り返ってみよう、そんな気持ちになった。

  • こころに残る本。
    何年か経つとまた読みたくなる本。
    こころの奥に静かに響く、好きな本のひとつです。

  • 高校生の 教科書で 一度読んで 利己心ぐらいしか
    感じなかったと思います。

    このたび 再び読んでみました。

    夏目漱石は 文章が うまいですね。

    高校生の時には そんなこと 全然思いませんでしたが。

    長い間 読み継がれる 理由が ちょっと わかりました。

    「私は わざと それをみんなの目につくように、もとのとおり机の上に置きました。」

    この表現 最高の 利己心ですね。

    高校生の時に 今と同じ 感想を持てたら いやな 大人に なっていたでしょうね。

  • 『こころ』を初めて読んだのは十数年前、高校のときの課題としてだった。こんな話だったかと、いま、思い出した。改めて読んで思ったのは高校生くらいの時分に強制的に読ますのは止めさせたほうがいい。この小説は沢山の駄作良作に触れてこそ真価がわかる。なるべく早く名作に触れさせたいというのは大人のエゴだ。せっかくの作品を嫌いになってしまう。

    『こころ』は淡々と続く独白と終盤の激情、そこに至る登場人物の細やかな挙動と機微を味わう作品といえよう。漱石の文章はしっとりとして柔らかな、いうなればショパンのような文感を持ちつつも、感情を揺さぶる強さを兼ね備える。主人公とともに抱えきれぬ秘密を押し付けられる唐突な終わりの演出と筆力は、エンタメが揃った現代においても決して劣るものではない。とはいえ、そこに至るまでは小説としての古臭さと退屈さに我慢せざるを得ないのも事実だ。そこまでの道は「日本語」という言語の持つ質感を楽しめるかどうかが肝なのである。

    この名作は、たくさんの小説に触れて文章の良し悪しがわかるようになった大人に是非読んでいただきたい。

  • 3.8 序盤、なぜか切なくて堪らぬ感覚を覚える文章に大変惹き付けられた。先生の過去が明かされる段になると、彼の苦悩の正体が色恋&自業自得によるものと分かり、その手の話題が苦手な私は少し興醒めした。とはいえ何を得ても生きていかれぬ苦悩の存在が美しい文章で私の心にも流れ込み、過去にない読書体験となった。身内の欺き・Kの死・明治天皇の死を経た先生は、誰にも救えず何を得ても生き続けられぬ人だった。もし存命の先生に会えたら語り手は何と言葉をかけただろう。当時の男女差・天皇の扱いは新鮮。大層生き辛そうなKと先生の心は歯痒い。

  • これ結末を知らない状態でもう一回読み直してみたいです。何でこんなに死の気配が漂ってるんだろう…あっ、もしかして、って考察が捗ったと思う。それくらい構成が巧み。先生が思わせ振り、焦らし過ぎです。誰かに聞いてほしかったんだね。「私」との出会いは運命みたいです。

    明治の精神に殉死すると妻に冗談を遺していった先生。しかし彼のセンシティブも辛さも、令和の私達にまで影を落としているような気がしてなりません。現代日本人に精神モデルを示した、小説を超えた思想書のようなものだと思います。なんて本を…なんという「遺書」を遺してくれたんだ漱石…いや「先生」。近代人はそれまでの決まりきった人生の営みから離れ、思考や行動の自由を得たけれど(本書は自由恋愛の話でもある)、同時にそれは「孤独」を強く意識させられることでもあったのかなと。影の面も書いています。

    恋とは先生の言うような「罪悪」では決してありません。全ては先生が大切な人たちに開示できなかった「心」の問題なんです。勝手に死んでしまうのはずるい。
    Kが死んだ本当の理由はわかりません。先生が彼を観察して語ったことしか書かれていないからです。けれど先生は手紙で、誠実な心からの偽りのない真実(これは先生から見てですが)を「私」に述べました。先生はついに、Kの死の理由に自分と同じ孤独を見出だしたんですね。おそろいの孤独を。

  • 明治の文豪、夏目漱石。
    本屋さんで夏のおすすめ本として置いてあった。

    本書の主人公である「先生」の学生生活の下宿先のこと、学友について等が書かれている。
    読み進みにつれてショッキングな内容に読み終わったらしばし悲しくなってしまった。
    当時の時代背景や夏目漱石について調べてみたくなった。

    国語の教科書にも載っているようであるが、全編を読んで欲しい。

  • 先生、生きてるかも。

  • まんがで読破を読んだ後にストーリーの細部が気になって小説で読み直した。

    やはり細かい部分の心理描写、その機微は小説で読まないと伝わらない。

    後半は「先生」の懺悔とも言える手紙が長々と続くが、不思議と「何言ってるんだこいつ」とはならない。このあたりの描写の巧みさが夏目漱石が文豪たる所以か。

    明治末期、1910年ごろが舞台で、女性が家事の一切をするような男性優位な時代の描写をところどころで感じる。

  • 「先生」とKの間に起きた事件と先生の自殺に至る経緯が、「先生」から私に宛てられた長い遺書の中に語られる。小説は「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部に分かれ、前半の2部で先生の人となり、私の環境が詳細に説明される。
    しかし、本小説の最大の事件である「先生」の自殺については、明らかにされず、前半の2つの章と、遺書の中に述べられるKの精神的特質、西南戦争のときに自決を決意したまま明治天皇の崩御まで35年間待った乃木希典の殉死がヒントとして提出されている。Kの自殺が先生の自殺に多大な影響を与えているのは確かだが、①乃木将軍の殉死を持ってきて、先生が「私に乃木さんの死んだ理由がよく解らないように、あなたにも私の自殺する訳が明らかに呑み込めないかも知れません」とあること②「先生」の過去を善悪ともに他の参考に供するつもり」とあることから、過去の自分のエゴイズムからくる、単なる自己嫌悪による自殺ではありえない。
    非常に暗い小説ではあるが、先生がなぜ人間を恨むようになったのかの経緯、奥さんとの関係が生き生きと描かれる。明治時代の手製のアイスクリームというのはどんなものか見てみたい。
    おそらく数年経って読むと先生の自殺の意味が分かるかもしれない。小説そのものが再読を強く要求する稀有な小説である。

  • さすが文豪だ〜。すごいね。語彙がなくてすみません…。自分が経験したことかのように、いろんな人物の心情を表現できるの、すごいね。先生の手紙になってからは、一息に読みました。

  • 何度も読みかけては挫折して長らく放置していたのだけれど、ふとまた読み始めてみたところ、今度はぐいぐいと引き込まれるように読んでしまった。小説との出会いにはタイミングというものがあるのだな、とつくづく感じたところ。

    教科書や読書感想文の宿題で読んだ以外は、実は初めての夏目漱石です。明治時代の書生さんや思想家などをイメージしながら、現代とは異なる考え方、ものの見方、ある種のプライドにふむ・・・とうなる一方で、現代と変わらない心の動きなども垣間見えて、近代文学を食わず嫌いしてはいけないなと。長く読まれるには、やはりその理由があるのだし。

    先生の遺書は衝撃だった。人にされたことを憎み、それなのに人に同じようなことをしてしまい、その自分をまた憎み苦しみ、輪っかになっているような運命に巻き取られていくさま。読んでいて苦しかったけれど、この遺書を、病床の父を置いてまで電車に飛び乗って読んだ「私」はどう感じたのだろう。「私」にまで何かが及んでいないといいのだけれど。

  • 高校生の頃、ただ利己的だと思っていた「先生」の印象が少し変わった。「お嬢さん」を巡る「先生」の「K」に対する対応には利己的でなんと自己中心的なのだろうと感じた。けれど、人間のこころにはそういう感情が渦巻いている。自尊心や利益や友情や愛情や猜疑心や…。色々な感情の中で「先生」の「K」に対するような葛藤がある。つまり、誰しも「先生」になり得るのだ。「先生」は自尊心が余りにも強すぎたのかな。そして「K」も自尊心やあるべき自分の姿への憧れが強すぎたのだと思う。「K」の死を背負い、他者の評価を気にして自責の念と共に生き続ける「先生」にとって、素直でまっすぐな「私」との出会いは、とても救いになったのじゃないかなと考える。人間のこころの中が丁寧に描かれている作品だと感じた。

  • 高校の国語の教科書に載っていた極一部しか読んだことがなかったので読んでみた。
    「先生」の気持ちはとてもよく分かるような気がする。
    一部だけ読むのと全部読むのでは全然印象が違う。

  • 国語の教科書に、先生の手紙の部分だけ載っていて、夢中になってそれを読んだあとに全編をちゃんと読んだ。
    先生のことをどう感じるかは、その時々で変わっていく。
    先生は苦しかったのかもしれないけど、そんなに自分とその人生のことばかり考え、挙げ句自らの裏切りに耐えられず命を絶つなんてある意味ナルシスト的というか、でも精神病と思えば仕方がなかったのか。
    その時々で先生にイライラしたり、お気楽に感じられる主人公にイライラしたり、逆に儚く共感したりする。

  • 現代人のわたしには、「先生」や「K」の考え方に対して同意出来ないところが多いが、夏目漱石の文書がとても綺麗で何度も読み返したくなる作品。

  • こころ そのまんまやで
    ただその罪悪感との葛藤はそれほどか。しみったれ!

  • [下十一-二十]
     このあたりは本当に、少し背景を変えさえすれば、今でもよく描かれる青春譚の変奏にしか読めない。もちろん、こちらが変奏なわけもなく、こちらこそが本家にあたる物語なわけだけれども。若かりし先生の気持ちの揺れが我が事のようにわかりすぎて、切なくもあり、これから先のことを思い、辛くもあり。

    --

    [中十一-下十]
     初読時はまだ幼かったこともあって、「中」でにわかに父親の死に至る様を長ながと読まなければいけなくなったのが腑に落ちなかったのだけど、読み返すと、ここはどうしてもそうでなければならなかったと思う。「私」が死に至る父親と対峙し、そして、そこへ先生の手紙が届く。そして、先生の親の死にまつわる叔父との齟齬から語られ始める長い長い手紙。子どもの頃には身に沁みてはわからなかったその諍いと、それを経験したあとの先生の目から見た「私」の若さが、今の自分にははっきりそれと想像できる。漱石の作品はやはり、年を重ねてから読んだときのほうが、しみじみと自身に添ってくるように思う。

    --

    [上三十一-中十]
     中では背景が変わり、「私」の田舎でのエピソードになる。「私」と両親との立ち位置の違いや、それに付随する両者の齟齬など、明治の話なのに、現在とそうは違わない部分も結構あって、嘆息。もしかしたら年若い人たちにはわからない感覚かもしれないし、そうあってほしいとも思うけど、なんとも。

    --

    [上二十一-三十]
     先生の過去がほのめかされるエピソードが徐々に出てくるんだけど、先生が「私」に心を開いてくる過程でもあるなぁと思う。しかし、そこで立ち小便をするのはイカガナモノカ。ちょっとどきどきしたよ!

    --

    [上十一-二十]
     先生の秘密を知らされない妻が可哀想すぎる。自身もその当事者であったはずなのに、何も知らされないままなんだもんなぁ。
     それにしても、「私」と先生はある意味両想いだと思う。

    --

    [上 一-十]
     何回目かの再読。先生の秘密をすでに知っている状態で読み返すので、読むたびに先生と妻との関係にしんみりする。
     それにしても、「私」は本当に先生のことが好きなのだなぁ。

  • 前回はいつ読んだのだろう。心理描写のすごさに引き込まれて読み進むが、人間のもつ暗さを目の前に示され、徐々に暗澹となる。人間の本質をあらわしたすごい小説だと思うが、前を向いて生きる道しるべにはならない。反証にもならない。▼疑心や妄想で一杯になっている先生や友人kや主人公はインテリ特有の性格なのだろうか。自分に正直である者に特有の性格なのだろうか。しかしインテリであっても、思考と判断の根拠は事実から外れ、愚かな結果に終わるように見える。▼一方、さっぱりした気性の下宿の奥さんやお嬢さんの生き方は現実にあり得るのだろうか。主人公の叔父の損得に走る姿は、今の政治家が重なった。また、「こころ」には出てこなかった強い意志で生き抜く人生もあり得るのだろうか。

  • 前半の私の疑問が後半の先生の友情と恋の手紙なのだが、先生の手紙が長いし濃いしで、前半が吹っ飛んだ。しかし私に残されても困るな・・・。
    「こころ」という題がぴったり。Kのこころ、叔父のこころ、お嬢さんのこころ、先生自身のこころ。秘めてる他人のこころの内は分からないもんだ。

  • 「はじまりの本」です。
    年齢を重ねるたびに、内容の受け取り方が変わります。何度も読んで、深く考察したい一冊。

  • 高校生のとき、授業中に読んでた

  • 15年振りに再読。100年前に書かれた小説であるが現代にも響く名作。
    読み終わった時にタイトルが深く刺さる。
    今回読むにあたって乃木大将と明治天皇のことを調べたら時代背景もよく分かり、さらに深く考察することが出来たと思う。

  • 先生は「私」に宛てた遺書となる手紙の中で、長い間自分の心の中にしまっていた自責の念を告白することで、自身の気持ちの整理をつけたかったのかも知れない。先生は友人Kとの関係において、自分が最も忌み嫌う打算的な人間に、結局は自分も成り下がっている事は分かっていても、どうする事も出来ないジレンマがあった。それと同時に妻を愛する気持に全くの偽りはなく、妻に対する言動とは裏腹に妻をとても大切に思っていたことがわかる。

    • くどうさん
      いいね、ありがとうございました。

      こころ私も読みました~。
      こころの動きがほんと人間らしくて、だれにでもある醜い感情だとか、弱い感情だとか...
      いいね、ありがとうございました。

      こころ私も読みました~。
      こころの動きがほんと人間らしくて、だれにでもある醜い感情だとか、弱い感情だとか愛するという気持ちだとかがとても丁寧に描かれていて素敵ですよね。
      こころの動き方がハッキリとわかる作品ですよね...!!
      2018/10/29
  • 昔、中学か高校の教科書に一部分が載っていたはずで、しかし、どの部分かは覚えていないのだが、読んでいて、「殉死」と言う部分は記憶がある気がした。

    最近、漱石を数冊読んだが、「こころ」は文章が美しい。そして、最後に息をのみはらはらする心情描写がすばらしく、傑作だと思う。

  • まず前半で主人公に先生が言った「恋は罪悪だ」という言葉に伏線、
    そして後半の遺書の中ではその言葉の意味が語られる。
    恋において、嫉妬や勝敗に捕らわれてしまった先生の苦悩と
    恋というものが、他の何者よりも残酷なものであるような感覚。

    ただ、ネガティヴな印象だけ残すわけではなく
    だからこそ恋は素晴らしく、尊いのだと
    しっかり感じることができる。
    大切な一冊になった。

  • 主人公や先生のこころのありようが細かいところまで表現されていて、感情移入がしやすい内容であった。義父に裏切られた先生が、今度は自分がkを裏切ってしまったという過去を背負い生き続け、とうとうそれに耐えることができずに自分も自殺という道を選んだ。先生は、妻を最後まで愛し、誰よりも信用していた。しかし、そこまで信用していた妻にさえ、過去の自分をうちあけることができなかった。それほどkの死は先生の心に大きな傷となったことがわかる。kが遺書に、もっと早く死んでおけばよかったと書いていたことから、助けようとしていたkをさらに苦しめる結果となってしまった。ただ、きちんと言葉で示す、ひとを信じることが最後までできなかったことがこのような悲劇を招いてしまった。親戚に裏切られ、それは先生にとって不幸なことであったが、こころのもろくなった先生は、その行動からkを自殺に追い込み、最後は自分が自殺することで最愛の妻も不幸にさせてしまうことになる。過去をぬぐいきれないことに対する自分へのいらだちと、人の気持ちを知っていながら、人を傷つけても自分のおもうままに行動した。これらの出来事が、先生を暗い闇にいて人間に対しては疑心を抱く原因であるが、最後は、自分さえも信じる事ができなくなってしまった。せめて、愛する妻にさえ対してこころを打ち明ける事ができていたならば、先生は違った人生を歩む事ができていたのかもしれない

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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