- Amazon.co.jp ・電子書籍 (111ページ)
感想・レビュー・書評
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昭和4(1929)年に発表された。伏せ字があり、その後発禁ともなった。献上品のカニ缶詰めに「石ころでも入れておけ! かまうもんか!」という言葉が、不敬罪となり逮捕され、獄死する。
カムチャッカ沖で蟹を獲り、そのまま船内で缶詰に加工する蟹工船・博光丸。
働く人は400人を超える。そこでは出稼ぎ労働者たちが劣悪な環境の中、
船主や監督たちによっておもいのままに支配され、逃げ場のない絶望にさらされていた。
「おい地獄さ行ぐんだで」と物語は始まる。
蟹工船は「工船」であって「航船」ではない。だから航海法 は適用されない。また工場でもないので、労働法規も適用されなかった。そのため蟹工船は法規の空白域でとなっているが、ロシアのまじかであり、帝国の軍隊が守っていた。カニを取ることは、日本帝国の大きな使命であり、天皇陛下のためだという。日本男児の意地を見せよと過酷な労働を強いる。また、海はウサギが飛ぶほど、荒々しく、大きく揺れている。蟹工船の中のひどい環境の描写が巧みである。
食堂には、「飯のことで文句をいうものは、えらい人間にはなれぬ。不自由と苦しさに耐えよ」
監督は鮭ゴロシの棍棒を持って、大声で怒鳴り散らしている。「いやしくも仕事が国家的である以上、戦争と同じなんだ。死ぬ覚悟で働け」という。監督は、そこで働いている人をどだい人間だと思っていない。漁夫や雑夫が死ぬことをなんとも思っていない。死と隣り合わせの生活。
ロシアに漂流した工員が、ロシア人の家庭で「貧乏な人、プロレタリア。日本は働かない人が金持ち。ロシアは働く人ばかり。ずるい人いない。人の首占める人いない。働かないで、金持ちをプロレタリアがやっつける」と言われるのだ。そのことは、真っ当だと思って、工員の中にそのことが浸透する。西村賢太の『苦役列車』は、この働く人の一緒に戦うというものがなく、分断され、貧しいもの同士が足を引っ張り合う。そこには希望がなく、ヘルスに行くのが楽しみになる。
『蟹工船』では、「殺されたくないものは来れ!」働く人がストライキに立ち上がるが、結果としてリーダー9人が連行される。それでも、もう一度で物語は終わる。
格差社会が、ますます進み、下流層の人の増大、中流層の下流化。一人一人が、孤立化、分断されている中で、希望とは何か。それを100年前の小林多喜二が考えていることに意味があった。 -
kindleunlimitedで読了
面白かった。
言葉は難しく細部は省いて流し読みをした。
蟹工船の劣悪な労働環境に胸を打たれた。描写が生々しく状況が想起された。
昔の時代の労働者への扱いの酷さ。戦前だからこその物語であるが、それを知らない今の子にこそ読んでほしい、今の人権のありがたみを知ってほしい、と感じた。
皆で団結して監督を打つところは非常に胸がすいた。 -
「航船」でなく「工船」としている点でこの航海は「航海法」のグレーゾーンと認識され、出稼ぎ労働者(船員)たちが人権なしの奴隷のような扱いを受けていたという。そんな悪しき閉じた世界が世界人権宣言が出されて20年近くも経った昭和40年代まであったというのも驚きだ(作品設定では昭和初期となっている)。
人権宣言のような秩序が生まれても、こういう「閉じた世界(権力に一般人が抗えない特別な空間)」にまでルールが浸透するには何十年もの歳月を必要とするのがわかる。でもこのような「秩序の枠組み」は時間はかかれど、ひとりひとりが望む限り着実に浸透していく。そして現代はインターネットも存在する。浸透速度は上がると信じたい。この2点は今後も持ち続けたい希望だ。 -
蟹工船に乗り込む漁夫や雑夫達。
生々しい描写で描かれる船上での生活環境・仕事環境。
現代の職業環境からは考えられないほど労働者が酷使されている。そして労働者たちは共産主義の思想に理解をしていないもあこがれを抱く。
モデルとなった船1920年頃のものだそうだ。明治時代が終わり、大正時代に入ってすぐ。
資本主義社会が行き過ぎ、働く労働者からの搾取により利益が積み重ねられていたという事実を改めて思い知らされる。
思えば団体交渉権ともいえる一シーンが出てくる。集団の労働者の強さが見えるのだが、この時代の理不尽さは団体交渉権の力を大きく上回っていた。
ブラック企業というのは現代でもよく聞く言葉だ。昔に比べればマシという話ではない。利益を追求する資本主義を悪いとは思わないが、皆が労働や行動に見合う対価を得られ、幸せに生きれる世界を願いたい。
これは函館から出向した船での話だが、作中には開墾の為入植し餓死した農家のことも書かれている。
北海道に在住しているが、明治時代から開拓されたこの土地にはまさに言葉通りの血と汗と涙がしみ込んでいるのだろう。
道路は整備され、河川も直線化されたことで洪水も減った。泥炭地が多くあり本来は営農に向かないが多くの表土入れにより農業も盛んになった。互助の精神が育まれ独特の文化も多くある土地だ。
北海道開拓の歴史はまだ150年程度の浅いものである。
先人たちの苦労を少しでも感じて北海道で暮らしたい。 -
蟹漁船の過酷な現場で働く労働者たちが団結して資本家に立ち向かう物語。
極寒のオホーツク海の船上という逃げ場の無い環境に比べて、うつで休職している自分には休職という逃げ道があることがいかに幸せか実感できた。 -
最近、炭鉱などの労働者のことが気になって、蟹工船を手に取った。
想像より酷い。今もある大きな会社が、労働者にこのような仕打ちをしてきたのかと思うと缶詰に伸びる手が止まる。今の資本主義社会で生きるにあたり、かつての労働社会のことは知っておかなくてはいけないと感じた。 -
日本のプロレタリア文学。著者である小林多喜二自身、本書を出したことにより当時の政府に拘束されてしまったことは歴史の時間に習った。幼い頃はプロレタリアが何なのかよく分からず、何が悪いことなのか理解できなかった。しかし実際に本書を読んでみると、非常に強いメッセージを否が応でも感じてしまう。本書での表現はとても生々しく、読んでいて痛々しい箇所が多い。ただそれにより、ブルジョワに搾取される労働者の悲惨な状況を鮮明に焼き付ける。
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少し前に話題になった名著だが今更ながら読んでみた。
なかなかすごい描写で圧倒された。
蟹工船の中の劣悪な勤労状況の描写と、ソビエト領に流された川崎船の乗員が体験する共産主義の教化のコミカルな様子がものすごい対比を生む。
国を象徴する軍隊の駆逐艦が民間企業による労働力の搾取に加担する姿も生々しい。
名著といわれるだけの迫力があった。 -
若い頃に読まなくてよかったと思うほど、苛烈で生々しい描写であった。その場も背景も、どちらの描写も読み進めるのがつらい。ただただ義務のように読んだ。それでも読むべきだと思う。
同じ日本であっても、現在でも、地方によって貧富の差があり、それゆえにやらざるを得ないことや、やりたくてもできないことがある。
いかにそれを減らし、多くの人が幸せを感じられるよう働きかけることを考え、行動する。 -
かなり有名な本だが、初めて読んでみた。
この舞台が、小樽の缶詰工場だったことも知っていたが、かなり凄絶である。
命をかけて仕事をしているとはこのようなことだろう。
まさに日本の共産主義のバイブルのような本。
現実はどうなのか、誇張はあるのか、そのあたりが大変気になる。
蟹工船 怖い で検索がたくさんあったのには納得した。 -
日本文学をそれほど読んでいない僕、ふとしたきっかけでニンテンドーDSの「DS文学全集」を中古で購入、そこ経由で読了。しかし、これほどまでに人間を描きつつ、労働というものに潜む過酷な現実を描いている作品とは思わなかった。
舞台はカムチャツカあたりの加工機能をもった船の上ではあるが「刊行から100年近く経っても労働の現場はさして変わらないのではないか?」とも思わせる本質的な内容に驚愕の一言だ。プロレタリアート文学というか、日本文学の金字塔的存在と言われるだけのことはあるね。 -
字面だけで、こんなにも大変な環境に置かれているのかって分かるほど、イメージしやすいように書かれていた。社会の不平等が感じられた。
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とても激しく、読み進めるのが辛い内容。けど、きっと読まなければいけない、通らなければいけない類の本だったと思う。
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以前から読まなくてはいけないと思っていた本。なぜだろう?自分の組織とかなり重なる。自分と照らし合わせて読んでしまう。私は監督か?船長か?
最後に切り捨てられるのはやはり自分か。 -
最初は慣れてない言葉が多く頭に入ってこなかったが、だんだんと引き込まれていった。過酷な労働環境を表している表現が特に生々しく、何度も嫌悪感を抱いたが、何故かページをめくる手が止まらなかった。
読んだ後調べたのだが、蟹工船はプロレタリア文学の代表作らしく、今の日本の労働環境が改善されつつあるのは、こう言った訴えがあるからなんだと思った。
本書はフィクションであるが、「地獄」「糞壺」といった言葉で置き換えられる環境はあったに違いない。
最後は「希望がある」と捉えていいのだろうか? -
臨場感溢れる表現力であっという間に読み終えた。劣悪な蟹工船の職場環境は心痛くなる場面が多々あった。クライマックスで幾分か心がすっきりした。
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一時話題になっていたような気がしますが、世間がそれだけここに書かれているような労働者に対して強い共感を感じていたのでしょうか。言うなら自分自身の姿を船員たちに重ねていたのでしょうか。
内容としては現代の資本主義の悪い部分を強調した物語。というよりも実際のことらしいのですが、どこまでがノンフィクションなのかは分かりません。労働者が働けば働くほどに資本家たちは肥えていき、労働者たちは搾取されるだけの存在に。さらには国家のため(ロシアに負けないため?)という概念を植えつけられることで、必死になって働かなければならないという強迫観念に似た心境になっているんでしょうね。最近は割と減った気がしますが、ブラック企業というのも同じような構造体なのではと思います。
こんな環境であれば社会主義が素敵な世界に見えるのも頷けます。そうならないためにも、現代日本では福利厚生や労働組合によって労働者を保護するような仕組みが出来ているのは非常にありがたい事です。そういった仕組みのない外国では、さらに格差が広がったり働き口がなかったりで、本書のような搾取が未だにあるのかもしれません。 -
読むだけで、蟹工船での生活の過酷さが伝わってくる。特に気になったのは、作業環境と生活環境の不衛生さ。逃れることのできない船上という閉鎖空間と自由のなさ。監督の横暴ぶりと傲慢さ。
とても耐えられないと感じた。まさに生き地獄だ。
当時の資本階級の絶対的で圧倒的な権力労働者の無力さが感じられた。
蟹工船での生活ぶり、労働者の監督との葛藤がつぶさに描かれていて、生々しい。
物語が最終的にどういう決着を見るのだろうかと思っていたが、最終的には労働者が団結する姿が描かれており、胸をなでおろす終わり方になっている。
現在は労働組合が組織され、労働三法等の法律で労働者の権利が保障されており、さすがにここまでのひどい労働環境は日本には存在しないと思うが、途上国ではまだこのような状況は存在するし、現在の日本でも長時間労働、パワハラ、セクハラという問題は残っている。古くて新しい問題だ。 -
辛かった〜〜。私の地元の労働者は、この時代こんな環境で働いてたんだなあと思うとほんと辛い。。この本書いた後の小林多喜二の亡くなり方もまあ無惨。。声をあげられない時代。。もう90年前の作品だけど、現代のワーキングプアとか考えたら全然色褪せないし、まだまだ問題提起してくる小説だと思います。
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すごい本だった。この内容では当時としては逮捕されてしまうだろう。当時を肯定するのでは全くないが、今のこの国がいかに生温いか、腑抜けになってしまったかがよく分かる。
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貧しい賃金労働者階級が劣悪な環境で働かされている。
無事に故郷に帰れるかどうかもわからず、支配階級は労働者を家畜のように扱う。単なる不安というよりかは絶望の匂いが文章から伝わってくる。
資本主義の負の側面を捉え、社会主義・共産主義といった立場からの革命を「蟹工船」という舞台で描いている。 -
北海道旅行の課題図書として、30年以上ぶりに閲読。
旅行では北大博物館を見たりしたが、やはり開拓の尖兵、官立大学の編んだ歴史と、小樽商大出身の著書の編む物語の違いは、一つの事実を、違った立場から見せてくれる面白さを感じさせてくれた。
人の世というものは、様々な矛盾や惨さを孕みながらあるものなんだな、と改めて感じた一冊だった。 -
20180422
古典面白ーーい。内容汚いけど。
資本主義のキツい風刺とホモ要素。
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昔の教養ある人の書く小説って多少勉強してた奴がちょっとほくそ笑める要素があるから人気が強いのかもしれませんね。名作だと思いました。
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世界史やってたなら色々思い出して多少おもろいかも。川端もそんなポイントがちょこちょこ散ってた。 -
・6/19 読了.ふと読んでみようと思い立って一気読み.もっとドラマチックに話は展開するのかと思ってたけどそうでもなかった.赤化って言ってる割には労働者の人権問題ぐらいの話題であって、だから社会主義がいいのだっていうところまで行ってしまうのは極端すぎるよね.
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蟹工船での悲惨な労働実態を圧倒的な臨場感で表現し、読者を一気に物語に引き込む。
漁夫や雑夫達の言葉には方言が多用され、意味が分からない部分もあるが、決して読み辛くはない。むしろ方言が文章に生き生きとした印象を与える役目を果たしているとも言える。
過酷な労働による病や刑罰により死んでゆく労働者達。悲惨ではあるが、不思議とむごたらしさを感じないのはなぜか。
それはおそらく人間の生きる力や活力を強く感じられる小説だからであろう。 -
支配する側とされる側の力の差が圧倒的に大きすぎる、このストーリーの時代に生まれなくて良かった。
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言わずと知れた、有名本。この本を褒めたら共産党員だと叩かれる、なんて書いてあるのも見かけたけど、まぁ、もっとそっちよりの小説は現代の方がいっぱいある気もするわなぁ。
でもまぁ共産主義云々を別にすれば、というかその部分があるというだけで、割と普通の僕らの七日間戦争おっさんバージョンで、皆で頑張ろうぜっていう青春映画っぽいんだけど、最後の最後、ストを経験した人々を警察や各界に送り込んだって記述がまぁヤバイよね。これが草ってやつか。
でも蟹取るのって大変なのね。これからはもっとありがたく食べよう。 -
「おい地獄さ行ぐんだで!」 二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた 位置5
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「蟹工船」は代表的なプロレタリアート文学と言われ、最近の不景気で再び人気になったもの。とりあえずソフトに付属した書籍データの中に含まれていたことと、あまり長くもない作品ということで実験的に読んでみました。
以前はこういう電子機器で読書なんてしにくいだけだと思っていましたが、実際に読んでみると意外と違和感もありません。字の大きさも変えられるので、最大にすれば揺れる電車の中で読むのにも適しています。データを購入してまでこれを使おうとは思いませんが、青空文庫のリーダーとしてはかなり良い感じです。
作品の内容としては、予想外に政治色が強かったことが印象的です。学校で習った時には、労働者の過酷な生活を描写したという点が協調されていた記憶がありますが、後半では赤化された彼らが団結して闘争を始めるわけです。この部分は学校ではどう扱われていたのでしょうか。