パンドラの匣 [Kindle]

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著者 : 太宰治
  • 2012年9月27日発売
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (97ページ)

パンドラの匣の感想・レビュー・書評

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  • たとえばフラれて何か月も何か月も涙目で過ごした末の末のある日の朝、フっと気持ちが軽くなって憑き物が落ちたように楽になる。ああ、今度もようやくヤマを越えることができたようだな、みたいな。私も雲雀も、スケールは違っても脳内レベルでは同じ処理を経ていると思う。パンドラの匣の隅っこにある「希望」を一瞬見失っても、よく見ればあるよ、「希望」は。そして男にとって女がパンドラなら、女にとっては男もパンドラだよね。
    読後感が実に爽やかなんですけど、こんな感じの読みでいいのかな?

  • 結核治療所である「道場」内での出来事を主人公が綴った小説。書簡形式の小説は、今となってはたくさんあるけれど、この頃は斬新だったのかしら。
    あまりに小さなことに一喜一憂するものだから、途中は飽き始めたけれど、最後は爽快感。ああだこおだうだうだ逡巡したりした結果、最終的には突き抜けた感じが気持ちいい。書簡形式だからこそ、最初の手紙に比べたら最後の手紙に反映される主人公は成長し、潔く自ら「新しい男の看板」を降ろすことにしたと述べるあたりはまさに一皮むけた感じ。

    『献身とは、わが身を最も華やかに永遠に生かす事である。』

    けんしんの内容について、機会があればゆっくり考えたい。

  • たとえばフラれて何か月も何か月も涙目で過ごした末の末のある日の朝、フっと気持ちが軽くなって憑き物が落ちたように楽になる。ああ、今度もようやくヤマを越えることができたようだな、みたいな。私も雲雀も、スケールは違っても脳内レベルでは同じ処理を経ていると思うわ。パンドラの匣の隅っこにある「希望」を一瞬見失っても、よく見ればあるのよ、「希望」は。そして男にとって女がパンドラなら、女にとっては男もパンドラよね。
    読後感が実に爽やかなんですけど、こんな感じの読みでいいのかしら?

  • 結核療養所である「健康道場」に入所した20歳の男性が親友に宛てた手紙という形で綴られた小説。

    終戦に涙し、時代の変遷期に自己も新しく「ただ新しい大きな船の出迎えを受けて、天の潮路のまにまに素直に進んでいる」という心境の彼の綽名は「ひばり」。

    「ひばり」の道場での日常は、同室の人格者である「越後獅子」、都々逸をうなる気のいい「かっぽれ」男前の「つくし」英語が鼻につく「固パン」といった個性的な面々に囲まれ、療養所でありながら何やら楽しげ。
    と共に、道場で働く女性の品定めに余念がないのは「ひばり」の若さの証拠か、特に2人の女性の間で揺れ動く恋心はなかなか複雑で正直には語られず、友に出す書簡の中では結構、辛辣に女性批判をしている。

    が、終盤に”なぜこうも女性批判”していたのかが分かり少し微笑ましくなったりもする。
    恋心に「古いも新しいもない」と書いてしまうのだ。
    「新しい男」としての看板をおろした「ひばり」が、さっぱりして希望に満ちている姿が印象的だった。

  • きれいなさっぱりとしたお話でした

  • なんと、太宰治の小説を読んでポロリと涙を流す日がくるとは思わなかったな。
    悲劇で泣くという話ではないのだ。
    最後の方の花宵先生の講話「献身」の言葉が非常に良くて。
    肺結核で健康道場というところで入院生活を送る主人公ひばりとその周囲の人たちとの交流や恋を通して成長する物語。特徴のあるいい人たちがたくさん出てきて生き生きしている。



    “献身とは、ただ、やたらに絶望的な感傷でわが身を殺す事では決してない。大違いである。献身とは、わが身を、最も華やかに永遠に生かす事である。人間は、この純粋の献身に依ってのみ不滅である。しかし献身には、何の身支度も要らない。”

    “自分の姿を、いつわってはいけない。”

  • ・・・・・・っということで、転んでもただでは起きないのが小説家だろうか?

    たぶん間違いないと思うけれど、彼が肺を病んで療養中の経験を元にして書いた小説。

    何の変化もない退屈な入院生活を人に読ませる作品に仕上げてしまう。

    小説家たる者こうでなければならない。

    変化をつけるために、手紙形式にしている。

    今回の主人公は若い青年(二十歳?)の視点で描いている。

    手っ取り早く言えば、主人公と女性看護師2人の三角関係の話である。

    とはいっても生々しいものではなく、日常何気ない会話の中に隠されている相手を恋する若者たちの心理描写である。

    その恋心をさらに友への手紙の中で語らせている。

    読者はその手紙を読む経過の中で、この主人公の心の動きを推理するという仕掛けである。

    なかなか凝った演出であり、そしてそれが見事に成功している。

    新聞か何かの連載で書かれたものらしいが、手紙という形式はそういう区切りのある執筆条件を上手くクリアしている。

    さすが太宰治、策士の面目躍如である。

    さて、中身であるが、社会に出る前の頭でっかちの青年の心理描写がメインである。

    さらに、終戦直後のアメリカ軍が進駐する中の不安な世相も上手く反映できている。

    そして、戦後若者がどう変わるべきかちょっとだけ肩に力が入っていて、特に女性の変化に好感と期待を込めている。

    敗戦直後の若者たちの心理が良く伝わってきた。

  • 結核患者の療養所に入所する青年から親友に宛てられた手紙という形式の物語です。
    文庫本上から一見すると、よくある一人称の独白文といった趣ですが、元が新聞(河北新報)の連載小説だった事を想像すると、これは非常に面白い試みだよなぁ、と感心しながら読んでいました。
    つまりタイムリーな読者であれば主人公の親友という立場になり、毎朝新聞と共に届けられる主人公からの手紙を読むことが出来たという訳ですよね(実際、新聞掲載時期と作中の時間軸はほぼ重なるようです)。
    こういったエンタメ性の追求が太宰作品の大きな魅力かと。
    流石です。

  • 後期太宰作品の名作の一つです。青空文庫のものをkindleで読みました。良い作品ですね。本作は映画化もされているようですが、原作は書簡形式となっており、物語の流れが一人称の主観となって書かれています。内容は、結核療養所に入院している患者とそこに勤めている医師や看護婦との人間関係が描かれています。太宰作品で結核療養所が舞台となると非常に陰鬱なものかと想像してしまいますが、実際には非常に明るく希望に満ちた作品となっていますね。しかも書簡形式という設定もあって、終盤には叙述トリック的な要素も配合されていることが分かって面白みが倍増します。この翌年には代表作「人間失格」を上梓しているとは考えられないような明るい作品となっているので、実に多彩な文筆の出来る作家なんだということを改めて実感します。太宰作品は青空文庫に多数アップされているので、これを期に一通り読んでみようかと思います。

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