三浦綾子 電子全集 銃口 (上) [Kindle]

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  • この小説が著者の他の小説と異なるのは、異常な精神状態にあった戦時中の日本が抱えていた問題あるいは矛盾が聖書の精神に照らされて指摘されるでもなく、また、聖書の言葉の解釈によって解決の指針を与えるでもなく、ただ、普通の精神をもった善良なる登場人物たち(すべてがキリスト教信者として設定されていない)が感じる「違和感」を散りばめるに留まっているところである。太平洋戦争のテーマは大きい。また、激動の昭和時代を振り返るというテーマが与えられていて太平洋戦争のみに深入りできなかったこともあるだろうが、いつも何か生きるヒントのようなものをもらって勇気づけられてきた者としては読後にいささか物足りないものを感じた。そんな中で、思想統一の暴走によって当局に勾留されることになる綴り方、今で言う作文の重要性に重ねて説かれた「個人の尊さ」がとても印象に残った。

    所々文章を引用させてもらいながら要約するとこうだ。

    綴り方は、同じ題でも書かれたものは一人一人異なる。綴り方は本来人真似のできないものであって、誰にも真似できないことを自分で書くということである。つまり、一人一人の人間が、いろいろの生活を様々に感じたり、様々に見つめたりして生きているということである。

    一人一人の人間の心が違うということ、自分の考えを持って生きるということは大切なことである。転ずれば自分が生まれたきたことを大切にしなければならないということである。自分と同じ人間は地球が始まって以来、地球がなくなるまで二度と生まれてこない。一人一人が尊い命をもっているのだから。

  • こんなに読みやすい文体だと思わなかった。

  • 三浦綾子さんの作品のベスト3に入るお気に入りの作品。
    正しい人に憧れ、正しい道を歩もうとした青年が、赤狩りの巻き込まれ、その上戦争に飲まれて行く。また素晴らしい人に出会い、助けられ、人が人を支える素晴らしさを知る。
    長い作品なんだけど、あんまりにも面白くてあっという間に読み終わってしまう。
    人間の心の美しさ、善悪の基準の曖昧さ、正しさが一体何であるか。人を思うということ。教育の難しさ。愛するということ。もうたくさんの、生きていく上で必要不可欠な永遠の問いがたくさん隠れている。答えを見つけるために読むのではなく、その問いを立てるために、そして答えを探すために読めば良い。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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