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感想・レビュー・書評
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とんでもないシンギュラリティの本。IT系のおっさんおばさんは興奮する事間違いなし。確かにロジカルに積み上げてきている論説なので、読んでいてワクワク感あり。
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レイ・カーツワイルのシンギュラリティ論は「社会のルールが根本から変わる」「不連続で破壊的な変化が訪れる」と主張するものだけど、その議論の前提が「今日までの指数関数的な成長は今後もずっと続くのだ」なんだから、じつにおかしな議論ですよね、常識的に考えて。だって、その主張(シンギュラリティ)が実現した社会において、「その前提」がそのまま通用するとは限らないわけだから。
論理的に破綻しているとまでは言わないけど、だいぶ「ゆるふわ」な推論、希望的観測だなあと思いました。彼が本のなかで自ら書いてるほど「堅牢」な理論ではないことだけは確か。
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哲学好きな人向け:
伝統的な意味での「懐疑主義者」はこういうの鵜呑みにしませんね。この場合の「懐疑主義者」ってのは単に「疑り深い人」という意味ではなくて、バークリ、ヒューム、ポパー、タレブみたいな思想の系譜ですね。まあ実際疑り深い人なんだけど。
しかしあれだね、ヒュームは自然の斉一性原理を疑ったし、ある意味で現代版のそれがメイヤスーだとも言えるだろうけど、そういう前提を共有するならば、レイ・カーツワイルの議論って結局「毎日東から日が昇るんだから未来永劫そうに決まってるだろJK」っていう議論なんだよね。まずいって。
そういう議論の根拠薄弱さを補うために、ああいう宗教臭い文体になるのかなあ、と邪推しちゃった。
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本のつくりとしては「無駄に長くてどうでもいいことがたくさん書いてある」という印象だった。しかし見方を変えれば「SF小説を書くときなどには資料集として使えるんじゃないか」とも思った。 -
本書のタイトルにもなっている「特異点(シンギュラリティ)」とは、「われわれの生物としての思考と存在が、みずから作り出したテクノロジーと融合する臨界点」であり、「その世界は、依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超越」したものになるという。それは、「テクノロジーが急速に変化し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来るべき未来」だ。そのとき、「人間と機械、物理的な現実とヴァーチャル・リアリティとの間には、区別が存在しない」。著者によると2045年あたりがそのポイントだという。
そこに至るまでの技術進化を著者は多様な知識を動員して予測する。たとえば、2020年代には脳全体をシミュレートできるようになっているだろうと言い、2029年ごろにはチューリングテストをクリアするようなコンピュータを作ることができるようになると言う。
また、ナノボットとよぶインテリジェンスをもった微小なロボットが体内に入って健康管理や治療を行うようになっているとも予測する。その結果「老化することなく永遠に生きられるようになるはずだ」と著者は述べる。死や老化にもメカニズムがあり、特異点を超えた世界においてはそれすら決して必然ではないのだ。
比較的分量が多い本書だが、刺激的で多くの考察を含み何より著者の気持ちも入っているのだが、結局言いたいことはシンプルだ。特異点はわれわれの世代において到達可能なものであり、GNR技術がその鍵を握るということだ。GNRとは、Gene(遺伝学)、Nano (ナノテクノロジー)、Robot (ロボット工学・AI)の指数関数的な発展がそれを実現する、というものだ。
ビル・ゲイツは、「私たちはいつも、今後2年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう」と言ったが、指数関数的に技術が発展する場合には必然の帰結だ。著者が、「実際に、わたしの知る人のほとんどは、未来を線形的に見ている。このせいで、短期的には達成できることは必要以上に高く見積もるのに(細部の必要条件を見落としてしまいがちだから)、長期的に達成されることを必要以上に低く見積もってしまう(指数関数的な成長に気づかないから)」と言うとき、ゲイツと全く同じことを言っているのだ。
著者は自らのことを「特異点論者(シンギュラリアン)」と呼ぶ。彼らは「特異点を理解し、それがみずからの人生においてどんな意味をもつのか、賢明に考え続けてきた人を指す」。ビル・ゲイツも、セルゲイ・ブリンも、イーロン・マスクも、そういった人の系列に連なるのかもしれない。
自分はシンギュラリアンにはなれそうもないのだが、「人生」を考える上では重要な示唆をもらえる本だ。重要なことは、著者を含めてこの本を読んでいる人の多くは生きているうちに特異点を迎えることになりそうだ、ということだ。
信じるか、信じないかは、個々人次第だ。
「十分に進んだテクノロジーは、魔法と区別がつかない」 - アーサー・C・クラーク -
これでもかこれでもかと刺激的な未来予想が出てくる本。人類の未来に興味がある人とSF好きには一読の価値あり。
著者の予想通りかどうかはさておき未来は私の想像を絶するものになるかもしれないから、子どもは、旧来の価値観にとらわれず柔軟に物事に対応できるような人間に育てたいと思う。 -
いちどは読んでおきたかったレイ・カーツワイルの予測本。ある程度速読気味に読んだが、役立つ知見が多く、読んでみてやはりよかった。
シンギュラリティ(特異点)については、カーツワイルの言葉での説明を知ることができてよかった。
また、進化について多く触れられていたのも収穫。そのなかでテクニウム的なことも語られていて、「エポック」という進化段階説もおもしろかった。やはり最終的には宇宙の法則に挑まねばならない。
そして何より役立ったのがポストヒューマン像、および未来の戦争や教育などのあり方で、費用に具体的にディテールが検討されていて、大いに参考になる。
・特異点と進化
-特異点とは
-「特異点」の歴史
-進化とエポック
-進化と秩序、パターン
-生物の進化の制約
-知能と物理法則の克服
-意識と自己認識
・GNR革命
-GNR革命概要
-G(遺伝子)革命
-N(ナノテクノロジー)革命
-ナノテクノロジーとエネルギー
-脳とナノボット
-R(ロボット)革命とチューリングテスト
・GNR技術の規制
-「生存上のリスク」への対応
-グレイ・グーシナリオ
-ナノテクにおける倫理ガイドラインの例
-フォアサイト研究所ガイドライン
-強いAIからの防御
-安定化をもたらす流れ
・ポストヒューマン
-消化システムの再設計
-プログラムできる血液
-次に強化の候補となる器官は心臓
-肺も不要になる
-Ver.2.0の人体
-ver.3.0の人体
-VR/ARによる認知の拡張
-別の人格になる
-他者と感情を共有する
-非生物的知能との融合による心の拡張
-非生物的存在となった人間の寿命
-情報の寿命
・戦争
-兵士
-無人機
-通信
-スマート・ダスト/ナノ・ウェポン
-スマート・ウェポン
・学習/仕事/遊び
・その他 -
私もシンギュラリタリアン(特異点論者)になる! そんな一冊。
読んで良かった。2007年の本なのに、凄まじく新鮮な内容。
書かれていることが「実現する」「しない」はとりあえず置いておいて「発想」がすごすぎる。 -
人工知能に関する有名な本として読み始めたが、自分の想像する人工知能の行く先を2歩くらい上回っちゃってすんごかった。それを技術的なfeasibilityと過去の実績でもって「将来は当然こうなる」とグイグイ説明されて、グイグイ納得させられた。
ただ、技術面では大いに納得したが、倫理面でストップがかからないんだろうか。そこのあたりについては、認識はされているのはよくわかったが、説明はだいぶ端折られてた。
あらゆる人格になれてあらゆる容姿を手に入れられたら、今と思考のバランスが変わるはずで、そうなると人はどうなるんだろう。例えば、今は誰にもある、死にたくない、という感覚がなくなったりしないのか。つまり、違う哲学や倫理観が生まれて、結果、違う世界が来るのでは。それについては、エンジニアでは予測できないか。あるいは、哲学や倫理観も脳のリバースエンジニアリングによってクリアになってしまうのか。 -
技術は指数的に進化の速度を上げていく、という収穫加速の仮説を詳細なデータの元に検証。人知を越えたコンピュータが登場するSingularityとその先の未来を詳細に予測する。
仮説を裏付けるために詳細な記述がなされているが、カーツェルの予測する未来を知るという目的には冗長すぎる。かと言って専門家として理解できる分野の話を見ると「ちょっとこれは」と思える部分もあり(やむを得ないとは言え)中途半端な印象は否めなかった。
予測内容そのものは刺激的で、生き方について少し見なおそうと考えるには十分すぎる内容だった。既にこの本に書かれたタイムラインから大分後れを取っている分野も散見し、実際にはかなり楽観的な予測だとは思う。けど、技術の発展の先に具現化し得る未来の姿として、一度は目を通しておいて損はない。夢もリスクもあり、心の準備もたっぷり必要な未来の姿。