エイジ (朝日文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 小説自体は特に盛り上がることもなく、話の展開的にも正直退屈ではあったが、最後の解説を読んでこれほど納得感を感じたことはなかなかない。

    ”同化する事で、異化できる。同じ気持ちを共有することで、異なる部分が見えてくる。いつの世も、人はロールプレイすることで学び、そこからだんだん自分らしくなってゆく。そのプロセスそのものが「オトナ化」である。”

    自分を本小説の主要人物3人に当てはめるなら、ツカちゃん的な考え方だ。
    ある悲惨的な事件に対して、被害者の意識に自分を同化し、感情移入し同情する。そして加害者に対して憎悪を感じる。
    世の大半がこの考え方だと思う。
    ある事件に対するTwitter民の反応とかをみてそう感じる。

    これは悲しみを共有できる人間の良いところでもあるし、また怖いところでもある。
    時たま、自身は全く事件に関係ないにも関わらず、憎悪を暴力へと変換させ、加害者ないしは加害者の関係者に被害を与えようとする。
    これは事件をより深刻にしてしまう一因である。

    何かに対する怒りや憎しみといった負の感情がなければ加害者は事件を起こさない、事件を起こすことでコップ満杯であった負の感情が溢れ、更生できるチャンスが生まれる。
    第三者の出しゃばりは、そのチャンスを踏み躙り、また同じ事件を起こしてしまう可能性を膨らませるだけである。
    これでは本末転倒、第三者は事の行く末を黙って見るしかできないのである。

    本書に出会って、物事を違った視点で考えるやり方を見つけることができた。
    いろんな考え方に触れることで、自身の考え方が確立される。
    その機会が多ければ多いほど、優れた「オトナ」になる。
    たくさんの本を読み、たくさんの人物の気持ちを共有することで、「オトナ」になって行きたいです。

  •  この人は実は初めて。意外とつまらなかった。平板というか起伏に乏しい。すべての小説が波乱万丈である必要はないが、もう少しドキドキハラハラとかひねりとかあってもいいんじゃないか。このあとどこに山場が来るんだろうと思ってページをめくっているうちに終わってしまった。まあそういう軽さの小説なのだろうから文句いっても始まらないのかもしれないが。
     少年犯罪がテーマというには物足りないし、それは単なるエピソードであって、中学生の日常、心象風景を綴ったものというのが実態だろう。スポーツあり、恋心あり、いじめあり、友情あり、家庭生活あり、ではあるけれどいずれもが浅く、そらぞらしい。NHKのドラマみたい。
     現代の中学生ってこうなのか。ぼくにははるか遠くの世代ギャップの向こう側のことだけど、それでもなんかズレてるような気がするけどな。いずれにせよ、こういうおじさんが読む作品ではないということだな。初読みとしては選択を誤ったらしい。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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