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感想・レビュー・書評
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戦争時のはなし
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斜に構えた思考で書かれた文章から、肩の荷を降ろして素直に堕落して良いと気付かされた
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非常に面白かった。
坂口安吾は、デカダンだった。しかし、生きることに真剣で、書くことが人生だと考えていた。
全てにおいて真剣勝負で生きている男の熱い気持ちが伝わってきた。
太宰治の自殺に関して書いた文章でも、ふざけているようでもいて、実は真剣に生きることを訴えている。
読んでいて思ったのは、坂口安吾は、自分の感覚を直接文章に流し込むことができる人だったのだな。そこには、気取りがなく、要するに本音をぶつけているのだ。その点に感動した。 -
一言で表すと、『いやー拗らせてるなぁ…』って感じなのですが、めちゃめちゃ拗らせているのですが、なのになかなか説得力がある章も多くて、80年も前に書かれたものでも現代に通ずる概念があるのだなぁとびっくりした。続堕落論で語られる日本の国民性や悪妻論で語られる知性のある夫婦の話、エゴイズム小論で語られる母親の姿なんかは、そうだよねー分かる分かる!とうんうん頷いてしまうもんな…
最後に載ってた不良少年とキリスト、口語で思ったことそのまま書きました!みたいなのも、こんだけ拗らせてても歯は痛くなるし普通の人間なんだなぁって思えて面白くてよかった。歯痛で10日苦しんで奥さまに癇癪を起こしたあと、ちょっとよくなったら看病してくれてた奥さまが殴る蹴るでやり返したって話、私がこうやって書くと暴行みたいだけど、すごく軽妙な語り口で書かれてるので電車でちょっと笑ってしまった。こんなに拗らせた御仁でも奥さまに頭が上がらないのか、微笑ましい…などと思ったり。
あとはこの時代背景を彩る大本事件、住友家令嬢誘拐事件や太宰治の自殺などの事件について調べてみるのもなかなか興味深くて面白かった(本質から逸れていってるので、私の悪い癖でもある)フロイトの『誤謬の訂正』ってすごく身につまされるところがあるけど、本当にあるものなんだろうか?最終的にはそこが一番気になりました。。。 -
坂口安吾の日本論がなかったからいったんこっちで登録。
だらけたひとだとなんとなく思ってたけどありえない勘違い。
力が抜けているのに芯があってハッとさせられることがたびたびあった。
一段高い位置からの視点を持つ人。 -
戦後まもなく発売されたという本、にしてはずいぶんと思い切った内容が書かれています(笑)
坂口氏の日本社会、文学、思想、文化にたいしての生身の危機感(理路整然とした根拠に基づいて話す、ということと対比した意味で)から発せられる声は本質的であり、実際的だ。
そして、大多数の声=正しい声となり、正しい道となりそこから外れないことが第一義となり易い日本社会だったからこそ、生まれた本かもしれない。
文学とはなんぞや?という問いの答えに、思想的で頭でっかちだったり概念的すぎて結局なにを言ってるのか分からなかったり退廃的な屈折したものでもなく、文学のneedsを的確に捉え表現している。
好きなように喋っている、(ように見せているだけかもしれないが)けれどもこちら側にしっかり“届く”のは現実を見極める、もうそうセンスなんだろう。