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- / ISBN・EAN: 4523215084161
感想・レビュー・書評
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イ・チャンドンという作家は、映画に対する挑戦とか、表現者としての新境地とか、監督自身の抱える欠乏感を埋めるために作品を撮るとか、そういう観点から語られるような立ち位置とは無関係のところにいるタイプだと思う。
この人が撮る映画は、“達するところまで達しきってしまった”人から提示される、それこそ一遍の詩のようなものに感じられるのです。
事実、この映画に真新しい発見はないし、映画的な盛り上がりもない。ひたすらなだらかに、ゆるやかに物語は進行する。
観ている途中は、心の中が激しく乱されることや動かされるといったこともない。しかし、物語の最後になって、それまでの過程はすべて、ラストの主人公の言葉と、そして観終わった後の余韻のためにあったのだと気づく。
心の細胞一つ一つが、知らずうちに何か特殊な性質を持った、透明な液体によって満たされていき、その液体によって、観る者の心は映画の終わりでようやくそれぞれ個別的な反応を見せることになる。
イ・チャンドンはそうやって、静かに静かに、観客の心に浸透する作品を撮る。
物事の奥の、そのまた奥に隠れた、多くの人が見逃してしまいがちな大切なものを、静かに、決して目を離すことなく見つめることができる、イ・チャンドンは私にとって、そういう作家です。だからこんな作品が撮れるんだろうなあと思います。
この作品は、観た人の人生を大きく変えてしまうような力を持った作品ではありません。おそらく。でも、一生消えない何かを残す可能性がある作品であることは、確かです。その“何か”が何なのかは、この映画の主人公がそうしたように、自分なりの、貴方なりの言葉が見つかるのを待てばいい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最後まで見終わってカタルシスを得るタイプの映画ではないですね。本当に切ない終わり方というか、いろいろと考えさせられるエンディングでしたよ。これ以上はネタバレになるから書けないですが、おばあちゃんがカラオケとバドミントンが上手なのにはびっくりした!
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(2010年作品)