人魚は空に還る 帝都探偵絵図 (創元推理文庫) [Kindle]

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  • 東京創元社
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  • 明治時代の東京を舞台に、雑誌記者の里見高広と天才絵師の有村礼が、身の回りで起こる不思議な事件を解決していく物語です。シャーロック・ホームズシリーズの大ファンである礼は、探偵の真似事を楽しみながら、高広とともに人魚や怪盗などの謎に挑みます。本書は、三木笙子のデビュー作品集であり、表題作を含む5篇が収録されています。

    この本は、ミステリー好きだけでなく、歴史や文化に興味のある方にもおすすめです。明治時代の風俗や社会情勢が細かく描かれており、当時の雰囲気を味わうことができます。また、登場人物たちの人間関係や心理描写も丁寧に描かれており、特に、高広と礼の友情は本書の魅力の一つです。高広は純朴で優しく、礼は自信家で高飛車という対照的な性格ですが、互いに尊敬し合っています。礼は高広にホームズシリーズを訳してもらう代わりに仕事を引き受けており、そのやり取りもコミカルで楽しいです。

    私が本書をおすすめするポイントは2つあります。

    1つ目は、軽妙な筆致と温かい人情味です。本書はガチガチな様式美に拘りすぎず、軽妙な筆致で物語が展開します。そして、事件の被害者や加害者に対しても温かい目線で描かれており、朗らかな読後感を味わうことができました。

    2つ目は、不思議な事件と巧みな謎解きです。本作では人魚や怪盗などの不思議な事件が次々と起こります。それらの事件は現実離れしているように見えますが、最後には合理的な説明がなされるなど、謎解きは巧みで納得できるものばかりです。また、事件の背景には時代背景や社会問題も関係しており、物語に深みを与えています。

    登場人物たちの魅力的な人間関係や事件を解決する過程での心の葛藤など、私の心に深く残るものがたくさんある一冊でした。

  • 小さな謎を解いていく話。サラサラと読めておもしろい。

  • 明治時代の東京を舞台にしたゆるめのミステリー。

    美貌の天才絵師 礼×弱小雑誌社の記者 高広。
    この組み合わせ、普通ならホームズ=礼、ワトスン=高広となりそうなのに、まさかの逆というのが面白い。

    コナン・ドイルを愛読し、ホームズに傾倒しながらワトスン役に徹する礼。
    一方、高広は、お人好しで、結構な洞察力を持ちながら嫌々探偵役をつとめる。でも、実は剣の達人で英語も堪能、さらに父親は現役大臣というハイスペックな男。
    脇を固める編集長や同業者の佐野もキャラが立ってて魅力的。

    ミステリーとしてはちょっと弱いけれど、まったく性格の違う2人がいいコンビで、読んでて心地いい。

    礼がコナン・ドイルの大ファンということで、その作品がところどころで触れられる。久々にホームズものを読み返したくなった。

  • 明治を舞台にしたミステリ短編集。
    気難しい天才絵師がワトソン役で、それに振り回される雑誌記者が謎を解くという配役が面白い。
    ミステリとしては軽めで、人物が明治にしては少々現代風に思えるが、それぞれキャラが立っていてほんのりと温かい気持ちになる読後感がよかった。
    ベストはやはり、見世物小屋の人魚が観覧車の上でシャボン玉となって消えてしまうという表題作。

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著者プロフィール

1975年生まれ。秋田県出身。2008年、第2回ミステリーズ!新人賞最終候補作となった短編を改稿、連作化した短編集『人魚は空に還る』(東京創元社)でデビュー。他の著書に『クラーク巴里探偵録』(幻冬舎)、『百年の記憶 哀しみを刻む石』(講談社)などがある。

「2019年 『赤レンガの御庭番』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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