追想五断章 (集英社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 集英社
3.59
  • (11)
  • (34)
  • (30)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 315
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (243ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やっぱり米澤穂信は面白い。ひねりが効いている。

    伯父の古書店に居候している芳光は、「父親の遺した小説を探して欲しい」と頼まれる。
    小説家ではないその男の作品を探すことに奔走し、
    その男がなぜ小説を書いたのか、謎に迫る。

  • 驚愕の真実。それを導く伏線。神秘的で面白かった。

  • 作中で短編を読ませる手法が面白い。リドルストーリーはあまり好きではないので、五編中四編は最後の一文で結末が示されているのが個人的に良かった。短編だけでも酒場で聞かされるネタでも成り立つぐらい面白いが、それを本筋に上手く絡められていて尚良い。主人公周辺の登場人物がもっとストーリーに関係してくるともっと面白かったかもしれない。

  • 最初は、しぶしぶ、だけど、4本目、あたりから面白さが上がって読めました

  • 作中作を織り交ぜながら展開。上手いなぁ

  • 再読。作者の筆力に驚嘆です。
    主人公は依頼を受けある方の遺した五つの短編を探すのですが、見つけ出した作中にはある過去の事件の謎を読み解く鍵が隠されていた…という感じの物語なのですが、まずこの短編が素晴らしい。
    年代も思想も、ましてや執筆の動機も違う別の人物になり切って物語を書き、それでいて妙に惹かれる面白さがあるのですから。参りました。
    問題提起も何もない所から静かに始まり、いつの間にやら深い事件に巻き込んでくれる所なども流石。ちと弱いが意外な結末も控えており素晴らしい一冊でした。
    これ作者の代表作でいいのでは?

  • 今のところ米澤穂信作品で一番好きな1冊です。

    暗いお話という評価をよく目にしますが、私はそこまで陰鬱としているようには感じませんでした。強いて言うなら、救いようのない主人公が救いようのない過去の話を発掘してしまうお話なので、一見読者には旨味がないように感じるかもしれません。しかし、一度読み始めれば最後まで知らずにはいられない魅力が先生の文章にはあります。
    徹頭徹尾丁寧に描かれた良作だと思います。

  • 流れるように物語が進み、中弛みすることなく最後は美しい。

    メインストーリーも主人公の設定も悲劇でしかないのに、それほど悲しくならないのは、話が面白く、登場人物が希望を持っているから。

    1つの事件を中心に、報道と関係者の掌編を結びつけて展開する話は、初めてのパターンだった。
    物語の全体像がわかるまで、情報を小出しにしてくるが、情報の曖昧さと間隔が丁度よく、飽きない。

    読者が推理できるように、丁寧にヒントを出しているが、解決編に至って見方が180度変わる仕掛けは大満足。
    終わり方も綺麗で、美しい悲劇譚になっている。

    強いて文句を付けるなら、ゲルインクの要素は若干後出しの感が否めないが、演出のことを思えば文句よりも感激の方が強い。

  • 伯父が経営する古書店に居候する主人公は、学費目当てで亡き父が書いた小説を探して欲しいという女性の依頼を受ける。結末を伏せた"リドルストーリー"を追ううちに、故人が関わった20年前の事件が浮かび上がってきた――。

    あらすじを書くと2時間ドラマのようだが、話はもっと複雑。あまり書くとネタバレになってしまうので避けるが、今回も米澤先生らしい結末だった。
    リドルストーリーの方に関心が行きがちだが、言葉少なくも主人公を見守る伯父や小説を探す過程で出会う人物も人間味がある。最後まで飽きずに楽しめる作品だった。

  • 古書店に居候中の主人公は店に来た女性から亡き父が遺した5つの掌編を探して欲しいと依頼を受ける。
    順調に掌編を手に入れる主人公はこの掌編がとある事件に絡んでいることを知るのであった。

    本編と作中作を織り交ぜた構成は読み応え抜群。
    リドルストーリーの最後の一文を後出しにすることで物語を二度楽しめてよかった。

    主人公の周辺がややおざなりだったのに物足りなさを感じたが、仄暗い大人のミステリーで面白かった。

  • 父親は20年以上前の事件の記事への回答を小説にしていた。


  • 紙の本で読んだが、なかったので電子書籍の方に記録…

    リドルストーリーという発想に留まらず、その先の結末に隠された仕掛けが面白かった。序章の作文も。

    正直、難しい表現(特にリドルストーリーの部分)が多く、最後まで読み進めようか迷ったが、最後まで読んで良かったと思える1冊であった。

    高校生の私としては、ちょうど漢文で習った『〜をして〜せしむ』の使役の句法が使われていたりと、授業で習ったからこそ理解出来た文章があったのが嬉しかった。

  • っはー!気持ち良い!ぞくぞくする仕掛けだった。解説も骨太でじっくり楽しめました。

  • 「ロス疑惑」を思い出しました。夫が妻を殺害したと、マスコミが騒ぎ立てたあの事件。真実は結局謎のまま。本作での事件は「アントワープの銃声」。父は本当に母を殺害したのか。大人になった娘が真実を探ります。

  • リドルストーリーって、なんか惹かれるものあるよなぁ。5つのリドルストーリーをめぐる探索の物語。どこにあるのか、を探しながら、いつしかなぜ書かれたのか、という謎に迫っていく。

    再読なんだけど、ふと本屋さんで平積みになっているのを手に取り、ぱらぱらめくってまったく思い出せなかった(苦笑)。過去の記録をみて2009年に読んでいたみたいなんだけど、もう10年前かぁ。読んでみても、ほとんど覚えていなかった。謎の肝となる部分は覚えていたから読んだのは確実なんだけど。

    ぐいぐい読み進めて、すごく面白かった。ただ結末は、切ないというよりも、どこかどんよりした、からっと晴れない終わり方だったな。悪いとは言わないけどね。

  • 読み終わりました。

    結末を除いた小説リドルストーリーを集めることから始まった物語、それを進めていくなかで、小説の作者の背後にある事件、そしてリドルストーリーに込められた謎が明らかになっていきます。

    合間に挟まれるリドルストーリーは文体が普段のものとは違って書かれているのですが、それも面白くページをめくる手が止まりませんでした。

    また生活に困窮する主人公と、小説の作者の鮮やかな人生との対比も良かったです。

  • 古本屋バイトの主人公が客の依頼で5つの短編小説を探すことになるミステリ。淡々と話が進み登場人物も話の雰囲気もすべてが薄暗く結末もしんみりさせられた。「雰囲気」を味わって読みたい一冊。

  • 好印象な一冊。決して、ビブリア古書堂とか、そういう風潮に絡めて読んではいけません(時系列的にも整合しません)。「さよなら妖精」にあったような、そうはいっても世界はこんなに波乱に満ちているよという観測はよしとして、ああ、そうか、解説にあるロス疑惑をここに見いだしたくは無かったし、そういう印象は持たなかった。アメリカ合衆国、特に西海岸に見られる、現在と歴史との分断ぶりは、主人公(とは、古本屋の彼ではない)の振る舞いとの親和性が低いと思うから。
    いや、うまいじゃないですか、米沢穂信。それで十分ですよね。

  • ふと似ている気がしたのは最近話題の「ビブリア古書堂の事件簿」ですが、古本屋とミステリーという共通項だからでしょうか。こちらが探すのは実在する本ではなく、時代設定もまたこちらのがやや古いのですが、古本屋のどこかほこりっぽいような静けさ、みたいな空気感が似ているのかもしれません。
    5つの物語をどう見つけるか、という要素と、そこから浮かび上がる大きな謎解きと、ミステリーは二つの要素が含まれているのですが、最後はあまり衝撃!という感じではありませんでした。ただ、それなりのインパクトを持つ結末は用意されていたとは思うので、これは前ページを見返しながら読み進めたいこの本と、電子書籍という媒体の相性が悪かったのかなと思います。

全21件中 1 - 21件を表示

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

米澤穂信の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×