桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)

監督 : 吉田大八 
出演 : 神木隆之介  橋本愛  大後寿々花 
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  • / ISBN・EAN: 4988021137317

感想・レビュー・書評

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  • どうして僕は、この映画を封切りで観ていないんだろうか。
    どうして僕は、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を観ていないんだろうか。
    激しく後悔。★★★★★★
    こんな映画を撮られたら、他の監督たちは嫉妬するしかないのではないか。

    吉田大八初監督の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』では度肝を抜かれた。
    太陽に灼かれ黄色く褪せたようなフィルムの質感と、田舎の風景にアフロキューバンのリズムを合わせてくるセンスは南米の映画かと見紛うばかり。
    本谷有希子の小説も面白かったが、文学と映画の違いを分かった上で大胆に改変してくる手腕で原作を越えてきた。
    佐藤江梨子の主演への抜擢も良かった。

    そんな吉田監督が『桐島、部活やめるってよ』を撮った。
    それだけで期待。
    結論、日本映画史に残る傑作だと思う。

    神木隆之介、橋本愛の他はまったく知らなかったが(あっ、吹奏楽部の部長は大後寿々花だったんだ)、主要キャストを含む全配役がいい。男子バレー部の「ゴリラ」や映画部の友人、野球部のキャプテンや各部活動の部員たちの隅の隅まで隙のない布陣。
    そしてみんな抜群にうまい。
    セリフ廻しはもちろん、目の動き、呼吸、絶妙な間、どれを取っても素晴らしい。

    朝井リョウの原作を一旦解体して再構成した脚本も見事。
    原作でも少し他とはテイストが異なっていた実果のエピソードを大胆にカット。それでいて実果の魅力が損なわれていない。
    「秘宝、読んだ?」なんてリアルな台詞も随所に。
    「たまたま『鉄男』なんて観ねえよ!」なんてニヤニヤしたあとの構成とカメラワークの巧さ。
    そして終盤の予想だにしなかったカタルシスに震えた。
    吹奏楽部の演奏をバックに繰り広げられるアレは屈指の名シーンだと思う。
    宏樹が涼也にカメラのキャップを手渡すあたりから、もう胸が熱い。
    野球部のキャプテンの台詞には「おいお前、ここは笑うところだろ!」って自分で自分にツッコミを入れながら泣いた。
    エンドロールで余韻に浸りながら、画面の「宏樹(   )」に再びグッときた。

    ストーリーがいいのは、朝井リョウの小説でわかっている。
    それをここでもまた越えてくる吉田大八監督の凄さ。
    「小説を映像化する意義ってこういうことなんだよ!」
    映画部のオタクじゃなくても熱く語りたくなる。

  • 2度目の鑑賞。
    ホント無駄がなくて素晴らしいですね。とりあえずタイトルの「桐島」が作品中終始不在(でありながら中心)であることへの理解を持って観た方が良いでしょう。
    なぜ桐島が出てこないのか、どうして周囲の人々は不在の1人に対しそこまで慌てふためくのか。
    そこに目まぐるしく絡む男女の関係性や部活動における関係性、ひいては学校内のヒエラルキーが介在する。
    それによりあぶり出されるのが、神木君演じる前田と東出君演じるヒロキであり、「結局できる奴は何でも出来て、できない奴は何にも出来ない」と語った(悟ってしまった)ヒロキと一途に映画に取り組む前田との対比、というのが大筋と言えますね。
    ヒロキが最後に涙したシーンはとりわけ印象深い。前田にかっこいいね、と言われるも自分には何ら熱中することもなく、何のための学校だろう、部活だろう、若くしてそう悟ってしまうことの悲しさを見事に伝えた。かっこよくて万能で、なのに不幸せ。その姿を見事に演じた彼の存在感は見事としかいえません。。
    大団円のシーンにおいて、(不在の桐島を頂点とした)ヒエラルキーの中でもがく人と映画部とをゾンビを通して描いたことはさらに映画に深みを持たせるとともに映画ファンをも熱狂させました。
    などなど、なかなか語り尽くせぬ、けれども語り尽くしたい作品でした。吹奏楽部の子はああやって演奏に逃げていいんだ、と大人になった今の自分だから思うが、当事者としては、、、考えるだけでも甘酸っぱい。そんなシーンの連続でなおかつ無駄がない本作は本当に傑作だと思います。

  • あの頃も今もきっと、「そんなもんなんだよなあ」と思いつつも受け入れられたわけじゃないんだな。

    珍しく 観終わってすぐ「もう一回観たい」と思う映画だった。
    高校生活の、息がしにくいほどのリアルさが、すごかった。
    意識に留めてもいなかったこと、忘れたかったこと、知らなかったこと、でもみんな自分の周りでも確かにあったであろうこと。どんどん迫ってくる。
    登場人物たちが、もともと乱されていた心を桐島きっかけで表に出していくのと一緒に、自分の青春時代を振り返ることになる。向き合わされる。

    場面場面の見せ方、俳優さんたちの演技や何かのひとつひとつも、素晴らしい。
    屋上に向かって爆発した色々なことが渦巻いて、観ている側の中でも言葉にならないけど渦巻いた。
    でも叫び出したいような感じではないし、私は過去を思い出して悶絶するような年齢でもなし、なんだけど 突き動かされるものがあった。

    メッセージ性で考えてしまったら割とチープな所に行き着いてしまうと思うけど、映画ってそもそも誰かに何かを伝えるとかそういうためにあるわけじゃないと思っているし、いやそういう意味でもいいけども、そんなことよりももっと別の観点から、この映画の存在意義はものすごくあると思う。

    最後のヒロキの表情と台詞が、全部をひっくるめてくれて、何もないようで大きく「在る」良い終わり。
    うーん、説明が下手なのでまた観ます。
    東出昌大応援したくなったよ。

  • 映画部の前田君をヒーローとして見れた俺には面白かった。
    自分の好きなことに一生懸命打ち込む。自分の居場所を守るためにはめちゃくちゃ頑張る。
    映画界のトップにいけるなんて到底考えられないけど、映画を撮っている限り、その大好きな映画と繋がっていられる、と前田が言うシーンがすごく好きで、何度もシークバーをクリックしていた。
    ヒロキと野球部のキャプテンもよかった。野球部のキャプテンにとっての桐島はヒロキだったんだろうな、と思う。でも、キャプテンは最終的にはヒロキがいなくても勝てる気がする、といって、自立心を見せる。ヒロキが最後に桐島に電話をかけたのは、自分と同じ立場にいる桐島が何を思っているのか知りたかったんじゃないかな、と思う。
    「この世界で生きていかなきゃ~」のセリフは正直くさいなと思った。たぶんゾンビ映画の締めのセリフとして出てきたら、ゲームのラスボスが最後によくいう「光ある限り必ず闇が~」的なセリフと同じようなとってつけた感を感じたと思う。霧島のフォロアーは絶対前田の映画を観ないだろうし、よしんばカスミが見たとしてもゾンビ映画の文脈の中ではスルーされるだろうから、前田の映画を見て誰かが影響を受けるということはたぶんない。ただ、「存在しない霧島劇場」の登場人物のヒロキがあの場で聞くセリフとしては、大きな意味があったんじゃないかなと思った。

  • えっ終わり?ていう感じの幕切れで、見終わった直後は何だかなあって思ってたけど、いろいろ考え直してみるともしかしてすごい映画だったのかもしれないと思う。青春ぽい雰囲気をちょくちょく出しながら、バッサリ切り捨てちゃう、むしろ反「青春」映画だったのかもしれないと感じたからだ。

    神木君演じる男の子が、先生に反抗して自分で書いたシナリオで、あくまでフィルムカメラにこだわったりして、仲間と協力しながら、クラスメイトの邪魔を逆に利用して屋上で撮影する場面はまさに文化系の青春!なのに、将来の夢は映画監督?と聞かれて、

    「映画監督は、無理だよ。」

    と夕日を背に真顔で答えちゃう。それを聞いた元野球部のイケメンも思わず「青春」の徒労感に涙してしまう。じゃあ、おれたちの今って一体何なんだろう。それは思春期に抱える悩みの一つでもある。

    既存の青春ものからすれば、彼の人生観は「あきらめ」だ。「あきらめたらそこで試合終了」するけど、その「試合」も長い人生から見れば少年時代の一瞬に過ぎない。試合が終わった後の世界で、少年たちは生きていかなければならない。
    もしかしたら桐島も、それに気づいてしまって、人知れず部活を辞めたのかもしれない。そんなことはクラスの下層民たる神木君でさえ、とっくにわかっていたのに。

    最後の最後、青春の限界に到達した元野球部のイケメンが桐島に電話をかける。僕は、その電話はつながったんじゃないかと、勝手に思っている。

    夢は見ない、片思いは実らない、主人公は登場しない。いろんな意味でポストモダンな映画だったなあと思う(原作読んでないけど)。それにしても橋本愛かわいい。

  • 「桐島、部活やめるってよ」
    一度聞いたら、忘れもしないこのタイトルに
    「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ。」の吉田監督が撮ったんなら、
    これを観ない選択はない。

    なんでだろう。とある一週間の高校生の生活なのに
    1シーンたりとも目が離せなかった。
    スーパースター「桐島」が突如学校にこなくなったのをトリガーに幕は上がる。

    いろいろ書こうとするとでてくるがあえて特筆すべきは、
    最後の吹奏楽部の「エルザの大聖堂への行列」をバックに
    屋上にメンバーが集うシーンは圧巻だった。

    あの何とも言えない焦燥感や不安感、そして期待感。
    あの感覚を出せるのは、高校生でしかありえない。

    高校生特有の感覚。 
    それはやはり 「進路決定」という命題の元につきつけられる選択。

    「進路」という、フワッとした「将来を決めるもの」を教師や親は提示を求めてくるが、
    そんな事、産まれてから若干17、18年しか生きていない少年少女達に決められる訳ない。
    自分の考えていることが正しいか、それが妥当なのかも、分からない。
    そして周りにいる友人・恋人でさえ、お互いの信頼なんて1本の糸のようなものでしかない。
    その感覚を見事に表現したのが、あのラストの屋上へ向かうシーンだった気がする。

    美しいシーンがたくさんある。
    個人的に好きなシーンは、女生徒4人がベンチに1列になって座っているシーン。
    表面上は仲良くやっているように見える4人だったが、桐島不明になったあたりで
    仲に亀裂が入っていく。 
    それが決定的となったあのシーン。
    お互いが違う方向を向いていて、かつ一直線に並んだあのアングルは、ヤバかった。

    橋本愛、いい女優だ。

    ここで、ロケ地・高知の話を。
    映画の舞台となっている屋上は、高知中央高校。
    そして、前田役の神木隆之介、かすみ役の橋本愛がばったり映画館で出会うシーンがあるが、
    あれはイオン高知SC。
    そして、吹奏楽部の演奏は高知西高校。奥さんが暮らしていたアパートの目の前。
    どちらも中には入ったことはないが、感慨深かった。

  • すごくよかった。
    部活ヒエラルキー、男子にだけ媚びる女子、女子グループの実態、万年補欠部員の惨めさ、淡い恋心、埋められない格差…
    高校生をやったことある人は絶対共感できる!!!
    脆くあざとく、でも若いからこその悩み。青春。

    (@早稲田松竹)

  • やめたげてよぉ!(×7回くらい)


    クラスの中心人物、桐嶋の突然の部活引退に端を発するリア充どもの揺れる心と、踏みにじられる非モテどもが悲しみの愛を見せる青春群像劇

    「居うる」がまたあった!
    スクールカーストの各階層の再現度がすごい。リア充から女子グループから部活組からオタグループまで本当の高校生の生活を切り取ってきたかのような違和感の無さ。居うる。

    居うるは没入感に直結する。
    自然と映画に引き込まれ、気づけば誰かを応援している。
    全方位向けの青春映画だ。


    非モテ組が辛い現実にぶち当たるたびに見てるこっちは奇声を上げてジタバタし、なけなしの勇気を振り絞った彼らに床を叩きながら敬意を表するのである。いい映画じゃないか畜生め。

  • 男子校育ち&高校のころはスネていたので、男女の近さというかキラキラした感じはいつまでたってもどこか(勝手な)憧れをぬぐいさりきれなくもないが、本当に戻ってやり直したいかというと、全然そんなことはない閉塞感、すなわち価値観の選択肢の狭さであり、大人とのどっちつかずの関係であり、自身の根拠のない自信であり、それでいて定まらない軸と不安であり、他人の目であり、惚れた腫れたに巻き込まれる面倒くささあるいは巻き込まれない寂しさとかのそれである、という雰囲気がとてもよくでていた。
    そして、そんなあの頃の自分に言ってあげたい、君が見ている世間や評価軸なんてちっぽけでかよわいものなのだから、いったいこんなこと何の役に立つのか?なんて考えてみたってわからなくて当然だし、何の苦労も不安もなく成功する人なんて(一部を除いて?)いないのだから、恐れず思いつくままにやってみなよ、という歳くうとついたれたくなるような講釈がシャープに描かれているような気がして、ストーリー的にはすっきりしないのだろうが心情的にはしっくりくる。
    飛行機の中で途中まで観て、途中までよかったのでどんなもんだろうとずっと気になってい、評判がいいみたいなのでやっぱり観てみたのだが、最後までよかった。
    若い役者さんたちがみんないい。橋本愛さんはスクリーン映えしますね。が、個人的にはその友達の実果の役の人の方が好みだったりするのは内緒。

  • バレーボール部のエース桐島が突然退部したというニュースに騒然となるとある高校を舞台に、生徒たちの間に動揺が拡がる中で次第に浮き彫りになっていく学園内の複雑な人間関係を、“不在の桐島”に振り回される人物それぞれの視点から重層的に描き出していく。
    主演は「遠くの空に消えた」「劇場版 SPEC~天~」の神木隆之介、共演に「告白」の橋本愛と「女の子ものがたり」の大後寿々花。
    バレーボール部のエース桐島が部活を辞めたという知らせが、文化部、帰宅部、運動部の生徒の現実の残酷な格差を浮き彫りにして、新たな変化をそれぞれにもたらしていく過程を、それぞれの生徒の目線で同じ時間軸を平行して描いていくユニークな演出が秀逸です。
    ドキュメンタリータッチの生々しい高校生の日常を、リアルなセリフ「出来る奴は、何でも出来るし、出来ない奴は何にも出来ないってだけだろ」「俺が監督ならあいつらは使わないね。笑ってろ今のうちに」「女って訳わかんね。私も女子だけど」や、本音を巧みに隠しつつ対立を避けるリアルな会話シーンや、片思い、無力な自分に対する苛立ち、生徒間の格差のせめぎ合いなどの鬱屈した学園生活をリアルに描いたストーリー展開が、胸に迫ります。
    神木隆之介演じる映画オタクと橋本愛演じる同級生が映画館で偶然出会い心通わせたシーンも、印象的です。
    ラストの屋上でのクライマックスは、映画がやるせない現実を吹き飛ばす痛快さがあって、スカッとします。
    同じような日常でも少しずつ違う。リアルタイムで高校生の人も、かつて高校生だった人にも、胸が締め付けられる青春映画の傑作です。

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