図鑑少年 (中公文庫) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • 昔何度も読んで一度手放してしまい、買い戻した一冊。やはり個人的ベストは「なくしたピアス」。帰り道に見かけた街頭でウードを弾く旅の女性に心惹かれ、コーヒーを一緒に飲み、仕事場に泊まってもらい、翌朝置き手紙となくしたはずのピアスがあっただけの一編が何年も心に残っている。週刊石川雅之の「ただそれだけで」と通ずるものがあると個人的には思っていて。次に印象に残っていたのが、知的障害のある少年のファミレスでの一幕をハラハラしながら見守っていた「おじぎ草」。他の短編はほぼ忘れていて、新たに味わい直す。都会に住む者たちの出会ったちょっとした違和感をすくい取って、そのままこちらに差し出してくれる、オチなどないよ、ただ続いていくの、といった感触。真上の住人の毎夜の足音が末期癌の痛みを和らげるためと知った青年。酔っ払いの英文が読めるのかよという挑発に、「すらすらってわけにはいかないです」と生真面目に答えて場の空気を和らげた青年。ベランダから飛んで行ったシーツを十数年ぶりの同級生がなぜか偶然見ていたこと。台風の後にできた穴池をめぐる思い。ものすごい執念で川に落ちたサッカーボールを追い続ける親子に話しかけると日本語を解さないと知ったシーン。風呂釜点検を頼んだら、どの人もうまそうにセブンススターをうまそうに吸って煙の行方で何かを判断していたこと。Do you know me?と間違いファックスを受けた外国人が語りかけてきたこと。どうしようもなく神経質な付き合っていた男が聞いていたモーツァルトのピアノソナタ8,10,15番と弦楽四重奏曲と、ブッカー・リトルの「Life' a little blue」

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。小説、エッセイ、ノンフィクション、批評など、ジャンルを横断して執筆。短編小説集としては、本書は『図鑑少年』『随時見学可』『間取りと妄想』に続く4冊目。人間の内面や自我は固定されたものではなく、外部世界との関係によって様々に変化しうることを乾いた筆致で描き出し、幅広いファンを生んでいる。
写真関係の著書に『彼らが写真を手にした切実さを』『ニューヨーク1980』『出来事と写真』(畠山直哉との共著)『この写真がすごい』など。他にも『須賀敦子の旅路』『個人美術館の旅』『東京凸凹散歩』など著書多数。
部類の散歩好き。自ら写真も撮る。朗読イベント「カタリココ」を主宰、それを元に書籍レーベル「カタリココ文庫」をスタートし、年三冊のペースで刊行している。

「2022年 『いつもだれかが見ている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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