- Amazon.co.jp ・電子書籍 (260ページ)
感想・レビュー・書評
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昔何度も読んで一度手放してしまい、買い戻した一冊。やはり個人的ベストは「なくしたピアス」。帰り道に見かけた街頭でウードを弾く旅の女性に心惹かれ、コーヒーを一緒に飲み、仕事場に泊まってもらい、翌朝置き手紙となくしたはずのピアスがあっただけの一編が何年も心に残っている。週刊石川雅之の「ただそれだけで」と通ずるものがあると個人的には思っていて。次に印象に残っていたのが、知的障害のある少年のファミレスでの一幕をハラハラしながら見守っていた「おじぎ草」。他の短編はほぼ忘れていて、新たに味わい直す。都会に住む者たちの出会ったちょっとした違和感をすくい取って、そのままこちらに差し出してくれる、オチなどないよ、ただ続いていくの、といった感触。真上の住人の毎夜の足音が末期癌の痛みを和らげるためと知った青年。酔っ払いの英文が読めるのかよという挑発に、「すらすらってわけにはいかないです」と生真面目に答えて場の空気を和らげた青年。ベランダから飛んで行ったシーツを十数年ぶりの同級生がなぜか偶然見ていたこと。台風の後にできた穴池をめぐる思い。ものすごい執念で川に落ちたサッカーボールを追い続ける親子に話しかけると日本語を解さないと知ったシーン。風呂釜点検を頼んだら、どの人もうまそうにセブンススターをうまそうに吸って煙の行方で何かを判断していたこと。Do you know me?と間違いファックスを受けた外国人が語りかけてきたこと。どうしようもなく神経質な付き合っていた男が聞いていたモーツァルトのピアノソナタ8,10,15番と弦楽四重奏曲と、ブッカー・リトルの「Life' a little blue」
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