MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体 宣伝会議 [Kindle]

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  • 多くのメディア立ち上げに関わった田端さんがかくメディア論

    メディアと、ファイナンスは構造的に似てるなど、新しくかつわかりやすい切り口が面白かった。

    - メディアとファイナンスは似ている。=「対象への信頼」が価値になる

    - War for talent

    - Mediaの影響力 = 予言を自己実現してしまう力がある
    cf. テッククランチ, ライブドア事件

    - Mediaとは
    発信者、受信者、コンテンツの3要素

    - 発信者、受信者の3タイプ
    Media = 1:N
    Community = N:N
    Tool = N:1

    - 世界最大の社内報: 米軍の機関紙(Stars and Stripes)
    社内報には、組織のモチベーション効果がある

    - なぜ、缶けり専門誌がないのか?
    業界と専門誌の鶏ひよこ関係
    cf.日本のヨガブームは、専門誌Yoginiから?

    - メディアの3要素
    ストック <=> フロー
    参加型 <=> 権威性
    リニア <=> ノンリニア

    - ペルソナの重要性
    具体的にかつ、集合意識的なもの

    - ブランディング
    FT誌がピンク色な理由 = エリートビジネスマン専用のブランディング

    - 編集権の独立の重要性

    - テクノロジーによりメディアのあり方は変わる
    ex. CDの登場により、イントロの強い曲が増えた

    - 拡大する個人型メディアの影響力

  • なかなか面白かった。変に簡単すぎず、難しすぎず、ちょうどいい言葉加減で書かれているから気持ちよく読めた。ストック型/フロー型、権威性/参加性、リニア・ノンリニアがメディアを考える上での3軸となるという考え方も、見方としては自分には新しいものだった。

  • ー さて、今から100年前にエルメスに何が起こったか?自動車が普及する時代を迎え、馬車に乗る人は激減していくわけです。そこで、エルメスは自社
    のコア・コンピタンス (「自社ならでは」の競争優位の源泉)を、最高品質の旅行用革製品を作ることと再定義し、「自分たちは何屋なのか?」という問いに対して「馬具メーカーである」と答えることをやめたのです。

    つまり、自分たちのコア・コンピタンスを一度、抽象化させたうえで再定義し、馬車から自動車へという技術環境の変化に、見事に対応したわけです。 私はこういう発想こそが、21世紀初頭の今こそ新聞社や出版社に、必要だと思います。

    自分たちのことを「馬具メーカー」だと自己規定していたならば、今日のエルメスは決してあり得ませんでした。こういった根本的な発想転換をしながら、なおかつ不易流行を見極める精神がなければ、出版社や新聞社は、おそらくレコード針のメーカーのように、徐々にですが、確実に衰退の道を歩んでいくのだろう、と思います。 ー

    「発信者ー受信者ーコンテンツ」という切り口から、コンテンツにおけるストック⇄フロー、参加性⇄権威性、リニア⇄ノンリニアの3軸など、基本的な解説を交えながら新しいSNSの時代を読み解く作品。
    少し古い作品けど、充分に普遍性のある内容なので古い感じはしない。

  • ▼ざっくり言うと
    ・メディアは、ユーザーから信頼されることで権威付けされ、その信頼が「影響力の強さ」の担保となり、予言の自己実現能力を持つ。それゆえに、ウェブメディアであろうと強いメディアになろうとするなら、良いコンテンツは勿論、責任と矜持が必要。
    =日経が「あの会社が倒産寸前」という「飛ばし記事」を書いた時に、日経がこれまでの報道で蓄積してきた信頼と賢威によって、広い範囲に「あの会社が潰れるかも」という影響を及ぼし、実際には潰れないような状況でも会社が潰れてしまう「予言の自己実現能力」を持つ
    →そして、こうした信頼や影響力が高い広告単価などビジネスやマネタイズの基盤=広告主からの信頼になる
    →広告主も、メディアの「需要を生み出す力」に期待をかけてお金を払う

    ・マネタイズがうまくいけばいくほど、メディアは「自由」になれる

    ・パブリッシャーとは、情報をパブリッシュして、ユーザー(受け手)と有用なコミュニケーションをとる存在のこと。紙やSNSや映像など、何の媒体でコミュニケーションを取るかは、あくまでも手段にすぎない。

    ・課金は、課金相手とのコミュニケーション

    =====

    ▼第2章 ビジネスパーソンもメディアの知識が必要な時代

    ◎メディアとファイナンスは似ている
    ・どちらも実体のないものに価値を委ねている
    ・「予言が自己実現する世界」である

    ◎技術とサービスの進歩により、「キャッシュ」よりも「タレント(優秀人材)」と「アテンション(関心注目)」に経済価値が生まれる時代(=キャッシュがあってもタレントとアテンションがなければ圧倒的なインパクトは生みだせない)
    →「タレント」と「アテンション」を集められるのがメディア。だからメディアを理解することは重要



    ===
    ▼第3章 「メディア」とは何か?

    ◎メディアとは「そこに情報との"送り手"と"受け手"の2者が存在し、その間を仲介し、両者間において"コミュニケーションを成立させること"を目的とするもの」
    →メディアには受け手が必ず必要で、受け手こそが王様

    ◎ネットの情報流通量
    平成13年~21年にかけて71倍に激増、しかし消費される情報量は2.5倍にしか増えてない
    (情報流通インデックス調査/総務省)
    →受け手が存在しなければ意味がない

    ◎メディアの3類型
    ①Media型(送信者1:受信者N)・・・Y!ニュース
    自分が見ているページをたくさんの人が見ていると思わせるメディア
    ②Community型(送信者N:受信者N)・・・fbなどSNS
    自分が見ているのと同じものを見ている人は少ない、いるとしたら自分と嗜好が近いと感じさせるメディア
    ③Tool型(送信者N:受信者1)・・・Gmail、RSSフィーダー
    自分だけのもの


    ===
    ▼第4章 メディアが存在する意味 影響力の本質
    ◎強い社内報は組織のモチベーション向上に寄与する
    →メディアには観察者がいるため「(建前上は)客観的な」評価をされ、また多くの人の目に触れるため

    ◎メディアは、市場の創出に寄与する
    ・あるジャンルが「業界」として成立するかどうかは、そこに専門誌が存在するか/存在できるかどうか
    →広告主となる業者、取材対象となる人がいるか、そしてそれを知りたい人がいるかどうか

    ・メディアという観察者なしには世界は誕生せず、メディアという共犯者なしには世界は成長しない
    →メディアが世界を発見し、消費者の欲望を喚起し需要がうまれ供給に繋がり、業界が生まれる(YOGINI、BRUTUSシェアハウス特集)

    ・メディアは、ユーザーから信頼されることで権威付けされ、その信頼が「影響力の強さ」の担保となり、予言の自己実現能力を持つ。それゆえに、ウェブメディアであろうと強いメディアになろうとするなら、良いコンテンツは勿論、責任と矜持が必要。
    =日経が「あの会社が倒産寸前」という「飛ばし記事」を書いた時に、日経がこれまでの報道で蓄積してきた信頼と賢威によって広い範囲に「あの会社が潰れるかも」という影響を及ぼし、実際には潰れないような状況でも会社が潰れるような「予言の自己実現能力を持つ
    →そして、こうした信頼や影響力が高い広告単価などビジネスやマネタイズの基盤になる
    →広告主も、メディアの「需要を生み出す力」に期待をかけてお金を払う



    ===
    ▼第5章 コンテンツの軸でメディアを読み解く

    前提:ネットの普及とともに、ユーザーは「いま」「ここ」である必然性を何かしらで感じられなければ、コンテンツに時間を消費しない傾向が強まっている

    コンテンツの3軸
    ①ストック⇔フロー
    ②参加性⇔権威性
    ③リニア⇔ノンリニア


    ①ストック⇔フロー
    ・ストック型は時間がたっても記事の価値が落ちない賞味期限が長い記事
    →読まれる価値があれば、「いま」「ここ」で読まれなくても、将来検索エンジン経由で誰かが発見して読んでくれるかもしれないので、ロングテール型ワードでSEOを意識する必要がある

    ・フローの特徴は今ココで読まないと触れないと鮮度と価値が落ちるもの

    ・フローとストックの性質を巧く使い分ける
    →トゥゲッターは、フロー性質のツイートにストック性を付与した
    →古典の「蟹工船」を格差社会に紐付けて、今読む必然性を付与してあげる=★ストック型のコンテンツにフロー性を付与して、いま感を演出する(ストック型は「いまここ」で読まないといけない必然性が低い)

    ②参加性⇔権威性
    「コントロール」「意思」「責任」がキーワード

    ・ミシュラン(権威性)
    厳正な審査制度により、明確な「意思」をもってアウトプットを「コントロール」でき、それによりまずかったらミシュランのせいという「責任」が発生し、「権威」が生まれる

    ・食べログ(参加性)
    ユーザーの集合知により、ユーザーをコンテンツにフィードバックできるが(集合知)、口コミに責任は取れないし、コントロールもできない

    ◎メディアは自社の責任が及ぶ「コントロール範囲=どこまで掲載している情報に責任をとるのか」を事前に読者やユーザーに対して明示しておくことが大事

    ◎権威性=受け手を思考停止させ、言うことを信じさせる力


    ③リニア⇔ノンリニア
    ・映画は現代で最高のリニアコンテンツ=連続性のある時間を要求するメディアであり(映画館で2時間ぐらい観客を固定する)、言い換えれば人の時間を最も自由にコントロールできるメディア

    ・基本的に現代においてはノンリニアコンテンツが主流で、時間軸のコントロールの「主権」は消費者にある(いつ見始めて終えてもよい)

    ・リニア:少人数から高課金
    ・ノンリニア:大人数から小課金

    ===
    ▼第6章 メディア野郎へのブートキャンプ

    ◎成功しているメディアは読者のペルソナの解像度が高い
    ・これが明確になれば広告主も出稿しやすく、記者編集もどんな話題や取材先を選べばいいかわかり、読者にも「私のためのコンテンツだ」と思ってもらえる

    ・ただし収益の最大化の観点からいえば、ペルソナがピンポイントになりすぎないようにバランス感覚も必要
    →広告ターゲットとなる消費者像になるので、最大公約数のほうが良い

    ◎ウェブメディアを運営する上でのコスト感覚
    「追加で1PVを獲得するためには、何円のコストをかけられるのか?」

    ・メディア全体の売上やPVの増減要因について、もれなくダブりなく「因数分解した構造」を持っておくことが必要(MECE)。
    →どの数値が増えたからどの数値が減るというトレードオフの関係を把握しておくべき

    ◎メディアの運用上、短期的に改善できる項目と長期的ではないと改善できない項目の把握も必要
    ・短期:タイトル付、SNS運用、UI、広告商品の改善
    ・長期:検索流入

    ◎できるだけ多くのPVを、できるだけ安い費用で稼ぎ、できるだけ収益機会を最大化する
    一人の記者が
    ・記事を何本生産したか
    ・生産のためのコストはいくらか
    ・1本1本が生み出したPVはコストに対してペイしているか(PVはカテゴリごとに把握すると良い)

    ★ビジネス(収益化)にこだわると、それだけメディアとして外部への依存度がへり、自由度が増す


    ◎かといって安易な拝金主義/PV主義に走ると、メディアの根本である信頼=影響力=予言の事故実現能力=権威を獲得できない
    →★ユーザーから信頼されうる「高潔さ」「編集の独立性」もビジネスのためのリソースの1つとして考えるべき
    →高潔さや信頼は数値化、メニュー化できないから、高い単価の広告を得られるような基盤になりうる
    →ユーザー第一がすべて


    ===
    ▼第7章 メディアとテクノロジー

    ◎技術の進化は、コンテンツのあり方やコンテンツの消費の仕方(利用スタイル、ライフスタイル)を変える
    EX)レコードはリニア的にじっくり聞く→CDなり、好きな曲を好きに頭出して聞くスタイルに→曲の構成も、サビを頭に入れてフックする(スキップされない)形が登場

    ◎アーキテクチャによる支配
    LP盤→CDで曲の聞き方や曲の構造が変わったような、テクノロジーの変化が及ぼす無意識の行動への影響

    ◎メディアに関わる人間は、
    自分のコンテンツがどんな環境で、どう消費されているか=サイトのデザインやフォーマットが、どんな風にコンテンツと向き合うにように人々に促しているのか、どんな影響を与えているかに自覚的・戦略的にならないといけない

    *アカウントメディアはタイトルを読むだけでいいので、より刹那的な方向にユーザーを追いやっていないか?と思った
    (ゼロクリック志向は、ユーザーファーストだと正しいけど、これは公共的に正しいことなのか)

    ◎パブリックとパブリッシャー
    雑誌や新聞の紙の印刷は、情報を流通させるための「手段」にすぎない
    →大事なのは、メディアとしてのアウトプットを「パブリック」にして、いかにユーザーとの間に有用なコミュにケーションを作れるかどうか
    →パブリッシュ=パブリックにすること。SNSへの投稿ですらパブリッシュでありえる。「出版社」という言葉に囚われてはいけない

    ◎テクノロジーが発展していく中でのオールドメディア
    コア・コンピテンシーを抽象化して、再定義すべき
    これまで最適だったものが、本質的に今でも最適なのか見直す必要
    →実はこういう真摯な姿勢・熱量がユーザーにも響き、社会に伝播していくものではないか

    ===
    ▼第9章 拡大するメディアの影響力とこれから

    これから個人起点のメディアが強い:メルマガ
    ・読者は「止める」ことを選択しないと、お金を払い続ける
    ・顔の見える個人が品質保証(責任も生まれる)
    ・メール読める人が潜在市場になりマーケットの広がりが期待dケイル
    ・購読の1クリックの価値が最大化
    ★メルマガ発行人へのお布施、ダイレクトな支援=課金がコミュニケーションになるという「幻想」が課金の最大のモチベーション
    ・ただし、メルマガを発行する人の「信頼」と「影響力」(評価資本)がないとスケールしない

  • 2012年刊の「古い」本。が、内容は非常に古びていない。
    思うに「今」を瞬間としてスタティックに切り取って論じるのではなく、微分的にダイナミックな動き・トレンドとして語っているのが、鮮度を保つ秘訣か? このアプローチはぜひ参考にしたい!

    「#社会が動く「影響力」の正体」(宣伝会議、田端信太郎著)
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  • 2012年発行だが、様々なメディアがオンラインに取って代わった現在においても、納得できる内容だった。著者も意識しているということだが、メディアの普遍的な性質を知れる本。

  •  テクノロジーの発展による時代の変化の構造を学ぶことができる。
     これからの時代は変化する消費者の行動に対応したビジネスが成功するのだろう。

  • アーキテクチャは中立ではない、という指摘が重い。

  • 作者のTwitterをフォローしていますが、そこでの印象とは異なり内容はしっかりしています。フランクな言葉遣いがありつつもメディア野郎としてきちんと考えてる人なのだなと。もう6年前ですが今読んでも古くはなっていないと思います。

  • 2015.06.09

著者プロフィール

田端信太郎(たばた・しんたろう)
オンラインサロン「田端大学」塾長。1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」を立ち上げる。2005年、ライブドア入社、livedoorニュースを統括。2010年からコンデナスト・デジタルでVOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。2012年NHN Japan(現LINE)執行役員に就任。その後、上級執行役員として法人ビジネスを担当し、2018年2月末に同社を退社。その後株式会社ZOZO、コミュニケーションデザイン室長に就任。2019年12月退任を発表。著書に『これからの会社員の教科書』『これからのお金の教科書』『部下を育ててはいけない』(SBクリエイティブ)、『ブランド人になれ!』(幻冬舎)他。

「2021年 『これからの会社員の課題図書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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