ペンギン・ハイウェイ (角川文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ぼくはあまり頭はよくなかったけれども、小さいころからマイペースだった。だからこの作品中の小学四年生〈ぼく〉には少なからず共感をした。

    ぼくの妹は最近になって「◯ちゃんはいつも気がついたら何処かへんな処に行ってしまって落ち着きがなかった」とのたまった。だから「◯ちゃんは隠れアスペルガーよ」と言った。そうじゃない。ぼくは「世界的な発見」をしている最中だったんだ。

    ぼくはある日、人はみんな死ぬ、ってことに気がついた。隣のヒゲのおっちゃんがある日死んで小さな葬式があったので気がついたのである。ちょうど〈ぼく〉のように、そのことに気が付いたのは小学四年生の頃だったと思う。

    〈ぼく〉のように、ノートに詳しくつけて「研究」することはしなかった。毎日うじうじ悩み、時々こわくなった。

    〈ぼく〉は普通に突き詰めれば世界的な発見(不思議な異次元的な裂け目のこと)をたんたんと「研究」する。あたりまえかもしんない。その頃は「世界的な発見」はそこらかしこにあった。

    〈ペンギン・ハイウェイ〉も〈世界の果ては折りたたまれて、世界の内側にもぐりこんでいる〉ってことも、〈お姉さんの顔がなぜ完璧に出来ているのか、なぜお姉さんのおっぱいが気になって仕方ないのか〉も、全て「世界的な発見」だ。きっとそうだ。ぼくもほんとうは「発見」していたのかもしれない。でも〈ぼく〉のように素早くノートにとる技術を持たなかったから、もう忘れているのかも。

  • Kindleで読了。

    登場人物の描写が丁寧で引き込まれてしまう森見登さんの作品。

    "大人"になる日を夢見て、日々研究に励むアオヤマ少年。この少年の周りでは、想像だにしない出来事が起きる。1つずつ仮説を立て、その謎に立ち向かう少年。やがて研究仲間が増え、点と点が繋がり、線となって解決への糸口も見えてくる。

    甘酸っぱく、焦ったい恋物語でもあり、ファンタジーでもあり、また何とも憎めないキャラクターたちに魅了されてしまうお話。

  • 小学4年のアオヤマくん、好奇心旺盛でこの世界の不思議について研究することに興味津々。
    歯科医院のお姉さんのおっぱいについても気になる年頃w

    主人公と同じ年の頃、私は友達とまっすぐ行ったら何処まで行けるかって遊びしました。実際はまっすぐ行けない所もあるのでその時は右折して次の交差点を左折して気持ちまっすぐっなんですが。学区を越えたあたりからドキドキしながら歩いてこれ以上は帰れなくなるところまでが世界の果てとゆうことで満足してたんです。
    大人になって検証してみたら自宅から5kmも離れてなかったけど小4の自分には大冒険だったなあって・・
    アオヤマくんたちはもっとすごい。データとりながらグラフ書いたり仮説を立てながら謎に挑んでいる。

    ペンギンが出てきてSFファンタジーな世界になってくるけど不思議な世界にハマってしまいました。・

    「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心がたいへん平和になるんだ。」ってとこが各心部かな、小4の頃の私は異性に興味なかったんだけど、
    死後の世界について考えると怖くなったりはあったなぁ。

    少年よ大志を抱けって感じでした。

  • どんな内容かまったく知らないまま、手に取った作品。タイトルからもどんな内容かまったく想像できませんでした笑

    10歳のちょっと頭が良くて、研究とおっぱいが好きな男の子の一人語りで進行する物語です。

    おっぱい好きに共感して、瞬く間に読んでしまいました(//∇//)

    内容はSFというかファンタジーというか現実にはありえないんだけど、ずっと透明感のある世界を漂っている心地よさがありました。

    オススメです♪

  • 久しぶりに森見登美彦さんの小説を読みました。

    主人公の「ぼく」こと「アオヤマ君」は、毎日様々な事をノートに取るし、沢山本も読んで勉強もしている、どこか大人びた考え方をする小学4年生。ある日、アオヤマ君の住んでいる郊外の街に突然たくさんのペンギンが現れた。この事件を発端に様々な謎が浮上するのだけど、どうやら歯科医院のお姉さんと関係しているらしい。アオヤマ君はこの謎を研究していくが。。。という内容。

    森見さんの小説は何冊か読みましたが、いずれもどこか不思議な雰囲気があって、作品世界の根底が「森見登美彦の世界」という土台にしっかりと根付いている感じがします。この作品は「ぼく」という少年の目線で書かれているので、一見するとどこか児童文学のようですが、それでもしっかり森見さんの作品の空気が流れているのを感じました。

    多くの少年小説のように、この小説でもアオヤマ君は一夏の冒険を通して成長していくし、大人の女性に対するほのかな憧れや恋心といった描写もあって微笑ましいのですが、時間や空間・生と死・問題解決のための思考方法と言った、大人でも「ふむ」と考えさせられるような事柄が登場人物の間でやりとりされ、そういった点がこの小説をより骨太にしています。少年と大人の間をゆらゆらと彷徨っている感じにも好感を持ちました。

    後半、いくつもの謎や不思議な出来事が一つの大きな現象となって、その解決へと向かうのですが、全部の謎が解明しないのはちょっと残念な気も。けれども、謎がまだ残っている事で、アオヤマ君とお姉さんがどこかでまだ繋がっているかも知れないという、切ないエピローグの中でのある意味希望なのでしょうね。

    最後に、私はKindle版で「ペンギン・ハイウェイ」を読んだのですが、残念ながらKindle版には解説がついていませんでした。文庫版も買っていたので改めて解説を見てみたのですが、なんと萩尾望都さんの解説が!。電子書籍化するのに当たって著作権etcあるのかも知れませんが、電子書籍にもやっぱり解説をつけて欲しいです。

  • 「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか」

    小4の僕は研究する。

    街ゆくペンギンを、
    いじめっ子帝国を、
    裏道の先の草原を、
    海の呼吸の理由を、

    お姉さんと僕の夏を。

    世界は次々謎を出す。

    だから僕は、
    日々忙しくするものである。

  • 途中、何度もギブアップしたくなったが、とりあえず最後まで読んだ。面白く感じる部分もあったし、素敵なお話だと思う。私に合わなかっただけ。

  • 【2021年36冊目】
    なるほどSFか、と読んでいる途中で気がつく。森見登美彦さんらしい、なんとも不思議な物語。1日1日を過ごす度にどんどんかしこくなっていく、という考え方はとても良いな、無限に時間のある小学生の時に私もそんな考え方ができれば、アオヤマ君みたいになっていたのでしょうか。物事の考え方、小さい文字で1つの紙に書いて、見つめ続ける、なんてのは何歳になっても有効な方法なんじゃないかと思ったりして。不思議な話でした。

  • 最後の2行は、涙ぐみながら読んでしまった。

    最初は物語に入り込むことが中々できなかった。
    小学生の目線のように感じたし、可愛らしいなと思うぐらいだった。
    なんなら、章ごとにお父さんなどに視点が変わって展開されることを期待したくらいだ。

    いま思えば、最初から最後まで完璧だった。

    アオヤマ君やお姉さんのキャラも、お父さんの立ち位置も、切れ切れになっているようなお話も、全ては最後の舞台に向けて動いていたんだ。

    「そうしたら私をみつけて、会いにおいでよ」
    「ぼくは会いにいきます」

    「ぼくは泣かないのです」

    読み始めたばかりの段階では、こんなにも心が掴まれることになるなんて思いもよらなかった。どうしようもないぐらいに、いいなと思ってしまったんだ。

    冒頭では、アオヤマ君は「将来どれだけ偉くなるか、見当もつかない」と言っていて子どもらしいと思っていたが、今では違う。
    きっとアオヤマ君は立派に偉くなる。
    それはアオヤマ君が泣かないからだ。世界の果てを見たときに、人は悲しくなる。だから泣くともお父さんは言っていた。でも、アオヤマ君は泣かない。
    それは諦めないからだ。
    きっとアオヤマ君は、お姉さんに会うだろう。偉くなってお姉さんに会うだろう。

    がんばれ。

  • SFだけど文学的な要素も感じた。

    お姉さんは最初は
    主人公の呼び方を最初は少年と言っていたが、
    後半は青山と呼んでいるのが印象的だった。

    子供扱いから対等or大人として変わっていくことがよかった。

    主人公がおっぱいが好きだという描写が非常に多かった。
    なんとなくだが、三島由紀夫の潮騒を思い出してしまった。
    おっぱいを官能的にみるのではなく、純粋な事象として観察していることが印象的だった。

    終盤になると合理性や理論と愛情や感情の対比表現が多くなってきた。青山君は一時の感情を、記録しようとするがこれができない。そこにジレンマを感じていることが印象的であった。
    最終的には、心や感情を許容する必要性を認識した青山君であった。

    将来、青山君が論理性と共感性を備えた立派な大人になることを願う。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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