ニサッタ、ニサッタ(上) (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 大学を出たはいいものの、上司が気に入らず、就職先を2ヶ月で辞めてしまった片貝耕平。その後転職した会社もあっという間に倒産。派遣登録したものの、辛抱が足らず、どの職場も長続きしない。挙げ句の果てにサラ金に手を出して借金地獄。典型的なだめ男が、住み込みの新聞配達で負のスパイラルからの脱出を図る。そして、借金を何とかした耕平は、東京生活に見切りをつけ、故郷、北海道の斜里に戻る決心をする。

    耕平の境遇は、飽食の時代にやりたいことや人生の目標を見いだせない若者が簡単に嵌まってしまう落とし穴なかもしれない。

    「地のはてから」の続編という事で読み始めたが、まだ前作との繋がりは出てこない。

  • 現代日本の若者の姿を描いた作品ということで、共感できる部分もあるのかと思い読んでみた。確かに運のタイミングもあるが、耕平の性格や行動には呆れ返るばかりで共感が難しかった。
    読み進めるほど苛立ち大きかった。
    ただ本当にこれが現代日本の若者の姿を投影しているのであれば、確かに鬱や自殺など社会問題が減らないことも納得出来る。
    読む人によっては心に刺さるものがあるかもしれない。
    反面教師として子供に読ませたい作品ではある。

  • (2022/337)妻の蔵書から。あまり偏差値の高くない大学を出て就職に苦労したのに、最初の勤め先はすぐ辞め、転職先も間もなく倒産し、周囲から見て「四の五の言ってる場合じゃない」のは明らかなのに妙なプライドが邪魔して、生活レベルはどんどん転げ落ちていく。住む処も失い借金が積み重なって辿り着いた住み込みでの新聞販売店での仕事。ここから少しずつ変わり始める。。主人公に共感は出来ないけれど、自分にだって絶対に起こらないとは言い切れない。引き込まれるように下巻へ。

  • 『ニサッタニサッタ(上)』 乃南アサ (講談社文庫)


    上下巻である。
    が、主人公・片貝耕平の凄まじいまでの転落ぶりのみで上巻が終わってしまっているのは、ある意味すごい。
    物語は進んでいるのに、どんどん後退している感じもすごいな。


    片貝耕平は、大学を卒業後、東証二部上場の企業に就職するも、上司が気に入らず二ヵ月で退職。

    四ヵ月ぶらぶらしたのち再就職。
    しかし五ヵ月後、社長が夜逃げをして会社が倒産。

    引っ越し屋などの日雇いのアルバイトで食いつなぎ、その後、人材派遣会社に登録するがどれも長続きせず、三つの会社を転々とし、四つ目の学習塾の事務員に落ち着くも、ほどなくして重症のインフルエンザに罹り、それが年末の忙しい時期に重なったため、派遣契約を解除される。

    貯金は底をつき、消費者金融で借金をしての生活。

    その矢先、アパートの賃貸借契約が切れ、契約更新にかかる費用が払えず住処を失う。

    ネットカフェ、ウイークリーマンションでの生活の中、なぜか人生イチかバチかだと開き直り、パチンコ屋へ。
    なんと三日連続の大当たりで大金を掴むが、そこで知り合った女に有り金全部を持ち逃げされる。

    ショックのあまり、さらにいくつもの消費者金融で借金をしてパチンコにのめり込み、ローン地獄におち、借金取りに追われ、実家にも取り立てが及び、たくさんの日雇い仕事を経たのち、やっとのことで住み込みの新聞配達の仕事に辿り着く。


    と、ここまでが上巻。

    うーん、読んでて落ち込むわあ。
    何してんのコイツ。


    でも、読み始めからずっと耕平を見てきて、ここまできてふと気付くと、頑張れ、踏ん張れ、ここが勝負だ、なんて心の中でエールを送ってしまっている自分がいる。
    確かにヤツは甘ったれだけど、根っから救いようのないクズというわけではなく、普通のどこにでもいる若者なのだ。
    真面目だし優しい。

    しかし、真面目さや優しさは、世の中をうまく渡るための必勝アイテムにはなり得ない。
    だから簡単にこんなことになってしまう。


    さて、物語が耕平の視点で進んでいくため、ほぼ全編通して、ものすごくうじうじしてもんもんとしている。

    サラ金の回収担当のあんちゃんにまで、まじで目ぇ覚ました方がいいよとか、このままでは人生踏み誤るよとか忠告されてしまうほどの、MAXダメ人間っぷりなのだ。


    ところが、新聞販売店に来てから、彼は少しずつ変わっていく。
    新入りの竹田杏奈に配達の仕事を教える場面の、「俺の後、ついてきて」というセリフにぐっときた。
    ものすごくかっこよかった。

    生活に追われ、人間らしい感情なんてとっくに失くしてしまって、借金を返すためにただ生きているだけだった耕平の荒んだ心に、小さな灯がともったように見えた。
    次に繋がっていく気がして、胸が熱くなった。


    故郷に帰る決心をした耕平、東京への夢を捨てきれない父、男運の悪い姉、故郷の母と祖母、そして訳ありの杏奈。

    なかなかに問題は山積みだが。

    大丈夫。とりあえず、ヤツ(耕平)は前を向いている。

    いざ下巻へ!

  • 今までなら、最低だな、しっかりしろ、とか甘いんだよ、と切り捨ててしまってたかもしれないが、いろんな経験をしてきた今だからこそ、すごくわかる。ここまで落ちぶれなくてよかったものの、少し弱気になれば誰でも主人公と同じ立場になってしまうだろう。
    世の中は今でもそんなにこの頃と変わっていない。
    自分も若い頃は些細な理由で会社を辞めたり、人間関係で揉めたりして、転職を繰り返したので、今なら共感できる部分も多い。
    最低ながらも、常識や家族という支えがあった分、今後の耕平がどう生きるのか下巻に期待したい。

  • 人生てこんなにも簡単に転落していってしまうものなのかと、、、。普通の社会人だった主人公が、会社の倒産をきっかけに派遣社員になり、そこから彼の暗い暗い人生がスタート。
    私にとっては非現実な世界だったけれでも、このような人生を送らざる得ない人もいたのだろうと思えるほどに現実味があったようにも感じました。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『美麗島紀行』『ビジュアル年表 台湾統治五十年』『いちばん長い夜に』『新釈 にっぽん昔話』『それは秘密の』『六月の雪』など多数。

「2022年 『チーム・オベリベリ (下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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