ふがいない僕は空を見た [DVD]

監督 : タナダユキ 
出演 : 永山絢斗  田畑智子  窪田正孝  小篠恵奈  田中美晴  三浦貴大  銀粉蝶  原田美枝子 
  • TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988101169405

感想・レビュー・書評

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  • 2012年 日本 142分
    監督:タナダユキ
    原作:窪美澄『ふがいない僕は空を見た』
    出演:永山絢斗/田畑智子/窪田正孝/三浦貴大/吉田羊/原田美枝子

    高校生の卓巳(永山絢斗)は、友人のつきそいで行った同人誌即売会で「あんず」というキャラのコスプレをしている里美(田畑智子)と知り合う。里美の好きな「むらまさ」というキャラに卓巳が似ていたことから里美は卓巳に連絡を取り、二人はいつしかコスプレでセックスする関係に。しかし里美は既婚者。同級生女子に告白されたこともあり、一度は里美と別れようとした卓巳だが、結局離れられず、しかし里美の言動を疑った姑と夫により、二人の情事が盗撮され、さらになぜかそれがばら撒かれてしまい…。

    原作は既読。原作がもともと連作短編形式だったこともあり、映画も群像劇風になっており、卓巳と里美のエピソードは、卓巳視点、里美視点で二度描かれている(正直これはちょっと時間の無駄だった気がする)。不妊治療を続けている里美に対する、姑(銀粉蝶)の圧がすごくて、独身の私ですら見ているだけでものすごいストレスだった。とにかく姑の狂気が凄まじくて、里美が可哀想。不倫とはいえ、現実逃避でコスプレ&妊娠目的ではない楽しむためのセックスに耽ってしまう里美を責める気にはとてもなれない。

    一方で、卓巳の親友・福田(窪田正孝)は、母子家庭なのに母親が男と出て行ってしまったせいで、痴呆の始まった同居の父方の祖母の面倒を一人で見ながら、授業の後はコンビニでバイトしている。親の借金取りに押しかけられ、祖母起こすトラブル、自分のことしか考えていない母親、バイト先の偏見だらけの店長など、見ているだけでストレスフルな環境。卓巳はそんな福田に同情し、母親の作った弁当を届けたりしていたが、福田はその「施し」を嫌い、こっそり捨てていた。

    卓巳が里美との画像や動画をばら撒かれて不登校になった時、彼は親身に家を訪問したりする反面、卓巳の写真をコピーしてさらに学校にばら撒くなど矛盾した行動を取る。それでいて、クラスメートが卓巳を揶揄すると殴りかかるくらいには卓巳の親友でもある。このどうしようもない憤りと矛盾をかかえた人物を、窪田正孝が自然体で演じていてとても良かった。ただ、里美の姑同様、彼の環境もストレスが多すぎて、見ているのがとても辛い。

    さらに、福田のバイト仲間の田岡(三浦貴大)の存在。彼は実家が医者で良い大学を出て裕福な生活をしているのになぜかコンビニでバイトしている。塾講師をしていたこともあり、バイトに追われ学業がおろそかになっている福田のことを彼だけが心配してくれている。しかし田岡にはある過去があり…。世間から見て最悪の犯罪者である田岡だけが、福田に優しいというこの人間の不条理、一人の人間の中に同居する善意と悪意、福田のほうのエピソードはそういったことを深く考えさせられる。

    卓巳は引き籠り学校に行かなくなるが、事情を知っても助産師である卓巳の母(原田美枝子)は彼を責めたりせず放任している。(意識高い系の妊婦役で吉田羊も出演)ラストは原作通り、卓巳が母を手伝い出産現場に立ち会うことで少し希望が見える終わり方だけれど、原作同様、この場面では、私が妊婦さんだったら、いくら助産師さんの息子とはいえ素人の男子高校生に出産現場にいてほしくないなと思ってしまった(苦笑)

    まあそれはさておき、原作のメッセージを汲みつくした良い映画化だったと思う。エンドロールでタイアップまるだしのJ-POPなどを流さず静かな音楽だけにしてあったのもとても余韻があって良かった。難点は、見ていて辛くなりすぎるところ。それだけリアリティがあったということだけれど。

  • 『自分の人生を本当に自分で選んだか』
    本当に選んで生きてきたのかな。選んできたように見えて、流されて選んだように見せかけられてるのかな。

    原作が好きで、映画も鑑賞です。

    もう!本当に!よかった!!
    ついつい女優さんのオッパイ出てますよがっつりシーンありますよ的なところにスポットあたりがちですが、この映画の素敵なところは人間がしっかり描かれてるところ、そして演じる役者さんも実力ある方ばかりでそれがガシガシ伝わってくるところ。
    主演の永山絢斗さんが大人っぽいので高校生に見えない…と思うのですが、あくまでも顔立ちの話であって実力は素晴らしい。

    真面目な生徒が人妻とコスプレ不倫。
    コスプレ不倫妻は夫と姑から虐げられてる。
    一見おちゃらけた感じのおバカキャラくんは痴呆のお婆ちゃんと毒母の団地住まい。

    本当に人間であるがゆえの多面性がしっかり描かれています。
    人間であるがゆえ。嫌悪するけどもそれが人間であるという。

    すごいのが
    ・サブキャラのおおらかな助産師母ちゃんもダメ夫持ち。
    ・サブサブキャラのバイトのボンボンな先輩も犯罪者。
    ・スーパーサブキャラのおばあちゃん入院先の看護師さんも、新聞記事みて『カウンセリング受けてた』『書き手がいけない』っていう擁護からの『福田くんは何もされてない?』ってばりばり疑い←この一言で全てひっくり返すのはぞわぞわしました。

    これが人間、人間なんですよね。
    きれい事なんかないよ。


    またいいのが、最初真面目くん側から追っておいてコスプレ主婦を悪女に仕立てたところで、主婦目線の話が始まるところ。
    田畑智子さんはさすがです。

    生きていくって大変。人生は長い、だから色んなことがある(しかも人それぞれ)
    映画の紹介は“最後の一筋の光”とある。
    本当に光が指します。

    最後まで必見!!!!です。

  • 原作を読んだイメージと空気感がちがうような気がしたけど、それは映画として自立していることだと感じた。
    主役では無いけれど本当はもっと深く掘れてしまうほどのバックグラウンドを持つ福田。原作の話がすきなので印象に残っている。福田の家族、団地での生活、それを受け入れるしかなくて生きるしかない。切ないけど、きっといろんなやり方で変えていけるし、決して絶望しないで生きていってほしい。生まれたらみんな幸せになれるって思って欲しい。

  • 誰にでも、なにか自分でしかわからない、何か。
    そんなものが、あると思う。
    決して仮面をかぶって生きているわけではないけれど、人に上手く言えない、なんだかよくわからない後ろめたさだったり、よくわからない何かがあると思う。
    少し歯車が狂うと、その何かが大きくなったり、時間が経って少し落ち着いたり、また大きくなったりの繰り返し。
    それを繰り返すと、時々わけがわからなくなって爆発したりする。
    でもそれでいいんだと思った。

  • ある意味マニアックな映画?だと勘違いするような出だしから、目まぐるしく変わるストーリー展開、これオススメです
    https://j-mode.co/4563

  • 前半は最高にエロくて良い。
    生殖の可能性がほとんどないことが分かりつつ、本気で生殖するとか最高にエロいだろ!
    エロの本質は責任を負わない中出しであるという真実を上手く捉えられている。
    あと、田畑智子ってこんなに可愛かったのかと。

    後半は一転して産まれてきてしまった子どもの話になり、快楽の果てに現実に産まれ落ちた人達の苦悩と淡い希望が描かれる。

    結局、人は生殖し続けるし、この世に誕生し続ける人達の幸福を、無力であると知りながらも、祈り続けることをやめることはできない。

    プラスマイナスプラスな映画でした。

  • 暗めの映画が好きな友人に勧められて鑑賞。
    えらいハードパンチでしたね。良作ですが、オススメ聞いてすぐにこれ勧めるかね?笑

    時計見ると長かったみたいですが、いい映画見た後の、もうこんな時間経ったんだっていう感覚きましたね。
    平凡って幸せなんだと再認識させてくれる内容でしたが、、いかんせんハードパンチでしたなー

  • なんかまとまりがない…

    苦虫女の方が好きだな

  • 百万円と苦虫女が凄く良かったので、タナダユキ監督の他作品も観てみたいと思い、CSでやっていたので視聴。

    いきなりベッドシーンでビックリした。
    それも、見えない角度から映す という感じではなかったので、さらに目が点。

    対して内容はとても暗かった。
    でも、妙にリアルな所もあった。

    もう一度観たい映画では無いけど、自らが体験していなくても、耳が痛くなるような言葉が幾つか…。
    義母の嫁に浴びせる言葉は凄まじいものがあったし、病院に救急搬送した時の看護師の発言。
    看護師の場合は口にはしなくても、心では思ってそうだな〜って思った。

    こういう映画を観ると、過去に失敗した自分の恋愛を思い出し、ズーンと気持ちが重くなる事もあるのだけど
    「馬鹿な恋愛したことない奴なんているんですかね」
    この一言で少し気持ちが軽くなった。
    一番、心に残った言葉。

  • R18 (観たのはR15版)。

    ただのエロ映画じゃなくてよかった。
    様々な思いを持ちながらの登場人物がリアルに見えたのも、細かな部分までキャストが良かったからだと思う。

    女性目線の作品はよくあるけれど、これはどちらかというと男の方が悩んでるなーと感じた。

    永山絢斗+田畑智子ももちろんよかったけれど
    窪田正孝が良かったなぁ。
    気持ちはひとつじゃなくて、わけわかんないのが良く出ていたと思う。

    あと義母の言葉の暴力が聞いていて耐えられないほど妙にリアルで凄まじかった!

    暗くて抜け出せなくて、目を背けたくなるような物語だけれど最後まで観られました。(ただちょっと上映時間が長く感じられたかな…)

    中性的な視点の監督も良かった。原田美枝子も大好き。

    ふだんこんなこと思わないけれど、小さな不幸はありつつもみんな幸せになれ!と思いました^^;

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著者プロフィール

1975年、福岡県生まれ。2001年、初監督作品『モル』で第23回PFFアワードグランプリ及びブリリアント賞、08年『百万円と苦虫女』で第49回日本映画監督協会新人賞を受賞。監督作に『タカダワタル的』『ふがいない僕は空を見た』『お父さんと伊藤さん』『ロマンス』など。著書に『小説 さくらん』『百万円と苦虫女』『復讐』などがある。

「2019年 『ロマンスドール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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