かぞくのくに [DVD]

監督 : ヤン・ヨンヒ 
出演 : 安藤サクラ  井浦新  ヤン・イクチュン 
  • 角川書店
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感想 : 71
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  • / ISBN・EAN: 4988111243584

感想・レビュー・書評

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  • 1959年から20数年間にわたり、約9万人が北朝鮮へ
    移住したという…「帰国者」といわれる人たち…
    本作は、25年ぶりに治療のため日本にいる家族のもとへ
    戻った男の数日を描く…そして、当然で理不尽な帰国指令…

    北朝鮮の国家としての異様さ、いびつさを感じさせる…
    しかし、この映画は、そうしたことを伝えようとしたのでは、
    ないように思った…日本に暮らすボクが、どれほど、何を、
    自覚しながら生きているのか…と突きつけられたのだ…

    ―あの国では考えずにただ従うだけだ。
     考えると、頭おかしくなるんだよ。
     考えるとしたら、どう生きぬいてゆくか…それだけだ。
     あとは、思考停止…楽だぞ…思考停止…
     俺は、こう生きるしかないんだよ。いいんだ、それで…
     でも、お前には考えて欲しい…たくさん考えろ。
     どう生きるか考えて、納得しながら生きろ。
     お前の人生だぞ。 お前の人生だろ? な!
     誰の人生でもない、お前の人生なんだ。
     お前の好きなところ行ってさ…毎日感動してさ…
     わがままに生きればいいんだよ…

    この国にあって、ボクはどれほど考えてただろう…
    中途半端に懊悩とする日々のなかで、
    思考停止している自分が多いことに思い及んだ…
    ボクは…今、納得してるんだろうか!?

    好きなところへ行っているだろうか!? 
    毎日感動してるだろうか!? わがままに生きられる国にあって、
    わがままに生きていないことこそ、「くさった資本主義」と
    呼ばれる様だと、自らを省みた。

  • 思考停止。考えちゃダメなんだって。
    なんのために日本に帰らせた?
    工作員探しか。

    泣いた。理不尽すぎて。勇気がなさすぎて。
    大切な人がいるから、みんな思考停止になるんだな。住みたい国に住めればいいのに。

    オンマが監視人にスーツ揃えるとか、わかるわ。
    そうなるわ。そうするわ。もう祈りしかない。
    ソンホに家族がいなければ、監視人に迷惑がかからないなら、一緒に死にたくなる。絶望。
    死ぬ自由すら、ないんだな。

    帰りのタクシーでずっと手を離さない妹。
    声がないのが余計つらい。
    気持ちを押し殺す演技に号泣。 

    これって現実で、今も続いてて。
    兄が欲しかったスーツケース、
    なんだかんだの日本でも
    私達は考えることはできる。動くこともできる。
    メッセージはここかと思った。

  • 何も言葉がありません。

    ノンフィクションではありませんが、フィクションではないでしょう。

    監督の思いと何かの思し召しによってこの世に送り出されたこの映画。
    この映画が目に留まったなら是非ご覧ください。
    これはそういう映画です。

    ヤン同士が言った言葉。
    「あなたが嫌いなあの国で俺とお兄さんは生きているんです。」
    「死ぬまで生きるんです」

    お兄さんが妹に言った言葉。
    「あの国ではな、考えずにただ従うんだ」
    「考えるとなあたまがおかしくなるんだ」
    「考えるとしたら、どう生き抜くか、ただそれだけだ」
    「あとは思考停止させる」
    「楽だぞ思考停止(笑)」

    あの国で生きていくための方法。
    絶句。


    「あの国」を「会社」と置き換えれば私が毎日つぶやいてる言葉そのもの。
    あぁ、家族を守るために私がしていることはこういうことでもあったのか。と思ったり。
    つまらない余談でした。

  • わたしは、北朝鮮が地上の楽園といわれていたことを知らなかったんだ。
    とってもいい映画だったのは、安藤サクラの存在だなと思った。理不尽さ、どうしようもなさ、理解できない、納得できない、意味わかんない、をすべて言葉以外で表現していた。すごい女優さんだなと思った。
    お兄ちゃんが空港へ向かう車のなかで歌っていた姿が切なかった。
    そうそう、ちょっと疑問だったのは、ふだん"思考停止"させて生きているお兄ちゃんは、妹に「たくさん考えて、自由に生きろ」というメッセージを伝えるんだけど、そんなアドバイスができるような思想が彼に残っているのかなってことだった。日本に帰ってきてその感覚を取り戻したとしたらもっともっと混乱するだろうし、完全にその感覚をなくしているんだったら、逆に家族を恨めしく思ってしまうだろうし、妹にそんな冷静にアドバイスできるのかな。16歳だったら、もう人格は日本でできていたってことなんだろうか。むこうで、とっても強い気持ちを持って生きてきたんだろうな。

  • 一般的に、フィクションは嘘であり、ドキュメンタリーは真実であるかのように捉えられがちである。

    そのため、フィクションの冒頭に「これは実話をもとにした物語」であるというようなことをわざわざ提示する作品も珍しくない。

    しかし、ドキュメンタリーは1つの視座から撮影されたものであり、常にカメラの前に真実が現れるわけでもない。

    監督のヤンヨンヒは、「ディアピョンヤン」「愛しきソナ」の2本のドキュメンタリーを撮り終えたあと、カメラの外にあった真実を拾い集めて、この素晴らしいフィクションを作ってくれた。

    まだ、上記の2作品をご覧になっていなければ、是非鑑賞していただきたい。

    そうすれば、「かぞくのくに」が、より深く胸に迫ってくるはずです。

    国家という暴力装置を、意識しておく必要があることを教えてくれます。

  • 大好きな安藤サクラさんと新さんの共演

  • 近くて遠い国という言葉が胸に迫る。
    隣のオーウェル的世界。

  • 安藤サクラの不貞腐れ加減はちょっと真似できないくらいすごいですね。

    新調したスーツを着た監視役の人はどんな気持ちで袖を通したのでしょうか。

  • 在日朝鮮人の家族の物語。
    重く辛い現実。国によって 家族が引き裂かれている。

    両親と 妹/安藤サクラは 日本にいて、兄は 北朝鮮に。
    長男が16歳の時 希望のくにとして
    おくりだした。
    が、ふたたび 日本に戻ってくることもない。

    松浩は 病気治療のために 25年ぶりに
    かえってくるが、寡黙で、多くを語らない。
    期間は 3ヶ月と限定されており,
    病院で 脳腫瘍が 発見されるが、
    3ヶ月では 治療が無理と言われる。

    兄は 妹に スパイみたいなことを依頼するが
    妹は 頑として うけいれず。

    そして,突然 帰国命令が出る。
    理由もなく、それに従うしかなかった。
    安藤サクラは それに反発するが。

    この家族が 笑顔で あうことができるのは
    いつの日のことだろう。
    母親の宮崎美子が 芯の強い気丈夫な演技。
    光りました。
    自由とは なにか。
    自分の人生を生きることの意味をといかける。

    また、かの国は、今日も 日本海に 
    ミサイルを撃ち込んだらしい。 

  • なんかね、簡単に感想をいっちゃいけないようないろんな問題を内包している映画だった。
    セリフもセリフに聞こえない、ドキュメンタリーぽい作りで妹役の安藤さくらにはほんと脱帽。野田さんの部長(手影サークルの)がこんな上手い役者さんとは。とにかくこの人がいなかったらこの映画の魅力、深み全部半減していただろう。
    井浦新の、あの憂い帯びた哀しい瞳もこのおかれた状況を雄弁に語っていたね。
    北朝鮮で暮らすということは、頭で考えることをせず、ただ従うだけって
    まさにあの国では、そうせねば生きていけないのだろう。
    母親が、頭に腫瘍をかかえた息子の治療も受けさせられずいきなりの命令で帰国せねばならなくなった出発の朝、
    付き添い人の北朝鮮の人にも背広を新調していたシーンにもう、号泣。
    あのブタの貯金箱は手術ではなく、これに使った母の精一杯の愛なんだと。
    あーこれは、ぜひ原作を読まないと。

    かぞくのくに    2012年 100分
    監督 : ヤン・ヨンヒ
    出演 : 安藤サクラ 井浦新 ヤン・イクチュン  津嘉山正種 宮崎美子 
         京野ことみ 

    25年が経過して、兄があの国から帰ってきた。

著者プロフィール

著:ヤン ヨンヒ
大阪出身のコリアン2世。
米国ニューヨークのニュースクール大学大学院メディア・スタディーズ修士号取得。高校教師、劇団活動、ラジオパーソナリティー等を経て、1995年より国内およびアジア各国を取材し報道番組やTVドキュメンタリーを制作。
父親を主人公に自身の家族を描いたドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』(2005)は、ベルリン国際映画祭・最優秀アジア映画賞、サンダンス映画祭・審査員特別賞ほか、各国の映画祭で多数受賞し、日本と韓国で劇場公開。
自身の姪の成長を描いた『愛しきソナ』(2009)は、ベルリン国際映画祭、Hot Docsカナディアン国際ドキュメンタリー映画祭ほか多くの招待を受け、日本と韓国で劇場公開。
脚本・監督を担当した初の劇映画『かぞくのくに』(2012)はベルリン国際映画祭・国際アートシアター連盟賞ほか海外映画祭で多数受賞。さらに、ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位、読売文学賞戯曲・シナリオ賞等、国内でも多くの賞に輝いた。
かたくなに祖国を信じ続けてきた母親が心の奥底にしまっていた記憶と新たな家族の存在を描いた『スープとイデオロギー』(2021)では毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞、DMZドキュメンタリー映画祭ホワイトグース賞、ソウル独立映画祭(2021)実行委員会特別賞、「2022年の女性映画人賞」監督賞、パリKINOTAYO現代日本映画祭(2022)グランプリなどを受賞した。
2022年3月にはこれまでの創作活動が高く評価され、第1回韓国芸術映画館協会アワード大賞を受賞。
著書にノンフィクション『兄 かぞくのくに』(小学館、2012)、小説『朝鮮大学校物語』(KADOKAWA、2018)ほか。
本書のハングル版『카메라를 끄고 씁니다』は2022年に韓国のマウムサンチェクより刊行された。

「2023年 『カメラを止めて書きます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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