愛、アムール [DVD]

監督 : ミヒャエル・ハネケ 
出演 : ジャン=ルイ・トランティニャン  エマニュエル・リヴァ  イザベル・ユペール 
  • 角川書店
3.84
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988111244734

感想・レビュー・書評

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  • 覚悟はしていたが、観た後にずっしりと重いものを残す作品。自分がジョルジュの立場だったらこの感情を受け止められるか、と問わずにはいられない。誰にでも起こりえる残酷な顛末を、観ていて辛い程のリアリティで観るものに突き付ける監督、老夫婦の間の愛情と、それ故の葛藤を演じきった主演の2人に脱帽。

  • ハネケの作品の中ではかなり見やすく、一般受けしそうな作品。
    でも、もちろん、老老介護の心温まるいい話なんかじゃない。
    カメラは最初のコンサートのシーン以外はアパルトマンの中を全く出ない。
    かなりの閉塞感。でも、それがこの夫婦の全世界なのだ。
    ハネケ作品では、役者はかっこよさや美しさをかなぐり捨てて、生の人間を曝け出さねばならない。もし、ハネケが日本で撮って、これに応じられる役者がどれくらいいるか。
    その点、「ピアニスト」のときのI・ユペールもそうだったけど、この作品のエマニュエル・リヴァも、見上げた役者だと思う。
    はじめは美しい老夫人だったのが、病が重くなるにつれ、髪は乱れ、顔色は悪くなり、顔も体も歪む。
    日常生活も困難で、排せつもコントロールできない。そうなっていくのは、夫も娘も耐えがたく悲しいが、実は一番本人が悲しんでいるというのを、夫が一番分かっている。
    本当の愛は、厳しい。辛い。苦い。
    本当に素晴らしい作品だった。
    そして、いつものことだが、クラシックを自分の血肉としているハネケの音楽の使い方に、心から感動。
    シューベルトの即興曲、ベートーヴェンのバガテル、バッハ「主、イエス・キリストよ、我汝に呼ばわる」。
    どれも切ない旋律をほんのはじめだけしか聴かせない。
    でも、私の中には今もその続きが流れている。
    無駄にだらだらと聴かせる必要はないのだ。
    ほんとうに音楽が分かっていて、自信がある人にしかこういう使い方はできない。
    無駄な(感情を煽るような)音楽は一切なし。
    ハネケ、今世界で一番好きな映画監督。

  • 「老夫婦の、至高の愛の物語」
    何かの番組で、そんな風に、この映画を紹介していた。

    今まで監督の作品では、「ファニー・ゲーム」「白いリボン」を観たことがあるのだけれども、どちらも鑑賞後の気分は最悪だった。笑
    けど、人間の本質をリアルに、残酷なくらい真正面から見せてくる監督は、なんと素晴らしい映画監督なんだろう、とかねてから思っていた。
    ミヒャエル・ハネケ監督はいつも、僕らが見たくない現実を突きつける。
    それは、暴力でもあり、恐怖でもあり、死でもあり。

    そんな監督が、老夫婦の愛の物語を撮るのか…
    どんなになるんだろう…

    興味がやまず、とても久しぶりに映画館に足を運んでみた。

    =================以下観た感想(ネタバレ含む)=================


    はぁー、重い。
    観てるだけで、気持ちがしんどくなる。
    そんなに不自由なら…
    そんなに辛いなら…
    そんな苦しいなら…

    眉をしかめながら、何度もそう思った。
    ちょっとずつ、容体が悪化していく妻。
    表情の変化が無くなっていく。
    言葉が聞こえず、言葉が届かず、コミュニケーションも取れなくなっていく。
    それは、自分が何十年も一緒に、人生の大半を共に過ごした妻とは、別人のよう。

    自分自身、老衰していくおばあちゃんが亡くなるまでを知っているから、この変化は、痛いくらいにわかる。

    介護士を雇い、風呂に入れたり髪をとかしたりしても、痛そうに嫌がる妻。
    たまらず、解雇する夫。


    もし「愛」が、「愛する人を幸せすること」であるとするならば。
    老衰していく妻にとって、「幸せ」とは何なのだろう?
    「生きる」こと、だけが幸せではない。
    もっと言葉を正確にすると、「延命する」ことは、決して幸せなことではない。

    ミヒャエル・ハネケ監督が、インタビューでこう言っていた。
    「自分にとって、介護の問題が今回の一番大切なテーマだとは思っていません。この映画で社会問題を扱うつもりはなかったのです。私が扱いたかったのは、自分が本当に愛している人の苦しみをどういう風に周りの人が見守るか、そういうことを描きたかったのです」

    「日本でこの作品が、どう批評されているのかは私にはわかりませんが、おそらくそこで説明されているような映画ではないと思いますよ。つまり、病気であるとか、死であるとか、そういうものを描いた作品ではなく、これは愛について語られた映画なのです。」


    この映画は、老夫婦の至高の愛の物語。
    観終わったあと、しばらく時間が経ってからだけど、
    確かにそう思った。

  • とても淡々としていながら、夫婦の形について考えさせられる映画だ。
    こういう先の暗い状況の中でも、2人だけで思い出に浸りながら穏やかに過ごす時間は幸せそうで、だからこそ最後のシーンは印象深い

  • 【愛、アムール】予告編
    https://www.youtube.com/watch?v=626RPRSHPn0

  • ハネケ作品を見る時はどんな不快な思いをさせられるのかと身構えながら観る癖がついています。しかしこの作品はそんな心配はいらず、素直にすばらしい作品です。日本では孤独死を煽るような風潮を見かけることもありますが、老老介護は現実です。この夫婦は裕福な芸術家ですが、介護の現実の厳しさを伝えています。愛の美しさ厳しさ、ハネケにしては抑えた表現で見せてくれます。素晴らしい。しかし少し物足りない。これがハネケ作品を見てきた者の実感でしょうか。どんなに便利になりお金があっても個々の愛の生活はプライベートなものですね。

  • 愛に充ちた夫婦のかたち。

  • ★★★★★『愛、アムール』
    こんな感情を感じて映画を観たことがなかった。映画の可能性は様々な作品から感じてきましたが、この作品は自分のなかにあるが気がつかなかった感性を揺さぶりながら蘇らせてくれた。
    設定やストーリーは本当に単調で現代社会の抱えているどこにでも目にする'老い'を取り扱ったものです。
    この老夫婦のように、死へ向かう愛する連れ合いにただ、献身的に自らできることを捧げる老紳士の姿が、物凄く自分に迫ってくる。

  • なんて美しい婦人だろう。
    華で飾られた亡骸に目が留まる。

    冒頭から、こういう歳の重ね方をしたいと感じさせるアンヌ(エマニュエル=リヴァ)に引き込まれた。
    立ち振る舞いや老いても尚女性としての色香をもつのは、文化の違いなのかしら?と彼女の美しさを探した。そこには、ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)の愛があった。互いを想いやり感謝する気持ちを大切にする姿は素敵だった。だからこそ、病で変わりゆくアンヌとジョルジュから目が離せなかった。

    結末は思いがけず、けれど、どこか納得してしまい、そして、哀しくてたまらなくなった。

    ◼︎

    映画の導入部。
    「!?」何があったのかと興味を引きつけ、パッと切り替わった画は、多数の観客たち。誰にスポットを当てているのか惑わせて、次第にクローズアップされて、街から、メインの住処へと移る。

    その先は、ずっと家の中の画だけになるが、家に溢れる各々の気持ちがよりコントラスト強く感じ取れて、飽きずに見入ってしまう。

    私がアンヌと同じ歳になるまで何度も観たい映画。おそらく見るたびに注視するものが変わっていくのかな。

    http://ai-movie.jp/

  • 長年、お互いに尊敬しあい、愛し合い、寄り添って生きて来た二人に訪れた終焉…日を追うごとに壊れていく妻に対する献身的な介護の末に追い詰められてしまった夫…
    身近に迫ってくる現実問題としてこの作品の痛ましさは他人事とは思えない。どんなに愛してようと出口のない迷路のような生活では、不意に訪れた衝動に抗うことなど出来ない…妻にとっても夫にとっても結果としては悪くないはずなのに社会通念の上では被害者と加害者になってしまう。こんなにも切ない話があるなんて…悲し過ぎる。昨今、この作品と似たシチュエーションで起こった事件を耳にする機会が何度かあった。見方を変えれば、悲しみの果てに現れる究極の愛の形なのかもしれない。愛するとは一体どういう事なんでしょうか?老いるとは…投げ掛けられたことの大きさに為す術が見つからない。

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