ロータス

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著者 : 柳川麻衣
  • 密林社 (2012年11月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 4571317728421

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ロータスの感想・レビュー・書評

  • そうだ、そうなんだと頷きながら読み進めた。途中引っ掛かるものを感じたのは、わたしが、社会が一部のLGBT(と、仮称しておく)に商用価値を認める時代を生きているからだろう。それでも女という性は、世間からは「産むこと」を求められる。多種多様な生き方をうたってはいても、箱の中に押し込められがちである。そうではないものへの憧れは、憧れられるほうから見れば、作中人物が言ったように自分こそが落伍者ではないかという悲しみを背負っている。そんなことない、と強く否定されても、「皆のようになれない」疎外感はどうしたって付きまとう。この本を読み、レビューを書いているうちに、わたしは自分が寂しかったことにようやく気が付いた。通り抜けていった女の子たちにはわたしによく似た子もまったく似ていない子もいて、しかしだれもが変わっていく。女という型に嵌められていく。そこから抜け出したような浮き出したような、または取り残されたような人物の中にもわたしがいる(わたしはお世辞にも、美人でも格好良くもないが)。わたしを、とてももやもやさせる(褒めています)本である。

  • 男なんて、あなたに比べたら――幼稚舎から大学まで一貫の名門・私立華胥女子学院。その学び舎に在籍する少女達と蓮実輪、そして蓮実輪と友人にして唯一の存在である女性・桃重を巡る連作短編集。

    80年代からおそらく2050年代までを舞台にした、女性同士の恋愛や友情が描かれる連作短編。サークル「痛覚」さんの作品。文学フリマin大阪で購入しました。もともと自分は特別百合や少年愛やGLやらが好きというわけでなく、たまたま作品内で出逢えたら好きかもなーくらいの、作者さんからしたらあまり歓迎されないかもしれない読者です。でも紹介文や内容に惹かれるものを感じ購入。読んでみて、そういう要素抜いてもとても良いものだなあと思いました。
    キーパーソン・蓮実輪が多かれ少なかれ登場人物(主人公)達に影響を与えているのですが、人物達は華胥女学院の演劇部に所属していたり、過去に在籍していたり、縁があったりして、蓮実の書いた萩尾望都原作の台本の儚い世界に魅せられていく。この萩尾さん作品(主に「ポーの一族」の「小鳥の巣」)の使い方がうまいなあと。他にも萩尾さんや文学作品の引用などがあって全体的に耽美さと、どこか退廃的なイメージをつけるのにこれ以上ない効果を出していたなあと。作者である柳川さんがまずこういうの大好きなんだろうな、と思わせる使い方でした。あと当時の文化について沢山取材されたんだろうなあと。ビジュアル系のバンドとかゴスとかロリータファッションとかはちょっと専門外でわからなかったのですが、80年代90年代とか好きなので。
    また蓮実を巡る連作の方法は実に私好みでした。なんか、ちょっと違うかもしれないけど萩尾さんの「トーマの心臓」のトーマのような(蓮実は生きてるけど)“不在故の存在”感がすごくて(作中に出てくる方が多いけど、出てこない時の蓮実の影響力というもの)誰にとっても憧れとなる故に誰のものにもならないと言う彼女の孤独もこの上なく魅力的でありました。

    最初に書いた通りGL小説で耽美な世界なのだけど、そういうのは逆に生々しさや俗っぽさがつきまとうもの。ここで描かれているのはただ単に「好き」で結ばれるだけの少女同士では、残念ながら永遠にはいられない、ということ。幻想の崩壊や夢の否定が深く深く彫り出されていく筆致には否応なく引き込まれました。女性であるがために求めてしまう切実な暖かさ――男性のそれとはまた違う肉欲に、否定したくなりながら、苦しみながらも女性の読者は肯定してしまうかもしれません。連作で描かれる少女達はある意味誰も間違っていないし、人ならば人らしい肉体的な繋がりを得ようとする。この小説が描くのはそんな“事実”だと感じました。
    でも他が生々しい事実ばかりだからこそ、ラストの、ついに巡り会えた蓮実と桃重の愛が際立って見え、一体いつ二人は再会出来るのだろう、どんな形でなされるのだろうと待ちわびていた読者にとっても、気持ちのよいカタルシスでした。この二人ならおとぎ話の「めでたしめでたし」が虚構でなく感じられる。ここまで描くのには並大抵でない年月と努力が必要であったと思われます。作者の柳川麻衣さんに惜しみない拍手を送りたいと思い、一応は同人小説で☆5というのもなあ…と最初は躊躇しましたが☆5にせざるを得ませんでした。自分もこんなのが書けるようになりたいです。お恥ずかしながら恋愛経験に乏しいから無理だけど… これからのますますの活躍に期待したいです。

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