- Amazon.co.jp ・電子書籍 (316ページ)
感想・レビュー・書評
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第2次世界大戦の時代を今から語るとなると、どうしても戦争が話の主役になってしまうが、国民の大多数は影響を受けこそすれ、実際は普段の生活を営んでいた。
女中として家に入り、戦争によって物資が不足していくなか、やりくりしながら家事をこなしていく物語が、タキの語りを通じて軽妙に書かれていてとても楽しい。
更に戦争の余波がこの一家にどう影響したのか、最終章でその一面が明らかにされ、一気に読み進んでしまうが、なにか引っかかるものが残り、もう一度読み返したくなる本
小さいおうちはどんなものだろうか、リアルに見てみたい、と思ったら、映画化されているのを知りませんでした。みないと。いや、見ないで想像にとどめておくのがいいのか、うーんどうしよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに読後もその余韻に浸っています。
美しく読みやすい文章で
スッとその世界に入り込むことができました。
バートンの「ちいさいおうち」と絡めるために
最終章は必要だったのかも知れませんが
私には少しくどい感じがしました。
タキさんが
なぜ手紙を板倉正治に渡さなかったのか、
というのは
読者の数だけ解釈の仕方があるのでしょう。
私としては
タキさんにその時
明確な目的があったかというと
そうでもないような。
マドリング・スルー
私たちが日常よくやるように、
その場その場をどうやらこうやら
切り抜ける。
でも、
タキさんは一体何を守りたかったのだろう。
奥様?
それとも
自分の唯一の居場所である
小さなおうち?
奥様が居てこそ成立する
小さなおうちなのか。
本を閉じた後も
そんなことを考えています。 -
主人公が最後まで残した後悔の原因を推測するに、物語前半の穏やかさからは想像しなかった読後感。
肉体と理性と感情と、人の皮の下は到底計り知れない。
戦争は日常という日々の中で進行していくようだ。 -
戦争時代のある家庭の日常が、女中タキの目から語られる。喜びや悲しみ、葛藤など、どの家庭にでもある日々の生活の営みが、戦争によりいとも簡単に破壊されていく様に、恐ろしさを感じた。誠実に女中と言う仕事を全うしたタキの人生の厚み、また、甥の子供が最後に、登場人物たちの人生にそっと寄り添っていることに温かい気持ちにさせられた。
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映画の方を先に観、原作では謎がわかるかしらと読んでみたが、むしろ原作の方がより謎を残したままのように感じられ、映画は一解釈を示したもののように思えた。穏やかで淡々とした語り口、謎の部分を読者の想像に委ねているところなど、ふわふわとしたところが魅力。
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タキちゃんの本当の家族以上の小さいおうちの家族の話
平和で優しい暮らしと、戦争によって変化してきたいろいろな環境について
タキちゃんの文章で話が進むが
タキちゃんの死後、甥によってさらに話が進み
最終章の絵の中に、感情がプラスされ、またさらに奥深い物語になった
それぞれに心残りがあるような結末であるが
それで良いんだと、少しホッとして読み終わった -
色んな意味で作品の予備知識や先入観なく読む方がいい作品だと思います。
ウィキペディア等も参照しない方がよろしいかと。
戦時中でも庶民、特に作中に登場するようなアッパーミドルの家庭では東京大空襲までは平和に暮らしていたことに驚かされました。
浮世離れして美しい時子奥様の一番の庇護者は女中のタキさんだったのだろうな、と思います。 -
老女の古き良き時代の思い出話…
戦争の足音が近づく中で庶民は意外とのんびり過ごしてたのか、と読み進めていくと、
あらあらビックリのミステリー⁉️ -
昭和初期の女中「タキ」の話。その時代の裕福層の暮らしの描写が面白かった。戦争と言ったら戦ってる現地の描写が多いものだけど、本土ではどのように見えているかと「タキ」の目を通して描写してあったので違った画角で楽しめた。
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たぶん2度目。
戦前の東京の生活を女中の目で語る内容。太平洋戦争開戦後も東京大空襲までは、普通の生活が続いていたことに少々驚く。
戦前の東京は活況で、現在のバブルと同じくらい浮足立った世の中であったことも興味深い。