企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書) [Kindle]

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  • 角川アスキー総合研究所
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  • ちきりんさんのブログで知って購入した一冊。いまや政府よりも多額の現金を保有する帝国企業が、いかにビジネスを通じ世界を支配しているかを具体例を通じながら解説している。が、内容は少し煽り過ぎと感じる部分もあった。後半の主張は3割減で読んだ方が良いと思います。

  • 日本人ながらアップル社を内側から見てきた松井博氏が、アップル、グーグル、マクドナルド、エクソンモービルなどの巨大企業を分析し、一人勝ちする仕組みを作って帝国化し、利益を独占するという企業の実像が書かれています。
    帝国化した企業の中から除いた人が思想的に中立に見た内容がかかれておりますので、グローバル企業に関する実情が良く書かれております。
    最終的にこの本に書いてあることは、米国株とかやる人には参考になるでしょうし、民間企業でも役立つことがありそうな印象を受けました。

  • Apple、McDonald's、Exxon Mobil、Google等の私設帝国が、世界に与えている影響を色んな角度から調査・分析している。IT分野では、Apple、Google、Amazon、Facebookにオセロの四隅を押えられているようなもの。本書ではそのITだけでなく、食品、エネルギー分野等も取り上げており、国家をも凌駕する新しい帝国でどう生きるか、広く考えるキッカケになるのでは。

  •  グローバル経済の進展によって「企業」が「国家」にとってかわるだろう、と私は以前から考えていたが、この本はまさにそれが現実化しつつあることを示したものであり、その点では我が意を得たりというのが第一印象だ。

     しかし、そのような世界がどんなものであるかについては非常に恐ろしい気持ちにさせられた。正直、それは輝かしい未来ではない。封建制から民主主義へと移行した世界は、再び身分や階級のある世界になってしまうのだろうか。その階級が世襲ではないことを良しとすべきだろうか。

     著者はアップルで働いた技術者であり、実業家ではあるが経済学者ではない。だからこそ、未来予想に容赦がない。人々が激しい格差にさらされるであろう新しい秩序の世界で支配する側になりたければ、頑張って技術や英語を勉強しなさいと言う。ある意味、福沢諭吉が「学問のすすめ」で説いたこととそう変わらない。

     おだやかな語り口で読者を脅迫するような本だ。

  • アップル、グーグル、マクドナルド、エクソンモービルを引き合いに私設帝国の仕組みと所業を記した一冊

    ビジネスの在り方を変える→顧客を餌付けする強力な仕組み→業界の頂点に君臨し巨大な影響力を持つ→囲い込まれる下請けと顧客。そして、みんな逃れられなくなる。

  • 企業が「帝国化」する
    松井博

    Apple本社に勤務していた経験がある著者がAppleをはじめ、Google、モンスーン、Amazonといった大企業がどのような仕組みで運営され、そして、私たちの生活にどのように影響を及ぼしているのかを多くの統計を利用して解析している本である。食品関連の帝国に関しては堤未果氏の「貧困大国アメリカ」と重複する点が複数ある。政府よりも力をもつようになった帝国はありとあらゆる手を駆使することによって消費者を飼いならしていく。一部の人が巨万の富を手にし、大多数の人が低賃金をあえいでいく「勝者総取り」時代を生き抜くためには帝国側につけというのが著者の意見であろう

    【一章】 アップルはどうやって帝国化したのか
    私設帝国(=巨大企業)は以下の三つの条件を満たす
    ①ビジネスのあり方をかえてしまう
    Apple:CDを媒体として音楽を販売していた既存のシステムを、itunesストアのよって変えてしまった
    IKEA:家具を自分で持ちかえって組み立てるという形を定着させることによって、コスト削減に成功

    ②顧客を「餌付け」する強力な仕組みを持つ
    →Google:検索システムは一度利用してしまえば、依存してしまうほどのスピードと信頼性
    →スマートフォン

    ③業界の食物連鎖の頂点に君臨し、巨大な影響力をもつ
    業界が特定の企業に依存し、その一挙一等足に振り回される
    →参照:p29 表1

    【第二章】帝国の仕組み
    私設帝国の共通する5つの特徴
    ①得意分野への集中
    ソニーやパナソニックなどのように得意分野がはっきりしない企業とは異なり、帝国には脇目もふれず自分たちの得意な分野で勝負をする
    ②小さな本社機能
    ③世界中から「仕組みが創れる」人材の確保
    ④本社で仕組みを創り、それを世界中に展開
    ⑤最適な土地で最適な業務を遂行
    【第三章】帝国で働く人々
    ・人材のグルーバル化
    企業が自らを特定の国家に属する組織だと思っていない
    ・ 世界中から「仕組みを創れる」人材を確保
    新製品、流通、製造工程などをデザインできる人材を確保
    →要求される能力
    ・ 仕事好きであること
    大半の本社従業員はよく働き、何年もかけて専門性を高めてきた「努力する凡人」
    ・ 高学歴は当たり前
    ・ 英語力
    ・ 高い専門性
    ・ あらゆるレベルでの専門性
    いままでにないビジネスモデルをつくる
    ・ ローカルな視点
    地域や文化にadjustした価格設定やデザインが世界で通用するサービスを作り出す
    ・ 多文化を受け入れる柔軟性
    ・ コミュニケーション能力

    【第五章】個人情報について
    ・ Facebook上の個人情報は、個人に許可とることなく、他人に譲渡されていた。こうした所有権に関する疑問はGoogleにも当てはまる



    【第十章】ではどうすればいいのか
    ・ 創造性を養う
    「帝国」を築いていった人たちは、さまざまな経験をつみ、常識にとらわれない新しいものの見方、考え方といったものをつかみ、そこから湧き出てくるイメージやアイデアを形にしてきた
    →創造性を養うには?
    ・古典に触れる
    時代の荒波を生き抜いてきた文学や芸術は人間の魂に訴えかける何かをもっている
    ・専門的な技能を身につける
    ・外国語を習得する
    ・就職後も勉強をし続ける
    ・自分を高めてくれる環境に身を置く
    ・新興国に二年ほど住んでみる

  • 国家の枠を超え、世界を市場として君臨する帝国化した巨大企業たち。彼らの行動原理は効率化と利益の最大化である。そして少数のこれらの企業が、利益を総取りする傾向が強まっている。その利益の規模は国家財政をも超え、もはや国家よりも帝国企業が影響力を持つ時代に入っている。

    アップルやグーグルといったIT企業には、個人の情報をすべて把握されるという危険性があり、マクドナルドでは食材の安全性への懸念がある。また、これら帝国企業で仕組みを作る側にいて高額な報酬を得る社員はほんの一握りであり、他は単純作業員として劣悪な労働環境に置かれることも多い。さらに今後は、いっそうの進化の進むロボット技術により、単純作業には人間そのものが必要なくなりつつある。

    では、我々はどうしたらいいのか。著者は、これまでの世代の人間には理解できないくらいの厳しい競争社会が到来することを現実として認めた上で、自分が仕事を得られる分野をしっかりと見極め、他の労働者やロボットには負けない自分なりの競争力を地道に磨いていくことしかないのではないかという。まったく同感ではあるが、これは実際には本当に厳しい生き方を強いることになろう。日本人としては、まずは過去の栄光はひとまず忘れ、厳しいグローバル競争の現実を直視し、目を瞑って内向きに逃げることなく、世界の人々との競争の中で自分をどう高めるかを考えるということだろう。

    残念ながら、こういう生き方を皆ができるわけはなく、日本の中においても格差が拡大していくことは避けられないのではないか。自分の子供たちの将来も考えると、厳しい現実に少々暗澹たる気持ちにはなる。

  • 労働人口の2極化(労働層と支配層)、価格や良質サービスをテコに肯定へと取り込まれるユーザの姿が、帝国主義時代の風景と重なる。過去と異なるのは、「利用する」というスタンスが選択できること。距離感が大切だ。

  • ちきりんさんのおすすめで読み始めました。


    大企業(グーグル、アップル、マクドナルド、エクソン等)が国籍を超えて(多国籍企業化)、国家のシステムの及ばないところまで発展していくその仕組みとそれが及ぼす影響などを記した本。

    今までもこういう本を読んできたけど、面白くてあっというまに読めてしまいました。


    利益だけを追求する企業の姿勢に背筋が凍りました。
    だって自分が食べているものは「食べ物」じゃないかもしれないんだもん。
    個人情報だって自分の知らないところでどう扱われてるかなんてわかったもんじゃない。

    勿論、今のこの社会でそういったことから逃げるのはほぼ不可能なわけで、それと「いかにうまく付き合っていくのか」というのもこの本には書いてありました。

    まぁ、ようは自分で考えろってことなのだけどww


    あとはそうした社会では「仕組みを作る側」と「仕組みの中で動く側」っていうのが語られています。
    私は完全に公社なのだけど、「どうしたら前者になれるか、その資質?」みたいのも言及されています。

    こういう本の中で書いてあることは大体同じで、
    創造性
    専門性
    (語学)
    ですね。


    完全にベタな視点だけど、自分も気づいた時点で行動に移さなければいけないなーと思いました。


    とにかく、今の社会のシステムを知るうえで読んでみる価値あり!だと思います!

  • 『アップル帝国の正体』というなんだかアンパンマンに出てきそうなタイトルですが、その実態は一度取引すると骨の髄まで吸い取られそうな関係が続くというお話の本を読みました。同じ”帝国”つながりで本書を選んで読んでみたらやっぱり同様の内容。ただし、本書の著者はかつてアップルで働いていて、そこからこのような大企業のやり方を学んだ上で、今後の世界の流れを読み、搾取されないようにするには我々自身も学び、回避する能力をつけなければならないというところまで話を広げています。

    アップル、マクド、エクソンモービルなど、名だたる大企業で金でなんでも解決していそうな企業の考えていることは「仕組みを作って、従わせる」ということで共通していると説き、日本もやがて巨大企業が誕生して、いまアップルで起こっていることが押し寄せてくるだろうというくだりは、まるで映画「Back to the future」の、スポーツ年鑑で大稼ぎしたビルが世界を牛耳っているシーンを思い出しました(例えが古いか?)

    アップルの上級社員の給料を時給に直すと4000ドル以上、かたや、iPod組立工場の従業員は2ドルに満たないという現実をどう思うでしょうか?

    これらの巨大企業は政権よりも資金力を持ち、影響を与えています。たとえばOー157で子どもを亡くしたアメリカ人の母親は食品衛生の向上を促す法案を作ってもらう運動を起こし、実際に法案ができます。しかし、大手食品メーカーのよこやりにより成立はされませんでした。アメリカでのこの感染者は交通事故死亡者よりも多いといわれ、原因は糞尿まみれの環境に長くて半年以上も飼育されている肉牛飼育施設だそうで、大雨などで糞尿が流れ出し、畑に流れ込んで悪さをするのだとか。日本では考えられない環境はもちろん、それを止めさせる法律が辞めさせられるという状況。

    食品安全基準が厳しい日本も、TPPに参加するとこの基準はおそらく海外では満たせないため、低いレベルに合わせざるを得なくなるなど、”帝国”の都合のいいようになっていくと言われていますが、とにかく日本人はもっと勉強しないと危ないよーと警鐘を鳴らしています。

    偶然ではありますが、今まで紹介したことのある『食の終焉』『ファストフードが世界を食いつくす』『アップル帝国の正体』などで出てくる恐ろしい話をまとめて本書で知ることができます。まさに帝国、やりたい放題だ・・・

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著者プロフィール

米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。iPodやマッキントッシュなどの品質保証部のシニアマネジャーとして7年間勤務。2009年に同社退職。カリフォルニア州にて保育園を開業。15年フィリピン・セブ島にて Brighture English Academy を創設。

「2019年 『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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