千年の愉楽 (河出文庫) [Kindle]

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著者 : 中上健次
  • 河出書房新社 (1992年10月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (203ページ)

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千年の愉楽 (河出文庫)の感想・レビュー・書評

  • 路地=被差別部落の人々の生き様を、文盲の産婆オリュウノオバの視点からは捉える短編集。
    「岬」「枯木灘」と読んでこれで3冊目だが、中上健次の凄さがだんだんとわかってきたように思う。
    日本の近現代文学において伝統的であった私小説の形式とは一線を画していて、どちらかといえば海外文学に近い。中上健次といえばフォークナーを無視することはできないが(正直なところそちらは未読なのでよくわからない)、今作についてはそれにくわえてガルシア・マルケス的な要素も色濃く、3話目くらいからはマジック・リアリズムのような展開を見せる。そういう個人の内面的ありようをひたすら掘り下げていくことを志向する私小説と異なる方向性。
    その一方で、日本的でローカルな描写が執拗になされる。日本の近現代の歩みの中で重要な位置を占めながらしばしばタブー視されてきた路地というものをひとつの舞台設定として選択し、そしてそれを生き生きとそしてどこまでも陰鬱に活写している。そして、そこで伏流水のように脈々と流れる血の因縁と束縛。極めて日本的な世界観が描写される。
    海外文学的であり純日本的でもあるという両者が高い水準で統合されていること、これは他の作品とは決定的に異なる点だと思う。

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