パンズ・ラビリンス [Blu-ray]

監督 : ギレルモ・デル・トロ 
出演 : イバナ・バケロ  セルジ・ロペス  マリベル・ベルドゥ  ダグ・ジョーンズ 
  • アミューズソフトエンタテインメント
3.49
  • (32)
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  • (76)
  • (18)
  • (6)
本棚登録 : 502
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4527427810709

感想・レビュー・書評

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  • 友人に勧められたのでとりあえず観ることにした。ギレルモ・デル・トロ監督の作品で、彼は『パシフィック・リム』や第90回のアカデミー賞にノミネートされた『シェイプ・オブ・ウォーター』を手掛けている。
    『シェイプ・オブ・ウォーター』にも人魚(?)が出てくるのだが、この監督は怪物・モンスター・クリーチャーを手掛けることに関しては群を抜いていることで有名だ。
    パッケージの表紙だけ見れば年端もいかぬ少女が黄金に輝く場所で笑みを浮かべているので、とても明るいファンタジーっぽい作品なのかな、と思って手に取ったら注意が必要である。
    今作は狂気と幻想と残酷な現実が待ち構えているダーク・ファンタジーだ。


    舞台は独裁政権によって支配されていた時代のスペイン。
    少女オフェリアは母の再婚相手であるビダル大尉の元へ赴くことになった。父を内戦で亡くし、臨月である母は大尉の子を身ごもっている。任地に呼びだれたオフェリアは、妖精に誘われるまま入り込んだ薄暗い森で秘密の場所を見つけ、森の神〈パン〉に出会う。そこでパンから地下の王国の王女であり、オフェリアは3つの試練を与えられるのだった。

    内戦中という悲壮な状況の中で、冒頭においても母親から皮肉ともとれる言葉を言われてしまうほどオフェリアは本を持ち歩く”空想的な少女”だ。
    彼女に待ち受けるのは残酷な現実と奇妙な幻想の世界だ。それが交互に現れ、対照的に描かれていく。

    現実世界では、母親の再婚相手である大尉が恐ろしく君臨している。母親自身も大尉ばかりを気にかけ、オフェリアのことは気にかけてもくれない。そんな中で唯一の彼女の味方はメルセデスという女性だった。
    実は彼女はゲリラと呼ばれる独裁政権に反発する組織の内通者で、前線で大尉率いる軍に対抗するレジスタンスの中に弟がいる。オフェリアの母を診てくれていた医師もメルセデスと通じており、彼女はたびたび食糧や嗜好品、薬などを軍から盗み出し彼らに分け与えていたのだった。「私は卑怯な臆病者よ」と自嘲しながらも、彼女は強かに現実と立ち向かっている。どうやら大尉たちが任地で訪れている屋敷にいる地元の人間はみな、ゲリラたちの味方のようである。それもそのはず、彼らからしたら強硬的に土地を占領し圧政を強いているのだから。

    オフェリアはというと、パンや妖精に導かれるまま、お産に苦しむ母にパンの与えてくれた魔法のまじないをしてやわらげていたりと、四苦八苦しながら試練に立ち向かっていた。
    試練ひとつひとつに意味があり、魔法という”空想”ですらも現実に干渉しているように見せかけている。けれど、最後のシーンでビダル大尉が見つけたのは、誰もいない場所に話しかけているオフェリアの姿だった。

    試練は何を意味するのか、なぜ現実に母を薬を用いずに癒すことができたのか、パンや地下王国は存在しなかったのか、いろいろと疑問が残る内容にはなっているからこそ、視聴した人間それぞれに解釈を与えてくれる余地がある作品だ。

    最後にはオフェリアは殺されてしまうのだが、私個人としてはバッドエンドのように感じなかった。彼女自身が辛い現実と向き合うことはできなかったが、それでも空想で作り出していた物語であろうと、彼女自身が最後には嬉しそうな顔をしていたことが印象に残っているからだ。
    それでも、現実としてはメルセデスが子守歌の鼻歌の中で息を引き取る。彼女がああなってしまうことはまるで必然的な成り行きで、どこか避けきれないものでもあるかのように。

    メルセデスの言いつけ通り、助けが来るのを待っていれば、空想に惑わされず、現実を見据えて母を慈しみ弟を守りながら生きていくこともできたかもしれない。あるいはメルセデスのように大尉に立ち向かい、ひとりで敵地で怯えながらも、逃げおおせる強かさを得ることもできたかもしれない。

    けれども彼女はあえてそれを選択しなかった。心地の良い空想に浸って、狂気のまま死んでいってしまった。その中でも、冒頭ではつわりに苦しむ母に煩わしげだった彼女が胎内にいる弟に無謀な願いともとれる「どうかママを苦しめないで」と願ったことに偽りはないだろう。幸福に満たされる地下の王国に行く切符を手放すことになろうともパンに差し出さねばならなかった弟を引き渡さなかったことも、彼女なりの現実との戦い方だったのではないだろうか。それも無意味な抵抗として、無常な一発の銃弾に倒れることになってしまったが。
    だとするとビダル大尉はどうだろう。ただウサギ狩りをしていた親子を殺し、生き残ったゲリラの拷問を進んで行い、それでも「勇敢なる死」に焦がれていた彼は、ある意味オフェリアと同義に現実と向き合えていなかったのではないだろうか。それは最後にメルセデスに「この子にはあなたのことを明かさない」と明確に断られてしまうことに現れている。
    空想を打ち砕かれて死んでしまうよりは、自分の頭の中だけでも夢を見ながら死んでしまえるほうが、まだ幸せに思えてならない。

  • 戦争中の少女の話。
    母親とともに、新しい父親となる大尉の元へ行き、残酷な現実と向き合わねばならない少女は、お伽話に夢中になる。

    グロテスクな現実と、少女の夢見るお伽話の世界の対比が、現実のキツさをアピールしてくる。
    血がブシャーとかはあまりないけど、痛々しいグロが多いので苦手な方は注意。
    あと女性にはきついシーンがあるかも…

    最後は少女にとってはハッピーだったのかもしれないが、視聴者にとってはなんとも言えない気分にさせられる。
    私は自分の抱いた感情が少女に対する同情なのか、世界観に対する恐怖なのか、少女が気持ち的に救われたことに対する安堵なのかわからないが、エンドロールでしゃくりあげて泣いてしまった。
    しゃくりあげるまでした作品は滅多にない笑

    レビューを見ていると、なぜぶどうを食べたのかと感じている方が多いようだが、あの戦時中にぶどうという甘くて美味しい食べ物は喉から手が出るほど食べたいものであるだろうし、あんなにもたくさんの食べ物があったら魔がさしそう…あくまで少女は子供なので
    その過ちを受け止めきれない余裕のなさも子供ならではかなーと思う
    でもあの手に目がある怪物は怖い…

  • グロテスクだけれど美しく、あるいは悲しいけれど美しい。ファンタジーといえばファンタジーだけれど、現実の世界が交差するとき、ファンタジーの世界に新たな扉が開かれる。その意味で私としては、本作は単純にファンタジーとも言いきれない気がした。オフェリアにとって王国の世界は過酷な生を生き抜くために必要な心の逃げ道だったように思うし、現実が過酷であるほど、その世界は豊かさを増していった。そしていつしかその境界は曖昧になる。子供特有の限りない想像力が厳しさを乗り越える力を与えたのではないか。それだけに、私はこの結末を単なるバッドエンドとはとらえられなかった。これはある意味、想像力の勝ちだ。

  • 音大の変わり者の先輩がTwitterで”あれはある意味ハッピーエンドだと思ってる”と呟いていて気になった。
    結果、私は断然ハッピーエンドだと思った。
    少女が見ていたのが妖精でも空想であっても、あの苦しい状況のまま生き続けるよりも死ぬ事で救われることがあると思う。
    ナイフで口を引き裂く様子、応急処置をしながらも牛乳を飲んで吹き出てしまう描写、銃で顔面を撃たれた際に目玉がぐりんとひっくり返る帰る姿が口裂け女のようにリアルで強い衝撃を受けた。
    監督が戦場で実際に目撃したのを忠実に再現したらしい。
    痛々しくて直視できない。
    拷問の生々しさも気持ちが悪くて吐き気がした。強いショックを受けたのでこれから先もずっとこのシーンは忘れられないと思う。

  • 少女オフェリアは優しかった仕立て屋の父親を亡くし、母が再婚したヒダル大尉のもとへ赴く。
    新しい父は独裁のシンボルのような男。
    そんなときオフェリアは妖精の化身である虫たちに導かれ、オフェリアこそ地下の王国の王女であると告げられ、オフェリアは王女に戻るための3つの試練を与えられ“パンズ・ラビリンス<牧神の迷宮>"での冒険が始まる・・・。


    ホラーと言われて観たので心の置き所を間違えたが、なんか深い話だった。
    最後オフェリアはハッピーエンドなのか否か、どちらとも取れる終わり方が鳥肌モノ。
    それはそうと、オフェリアとか、メルセデスとか、響きが気になる名前が多すぎません?(個人的な意見です)

  • シェイプオブウォーターと同じ監督
    ファンタジーなんだけど暗すぎる。
    物語の背景にメキシコの内戦がある時点で暗い
    世界観はナルニアに似てる。女の子はひたすら優しい
    私はラストは夢オチ説推す

  • ハッピーエンド派

  • 面白かったです!!!
    始まり方も、すごく引き込まれます。
    (石をはじめるシーンとか)

    オフェリアの周りで起きるファンタジーなんだけど、パンがまず怖すぎるし、ナナフシの妖精も妖精なのに怖い。さらにペールマンがもっと怖い。なのに、オフェリア禁じられていた葡萄食べちゃう!!!!まじか!!!

    と、ファンタジーなのに、ぽよよんとしておらず、見応えあります。
    あと、オフェリアのファンタジーとメルセデスたちのレジスタンスがあり、すごく面白かったです。
    悪役(義父)もすごくいい味だしてました。靴磨きしてる様も大尉らしく貫禄があります。

    ラストはハッピーエンドにもバッドエンドにもとれる絶妙な話で文句無しの映画でした。

  • 戦争とファンタジー、ラストシーンの衝撃など自分の好みが本当にたくさん詰め込まれていた。
    自分としては何度もみたくなるダークファンタジーの傑作だと思う。

  • きっと怖いんだろうなっと思って借りなかった一つ

    ファンタジーや物語に必ず怖いものがつきものだよなと実感させれた一作品。スペインの内戦中の少女の試練。彼女の夢物語だといえばそれまでだが、これはさらにその奥をいっている。物語の世界と現実の世界の融合。それをフィクションとして語るこの作品は現実とファンタジーの境をさらにあいまいにする。人間の愚かさ、過酷な試練、ファンタジーは綺麗なだけでなく、いつもそれを露わにしてくれる。

著者プロフィール

映画監督・脚本家・小説家。
1964年10月9日生まれ。メキシコ出身。
劇場長編監督デビュー『クロノス』(92)が各国の賞で高く評価され、97年の『ミミック』でハリウッド・デビューを果たした。『デビルズ・バックボーン』(01)、『ブレイド2』(02)を経て、念願だったマイク・ミニョーラの人気アメコミの映画化『ヘルボーイ』(04)を実現。映画はヒットを記録し、続編『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(08)はスタジオをユニバーサルに移して製作。その間にスペインで製作した『パンズ・ラビリンス』(06)は、アカデミー賞脚本賞にノミネートされたほか、カンヌ国際映画祭など各国で高い評価を受けて気鋭の監督として国際的に広く認知されるように。07年にはペドロ・アルモドバルらとメキシコで製作会社「チャチャチャ(Cha-Cha-Cha)」を設立。『ロード・オブ・ザ・リング』の前日談にあたる大作『ホビット』シリーズでは脚本を手掛けた。10年『パシフィック・リム』で、久々に監督に復帰。14年にはチャック・ホーガンとの共著で発表した初の小説「ストレイン」シリーズ(09年)のテレビドラマ化が実現。本作に続き、今後は『Pinocchio』『ヘルボーイ3』『パシフィック・リム2』などの話題作が予定されている。

「2016年 『ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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