パンズ・ラビリンス [Blu-ray]

監督 : ギレルモ・デル・トロ 
出演 : イバナ・バケロ  セルジ・ロペス  マリベル・ベルドゥ  ダグ・ジョーンズ 
  • アミューズソフトエンタテインメント
3.49
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  • (18)
  • (6)
本棚登録 : 502
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4527427810709

感想・レビュー・書評

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  • 異世界の王女の生まれ変わりだと言われ、王国へ戻るために過酷な試練をクリアしていくオフェリア。
    でもオフェリアにとっては現実世界の方が過酷で、どうにかして逃れようと必死で。彼女の必死な表情にこちらまで悲しくなりました。
    ラストシーンまでずっと辛いけれど、オフェリアは王国へ行けたんだ…という結末なのだと思う事にしました。救いがなさ過ぎるので。

    異世界の異形の生き物や、虫や、パン神の造形は好みでした。ファンタジーって実は容赦ない世界な気がするので…キラキラフワフワより、この世の理が通じない、生命をぶつけて生き抜く世界だという印象です。
    でもあの…目はそこなんだ!?と思いました。あの穴は鼻か。。

    時代背景が全体主義下のスペインという事で、継父である大佐は如何にもな恐怖政治だし、メルセデスさんを含むレジスタンスや彼ら側にいる医師の抑圧された状況も影を落としていました。
    メルセデスさんはオフェリアの唯一の支えだったのも悲しい。

    残酷で悲しいけど美しさも感じる世界でした。
    観終わった後にこのジャケットを見ると、ここはオフェリアが辿り着けた光まみれの王国なんだというのがわかるのでジーンとします。
    ギレルモ・デル・トロ作品はたぶん初めて鑑賞したので、他の作品も観たくなりました。

  • 私だけの世界を現実に

    幼い主人公に次々と訪れる災厄。
    父親の死から始まり、耐えられない出来事が降りかかる。
    そんな少女が救われるために考えた、自分が居るべき国。
    それが本当にあるかどうかはわからない。
    誰かから与えられた試練なのか、自分自身を肯定する国に入るために自ら定めた契約なのか。
    想像の世界に入り込むために現実にありえないことが起こる、ということは想像の世界は現実なのだろう。

    この作品の中で描かれている数々の暴力的なシーンは、ギレルモ・デル・トロ監督が実際に体験したことからインスピレーションを受けたという。
    人生で経験する殆どのことは活かすことが可能な出来事であり、どう面白くするかを考え抜いた人にしかできない表現が詰まっている。

    父が居て、母が居て、自分が求められる。たったそれだけのことが満たされないのが、この内戦時期のスペインだった。
    人はどう生きて、どう死ぬのかだけではなく、
    どう死んで、どう生きたのかを表す事もできるのだと思った

  • 友人に勧められたのでとりあえず観ることにした。ギレルモ・デル・トロ監督の作品で、彼は『パシフィック・リム』や第90回のアカデミー賞にノミネートされた『シェイプ・オブ・ウォーター』を手掛けている。
    『シェイプ・オブ・ウォーター』にも人魚(?)が出てくるのだが、この監督は怪物・モンスター・クリーチャーを手掛けることに関しては群を抜いていることで有名だ。
    パッケージの表紙だけ見れば年端もいかぬ少女が黄金に輝く場所で笑みを浮かべているので、とても明るいファンタジーっぽい作品なのかな、と思って手に取ったら注意が必要である。
    今作は狂気と幻想と残酷な現実が待ち構えているダーク・ファンタジーだ。


    舞台は独裁政権によって支配されていた時代のスペイン。
    少女オフェリアは母の再婚相手であるビダル大尉の元へ赴くことになった。父を内戦で亡くし、臨月である母は大尉の子を身ごもっている。任地に呼びだれたオフェリアは、妖精に誘われるまま入り込んだ薄暗い森で秘密の場所を見つけ、森の神〈パン〉に出会う。そこでパンから地下の王国の王女であり、オフェリアは3つの試練を与えられるのだった。

    内戦中という悲壮な状況の中で、冒頭においても母親から皮肉ともとれる言葉を言われてしまうほどオフェリアは本を持ち歩く”空想的な少女”だ。
    彼女に待ち受けるのは残酷な現実と奇妙な幻想の世界だ。それが交互に現れ、対照的に描かれていく。

    現実世界では、母親の再婚相手である大尉が恐ろしく君臨している。母親自身も大尉ばかりを気にかけ、オフェリアのことは気にかけてもくれない。そんな中で唯一の彼女の味方はメルセデスという女性だった。
    実は彼女はゲリラと呼ばれる独裁政権に反発する組織の内通者で、前線で大尉率いる軍に対抗するレジスタンスの中に弟がいる。オフェリアの母を診てくれていた医師もメルセデスと通じており、彼女はたびたび食糧や嗜好品、薬などを軍から盗み出し彼らに分け与えていたのだった。「私は卑怯な臆病者よ」と自嘲しながらも、彼女は強かに現実と立ち向かっている。どうやら大尉たちが任地で訪れている屋敷にいる地元の人間はみな、ゲリラたちの味方のようである。それもそのはず、彼らからしたら強硬的に土地を占領し圧政を強いているのだから。

    オフェリアはというと、パンや妖精に導かれるまま、お産に苦しむ母にパンの与えてくれた魔法のまじないをしてやわらげていたりと、四苦八苦しながら試練に立ち向かっていた。
    試練ひとつひとつに意味があり、魔法という”空想”ですらも現実に干渉しているように見せかけている。けれど、最後のシーンでビダル大尉が見つけたのは、誰もいない場所に話しかけているオフェリアの姿だった。

    試練は何を意味するのか、なぜ現実に母を薬を用いずに癒すことができたのか、パンや地下王国は存在しなかったのか、いろいろと疑問が残る内容にはなっているからこそ、視聴した人間それぞれに解釈を与えてくれる余地がある作品だ。

    最後にはオフェリアは殺されてしまうのだが、私個人としてはバッドエンドのように感じなかった。彼女自身が辛い現実と向き合うことはできなかったが、それでも空想で作り出していた物語であろうと、彼女自身が最後には嬉しそうな顔をしていたことが印象に残っているからだ。
    それでも、現実としてはメルセデスが子守歌の鼻歌の中で息を引き取る。彼女がああなってしまうことはまるで必然的な成り行きで、どこか避けきれないものでもあるかのように。

    メルセデスの言いつけ通り、助けが来るのを待っていれば、空想に惑わされず、現実を見据えて母を慈しみ弟を守りながら生きていくこともできたかもしれない。あるいはメルセデスのように大尉に立ち向かい、ひとりで敵地で怯えながらも、逃げおおせる強かさを得ることもできたかもしれない。

    けれども彼女はあえてそれを選択しなかった。心地の良い空想に浸って、狂気のまま死んでいってしまった。その中でも、冒頭ではつわりに苦しむ母に煩わしげだった彼女が胎内にいる弟に無謀な願いともとれる「どうかママを苦しめないで」と願ったことに偽りはないだろう。幸福に満たされる地下の王国に行く切符を手放すことになろうともパンに差し出さねばならなかった弟を引き渡さなかったことも、彼女なりの現実との戦い方だったのではないだろうか。それも無意味な抵抗として、無常な一発の銃弾に倒れることになってしまったが。
    だとするとビダル大尉はどうだろう。ただウサギ狩りをしていた親子を殺し、生き残ったゲリラの拷問を進んで行い、それでも「勇敢なる死」に焦がれていた彼は、ある意味オフェリアと同義に現実と向き合えていなかったのではないだろうか。それは最後にメルセデスに「この子にはあなたのことを明かさない」と明確に断られてしまうことに現れている。
    空想を打ち砕かれて死んでしまうよりは、自分の頭の中だけでも夢を見ながら死んでしまえるほうが、まだ幸せに思えてならない。

  • 戦争中の少女の話。
    母親とともに、新しい父親となる大尉の元へ行き、残酷な現実と向き合わねばならない少女は、お伽話に夢中になる。

    グロテスクな現実と、少女の夢見るお伽話の世界の対比が、現実のキツさをアピールしてくる。
    血がブシャーとかはあまりないけど、痛々しいグロが多いので苦手な方は注意。
    あと女性にはきついシーンがあるかも…

    最後は少女にとってはハッピーだったのかもしれないが、視聴者にとってはなんとも言えない気分にさせられる。
    私は自分の抱いた感情が少女に対する同情なのか、世界観に対する恐怖なのか、少女が気持ち的に救われたことに対する安堵なのかわからないが、エンドロールでしゃくりあげて泣いてしまった。
    しゃくりあげるまでした作品は滅多にない笑

    レビューを見ていると、なぜぶどうを食べたのかと感じている方が多いようだが、あの戦時中にぶどうという甘くて美味しい食べ物は喉から手が出るほど食べたいものであるだろうし、あんなにもたくさんの食べ物があったら魔がさしそう…あくまで少女は子供なので
    その過ちを受け止めきれない余裕のなさも子供ならではかなーと思う
    でもあの手に目がある怪物は怖い…

  • 残酷で血塗れの御伽噺でも現実に比べればずっと美しい。
    ヴィダル大尉はスペインの悪習を担う人物だったり、レジスタンスはそのスペインの悪習を断ち切ったという、希望の未来を感じさせたり…
    あと、オフェリアが地底の王国に逃避したということから、神の救済が無かったor跳ね除けたということで、キリスト教の力が弱まったという解釈もしてみたんだけど、多分深読みしすぎですね。

  • 主人公の女の子が魔法の国の王女となるために試練を、っていうファンタジーと見せかけてほとんどがゲリラ戦真っ只中のスペイン内戦。まあ子供の頃にしか信じられないファンタジーの世界、みたいなところなんだろうけどなかなかの胸糞ストーリーでした。それにしても父親であり敵役の大佐、タフガイすぎない?

  • やっぱ、想定してたように、良かった
    ただ、いいもんと悪いもん?の差がわかりやすすぎて、そこはちょっと
    という感じかな

  • グロテスクだけれど美しく、あるいは悲しいけれど美しい。ファンタジーといえばファンタジーだけれど、現実の世界が交差するとき、ファンタジーの世界に新たな扉が開かれる。その意味で私としては、本作は単純にファンタジーとも言いきれない気がした。オフェリアにとって王国の世界は過酷な生を生き抜くために必要な心の逃げ道だったように思うし、現実が過酷であるほど、その世界は豊かさを増していった。そしていつしかその境界は曖昧になる。子供特有の限りない想像力が厳しさを乗り越える力を与えたのではないか。それだけに、私はこの結末を単なるバッドエンドとはとらえられなかった。これはある意味、想像力の勝ちだ。

  • スペイン内乱後の政情不安定な時代が舞台。
    ゲリラと一触即発のフランコ将軍側の将校である新しい父親の家へ身重の母親と一緒に引っ越した少女が、森のなかに不思議な迷宮を見つけ、そこにいる「パン」という怪しげな生き物から実は少女は地底の国の王女さまで3つのミッションをクリアーすればその世界に戻れると誘う。

    最初から最後まで冷酷極まりない義父の元で少女とその母親は徹底的に不幸であり、その現実から抜け出したい少女が幻想を見ている…とも取れるし、そうではない現実であるとも取れる。

    ゲリラと現権力との対立、義父と母と娘の家族の物語、そしてファンタジー。
    これらが混沌と混じり合い、怪しげな重奏が続くカオス的な物語となっていました。
    でも、カオスの割には最後はなんだかわかったような結末になっているんだわ。

    徹底的なファンタジーってその世界のルールを覚えて、自分もその世界の住人にならなくてはならないようなところが苦手なのだけど、このお話はビジュアルからして作り物感がありありで、むしろ安心して創作であることを客観的に眺められるので良かったです。
    実はかなりの良作なのかもしれない不思議な感性の作品でした。

  • 音大の変わり者の先輩がTwitterで”あれはある意味ハッピーエンドだと思ってる”と呟いていて気になった。
    結果、私は断然ハッピーエンドだと思った。
    少女が見ていたのが妖精でも空想であっても、あの苦しい状況のまま生き続けるよりも死ぬ事で救われることがあると思う。
    ナイフで口を引き裂く様子、応急処置をしながらも牛乳を飲んで吹き出てしまう描写、銃で顔面を撃たれた際に目玉がぐりんとひっくり返る帰る姿が口裂け女のようにリアルで強い衝撃を受けた。
    監督が戦場で実際に目撃したのを忠実に再現したらしい。
    痛々しくて直視できない。
    拷問の生々しさも気持ちが悪くて吐き気がした。強いショックを受けたのでこれから先もずっとこのシーンは忘れられないと思う。

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著者プロフィール

映画監督・脚本家・小説家。
1964年10月9日生まれ。メキシコ出身。
劇場長編監督デビュー『クロノス』(92)が各国の賞で高く評価され、97年の『ミミック』でハリウッド・デビューを果たした。『デビルズ・バックボーン』(01)、『ブレイド2』(02)を経て、念願だったマイク・ミニョーラの人気アメコミの映画化『ヘルボーイ』(04)を実現。映画はヒットを記録し、続編『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(08)はスタジオをユニバーサルに移して製作。その間にスペインで製作した『パンズ・ラビリンス』(06)は、アカデミー賞脚本賞にノミネートされたほか、カンヌ国際映画祭など各国で高い評価を受けて気鋭の監督として国際的に広く認知されるように。07年にはペドロ・アルモドバルらとメキシコで製作会社「チャチャチャ(Cha-Cha-Cha)」を設立。『ロード・オブ・ザ・リング』の前日談にあたる大作『ホビット』シリーズでは脚本を手掛けた。10年『パシフィック・リム』で、久々に監督に復帰。14年にはチャック・ホーガンとの共著で発表した初の小説「ストレイン」シリーズ(09年)のテレビドラマ化が実現。本作に続き、今後は『Pinocchio』『ヘルボーイ3』『パシフィック・リム2』などの話題作が予定されている。

「2016年 『ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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