海と毒薬(新潮文庫) 海と毒薬シリーズ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 昔からそうだが、遠藤周作氏の本は読後感がスッキリしない。頭上に大きな「?」が出る。この本も同じだった。他人に流される、ということが良くも悪くもできない人間には、まったく刺さらない作家さんなのかもしれない。
    話としては、戦中、人体実験に手を染めた人々の話。普通の人たちが、普通の延長で常軌を逸した行為に手を染める。人間って流されるとどこまでも残酷になれるんだ、と言うのは簡単だが、だからこそ、感想をそこで止めてはいけないと思う。
    残酷というのは物事を善悪に分けた評価であって、事実として普通の人間は同じ人間を切り刻むことができる。だからこそ、それをしないという個人の強い意志が必要になる。人間らしさになる。
    自分の望む姿を希求できる意思こそが生きている実感だとすると、登場人物たちの意思の薄弱さ、流されやすさは、自分を生きていない証拠と言えるのかもしれない。

著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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