明日を守る。
明日が欲しい。
どんなに苦しくても、変わらない世界はイヤなんだ。
だから戦う。その覚悟はある──
人類の歴史から戦いのなくならない理由、つねに存在する最大の敵。それは人がいつになっても克服できない「無知」と「欲望」。
争いの種はすべてそこにあるのだと、プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルは“デスティニープラン”の導入実行を宣言する。
“デスティニープラン”とは、コーディネーターがこれまで培ってきた遺伝子工学のすべて、最高水準の技術をもって施行する、究極の人類救済システムのこと。
人の遺伝子には生まれながらの性格や能力が書き込まれている。ただし生まれつきの才能があっても自身や周囲の者が知らず、それを伸ばす環境、教育を与えられなければ、その能力は未開花のまま終える。デュランダルの示すプランは、遺伝子を解析することによって人の特性を知り、それに従ってその才能を活かせる「役割」を与えるというものだ。
プランが発表される前にデュランダルの目的に気づいたラクスは、キラやアスラン、カガリ、そしてアークエンジェルのクルーたちと意見を交わす。
それが本当に幸福な世界なのか、と。
誰もが幸福に暮らしたい。そのためには戦うしかないのだと、人は戦ってしまう。
けれども議長の言う戦いのない世界とは、生まれついての遺伝子によって人の「役割」か決められた世界のこと。
たしかにそんな世界であれば、誰もが本当は知らない自分自身や、未来の不安から解放されて、悩み苦しむことなく生きられるのかもしれない。
「──自分に決められた、運命のぶんだけね……」
そう、人が決められた道を歩むことを強いられるということは、夢や望み、希望を失うことになるのではないだろうか。
夢を抱いたところで、それは叶わない。望みを持ったところで、無駄なこと。そう知りながら人は生きることになるのだから。
人は生まれてから死ぬまで一本のまっすぐなレールの上で、与えられた「役割」を果たしながら生きることしか許されない。そぐわないものは淘汰、矯正、管理する世界では、「役割」を果たす道から外れるなんて許されないこと。
アスランはデュランダルに「戦士」の役割を与えられたものの、「敵」と戦うことに疑問を抱いたことから、役に立たないとあっさりと切り捨てられる。
またデュランダルはキラを不幸だという。彼は最高の「戦士」だというのに、それを彼自身が知らず、知らぬがゆえにそう育たず、そう生きず、「役割」を全うできなかったからだと。
けれどもアスランもキラも、自分の一生を誰かのために「戦士」としての「役割」を果たすために生まれてきたわけじゃない。
ただシンは。シンはデュランダルの心地よい言葉の罠から抜け出せず、幸福な世界を実現するために「戦士」としての「役割」を全うする。
戦いのない世界。それはみんなが夢見る世界であるけれども、でも議長の示す世界では人として生きられない。
戦って戦って、戦って。
殺しあい、憎しみあい、自分たちと異なる者たちを焼き尽くして。
そうやって、人はもう二度と戦争はしないと、こんな世界にはしないと、そう誓うのに。
人は忘れる。そして繰り返す。
再び同じ理由で、そして戦わせることでより多くの、より豊かな利益を得るために。
そんな欲にまみれた混迷の闇へと逆戻りする、そんな世界を誰も選ばない。
そう告げるデュランダルにキラは反論する。
「でも、ぼくたちは、そうならない道を選ぶこともできるんだ。それが許される世界なら」
いつかは、やがていつかはと願いながら、でもまた裏切られ、そうやってこれからも戦いは起きるのかもしれない。
けれども人は、いつかは分かりあえる日がくるかもしれないと、望みや希望、夢を抱くことだってできるのだ。それはもしかしたら明日かもしれない。だから明日を守るんだ。人とは欲望に負けてしまう、無知で愚かな存在かもしれない。けれども未来が人に残されているのなら、明日を夢見ることが許される世界なら、きっと変わっていける。
「だから明日が欲しいんだ。どんなに苦しくても。変わらない世界はイヤなんだ!」
『ガンダムSEED DESTINY』は、ザフトのシン、アークエンジェル(オーブ)のキラ、オーブからザフトへ、そしてアークエンジェル(オーブ)へと居場所を変えていったアスランの3人の視点から描かれている。それぞれの立場から見える景色も全く違うから、いろんなことを3方向から考えることができたのはよかった。
キラは全然ぶれなくて、ちょっとした違和感にも目を背けずに、おかしいことはおかしいと貫きとおしたね。
アスランはぶれちゃった。それは自分もカガリのために何かをしたい、戦争を止めたいという気持ちが先走ったからなんだけど、議長の正しく聞こえる言葉に潜んだちょっとした違和感に目を瞑ってしまった。その結果、大切なものを失くしたと思ったことによってやっと気づくのね、議長はおかしいと。
あのね、やっぱりアスランはキラの横がしっくりくるよ。一番強くてかっこよくいられるよ。
シンはちょっと難しかったな。オーブに、世界に、アスランに、「敵」に怒ってばかりで、自分中心の世界から外に出ようとしなかった。気にくわないことからは耳をふさぎ、自分の都合のいい、心地よい言葉だけを信じて。
自分の過ちから目をそむけて、自分は悪くないと、他者が悪いと、だから悪いやつはみんな敵だと。
言葉ってなかなか届かないよね。届かないまま最悪の一歩手前までいっちゃった。でもアスランは諦めなかったよね。
“メサイア”が崩壊したあと、“ゴンドワナ”から照明弾が打ち上げられ、ザフト、オーブ、すべての艦から次々と帰艦信号が上がった漆黒の宙。キラキラした宝石のように光る帰艦信号が本当に綺麗だったね。
帰れる場所があること。それは明日があるってこと。
シン、最後の最後に気づけてよかったね。
気づくことは辛いことでもあるのだけれど。
それでも明日を撃たなくてよかったね。
テレビ放送当時は、なんだかモヤモヤとしたまま最終回までいっちゃった。
遺伝子で決められた「役割」によって、夢や希望、欲望などを持たずに定められた分の人生を歩むことが“デスティニープラン”。
それに対してキラやアスランたちは、どんなに苦しくても描く夢や望む未来のために自由に生きていくことを選ぶ。
ストーリーは、「人が世界のために生きる」というデュランダルの進める道と、「未来を創るのは、運命じゃない」と戦う道を選ぶキラたちの対峙が一番描きたかったことなんだろうなと思う。
だけど、とにかくテレビ放送時は、“デスティニープラン”が明示されたのが、残りほんの2,3話?となってからだったのでプランに対してのキラとデュランダルの主張か伝わりにくかった。とにかく駆け足気味のエンディングで、レイの最後の思わぬ行為に対しての心境の変化とか、“レクイエム”の吹き上がる光を見つめるシンの心境とか、もうひとつ掴みかねる中途半端な感じが残念だった。
それにしても、デュランダルの言うことは、普通に聞いていると正しく聞こえる。だから人々は連合軍が敵だ、軍需産業複合体、死の商人“ロゴス”が敵だ、オーブが、アークエンジェルが敵だと彼が定める敵に次々と憎悪を募らす。
だけど……、それがなんだかモヤモヤした。
これがマニュピレーションというものかもしれないと気づいたときにはゾッとした。
とはいえ、嬉しいことにその最終回の1話を「HDリマスター版」では2話に構成しなおされ、かなりそのあたりのことも分かりやすく作り直されていた。他の回もなんだけど新規作画が追加される(ちょっと過剰な演出もあったけど…)などして、セリフに込めたキャラの心情も理解しやすくなったし、以前よりもしっくりくる部分もあった。
とくに最終回に「スペシャルエディション」からエピソードか追加されていたのは、とてもよかった。テレビで再放送されてるときはどちらの版かは分からないのだけど、HDリマスター版のほうが断然オススメ。
最終話に追加されたなかに、オーブの慰霊碑の前でキラとシンが出会うシーンがあるんだけど、ここはね、涙が出ちゃった。やっと本当のシンに会えたよ。
あとこのシーンでは、キラとラクスはラブラブだったし、シンとルナマリアは友だちカップルっぽく横に並んでたんだけど、メイリンはアスランの後ろを歩いていたからね、これは恋人同士ではないなと確信 笑
メイリンは好きだけど、アスランはやっぱりカガリじゃなきゃ。これは譲れないなぁ、私が。
それと追加されたシーンでいちばんドキドキしたのはキラ!
プラント最高評議会の招聘を受けてプラントに戻ったラクスの元へアスランやシンたちと向かったとき、キラはザフトの白服を着てるんだよー!
ラクスの白の騎士になったんだね。
アスランはオーブの制服を着てたから、それも嬉しかった。カガリとともに同じ道を進むんだね。
あ、メイリンはザフトの制服だったし、やっぱりアスランとは何もないと確信する 笑
20周年には『ガンダムSEED』のようにBlu-ray BOXをぜひーー!
コメントありがとうございます。とっても嬉しいです!
そうか、そうなんですよね、管理社会はデ...
コメントありがとうございます。とっても嬉しいです!
そうか、そうなんですよね、管理社会はディストピアなんだと分かってるつもりなんだけれど、でもこうやって戦いが続くと人々は疲れて魅惑的になっていくんでしょうね。
その戦いも、定める「敵」も、デュランダルが一見正しく聞こえる言葉で巧みに操作し、利用してた…となると、恐ろしいです。
私の(笑)アスランとカガリが辛い目に合う「DESTINY」は苦手だったのですけど、でも今回何回か観てるうちに、好きになってきました。
BRICOLAGEさんはHDリマスター版をご覧になられたとのこと、今はそっちが主流なのかな、それはよかったです 笑。ほんとにね、当時の最終話は「えっ、ここで!?」と思いましたもん。
慰霊碑のシーンのアスラン。
BRICOLAGEさんのツッコミ、笑ってしまいました。
ほんとにねぇ、なんでかなぁ、なんでメイリンとの組み合わせなんだよ~と、もうジリジリしちゃいましたよ。
でも二人の歩くポジションで、うん、ここには恋愛感情はないっと思い込もうとしてました。
メイリンはアスランとカガリを見てるから、アスランへの気持ちは憧れだけで心に留めておくのかなぁと思いました。
そうそう、アスランはオーブの制服なんです。私は階級章までしっかりチェックしましたよ。どんどん上がってる 笑。
今まで不遇でしたからね。セイラン家め!(←八つ当たり)
そういえばミリアリアたちも階級章変わってました。どんどん上がってる 笑
シン。シン……、ちょっと可哀想でしたね。最初はほんとカガリを苛めるイヤな奴って思うばかりだったのですが…笑
なんだろ、シンって「何も分かってないクセに!」とか「何なんだよ、あんたはー!」とか、よく怒ってたけれど、その言葉を自分にも当てはめて考えることができたらよかったんじゃないかな。
あの帰艦信号のシーン、綺麗でしたよね。あの光を見てると「帰っておいで」と言われてるようで、私まで切なくてウルウルしてきました。
素敵なシーンだなと思いました☆彡
またまた熱くなっていっぱい書いてしまいました。朝早くから失礼いたしました(*>∀<*)ノ
登場人物たちの階級章までチェックしておられるとは!
こういう小ネタ(?)に気づけると、ちょっと嬉しいです...
登場人物たちの階級章までチェックしておられるとは!
こういう小ネタ(?)に気づけると、ちょっと嬉しいですよね。
今度DESTINYを観るときには、私も絶対に見逃さないよう注意して観ます。
そうですよね。
シンは確かに可哀そうでしたけど、色々なことに怒っているだけではなく、状況の中にいる自分のことを含めて客観視できないと、たとえどれだけ目覚ましい戦果を挙げて活躍しているように見えても、彼の「成長物語」とはなりませんよね。
最後には彼も気付くことができて、本当に良かったなと思います。
熱いレビュー、楽しませて頂きました!
それでは、失礼いたします。
そうそう、小ネタに気づけるとウフフとなります。
次は小説の感想を書こうと思うのですが、小説はキャラの...
そうそう、小ネタに気づけるとウフフとなります。
次は小説の感想を書こうと思うのですが、小説はキャラの感情をとても丁寧に追ってるので、ある意味小ネタの宝庫なんですよ~
やっと明日、BRICOLAGEさんに教えていただいた『水星の魔女』の元ネタ『テンペスト』が届きそうです。
楽しみです。それまでにキャラの名前や関係図などなど復習しとかなきゃです。
ではでは、お返事ありがとうございました(*>∀<*)ノ