これが今回のテーマというか味噌なんだろうけど、誰かが誰かになりすましていて、キャラクターがみんなそれに振り回されている。そしてそのキャラクターたちがみんなそこそこ賢いので、みんなそれっぽい想像や推理をして語っていく。が、当然それが正しいケースは少ないので、そういうのはあんまり読まなくていいんじゃないかなと思ってついついななめ読みになってしまうのだった。青木くんのセリフは結構そういう扱いになりがちで申し訳無さがある。
そして文庫本の一巻と、二巻の半分くらいまではそういう展開が続きに続くのでもうわけがわからない。一巻を読み終わった後、あまりにわかっていなかったのでざっと読み直してそれぞれのキャラクターの動きをまとめる羽目になった。特に江藤!お前だよ!行動原理がよくわからんのになぜかキーアイテムを持ってたりしやがってからに。
それにしても大鷹!出てくる度にイライラする!明らかに操られているわけだが、本当に扱いきれているのか?と思ってたら事態がどんどん大鷹的に不穏な感じになってきてとうとう殺されてしまう…!
と思いきや実は別人… だったけどやっぱり死んでた、というなぜか一回フェイントをかましてからだった。最後までバカのまま死んでしまった。哀れではあるし、過去作からの続投人物が死ぬのは結構珍しいので、案外死なないのかと思ってたが現実は非情である。
しかし、毎章の始まりが「殺されてしまいました」な感じで始まって、読者も麻痺してくる。あー、また死んだのねはいはい、ってなる。うーむ、常識を壊されていく。
ただ、今作は結構主要に動いている人たちがしっかり死んでいくのがこれまでとちょっと違ったかもしれない。ただ、死んでない人も含め、赤木以外はおかしい人ばかりだったな… とはいえ全員が別に人を殺したくて仕方がない人たちというわけではもちろんなく、それまでは普通に生きていた。ただ、過去作で京極堂が言ってた気がする、逢魔が刻が訪れた、というかあの雫のせいで逢魔が刻の方からやってきた感じ。
でもなー、これまでと違って全ての諸悪の根源と言える人物がこれほどの殺人を全然意図しておらず(ちょっとはしていたところもあるのが困るわけだが)、むしろ大鷹には困らされていたというのがわかるのがちょっと笑ってしまうというか、悲しい。
ってか、全部澤井がクソすぎたせいじゃねえか!最初は完全に不幸にも殺されてしまった無害なサラリーマンという雰囲気を醸し出していたのに。いろんな人が自分は邪悪なのではないかと悩んでいたのに、おそらく一度もそんなことを悩んだこともなさそう、というかほぼ唯一本編でモノローグがなかった澤井が一番邪悪で、全ての原因だったというのがなんかこう、切ないなぁ。
今作、読んだことがないと思っていたが、なぜかエンディング部分だけ既視感があった。