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感想・レビュー・書評
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「始発まで」
小説家の「不幸」と「幸福」
基本は「不幸」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
町田康「湖畔」
絲山秋子「始発まで」 -
豪華。島田雅彦が面白かった。他の作品読んでみよう。
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「新潮」が1300号目を刊行したなんてことはどうでもいいけれど、
執筆陣の多様さと、およそ30枚くらいの枚数制限でいかに冒険しているかが見物。わりと若い世代の作家の作品には鮮度がある。しかし老人も負けていない。
とくに、岡田利規の作中に出て来るラップに爆笑したためいちばん印象深い。
今のところもっともつまらなかったのが加賀乙彦の「熊」。桐野夏生のも、2ページ読んで飛ばした。高村薫も。
津島佑子の「天窓」を読んで、この人は「食べる」ということをひとつの主題にしているなと思った。といっても、たまたま前に読んだことのある小説が蝉を食べるという内容だったから。今回は雉か、と思った。
池澤夏樹と島田雅彦はストレートすぎてまごついた。阿部和重は油断ならない不穏な緊張感がよかった、たとえ家族どうしでさえ。
瀬戸内寂聴の「百合」はレズビアンを描いた短編だが、時々今風の女性の口調が真似てあって、その言葉をあの老人作家が書いたのだと思うと、じわじわと感動が押し寄せた。
西村賢太の、「歪んだ忌日」。これが初西村。この人の古風な文体そのものが快楽だと思った。どんなしょうもない内容だって、この人の文体があればいくらか気品が漂う。
辻原登「たそがれ」。ストーリーの面白くなさを、細部が補っている。きわどいところを行っている。というのも、細部が過剰すぎて、ストーリーが破綻しかかりそうになっている。この危うさが作者の持ち味なのだろうな。
笙野頼子の短編は、鹿島田真希の短編は、これは半分詩で、拾い読みすれば面白いが、通して読む気にはなれず。後者はもっと省略して詩にしたほうがいいと思った。前者は、これ長編詩、と言い切ったほうがよい。
古井由吉の「水こほる聲」はすごすぎて意識が現実からふわりと浮き上がった。ライトモチーフのひとつが「音」と「静けさ」だが、作者の身体感覚に改めて驚かされた。この過剰な鋭さはどこから来るのか。最後に「連作6」と書かれているのを見て、これが唯一の短編でなくて6作目であることを知り、生きていてよかったとさえ思えた。
初古川日出男。好き嫌い以前に、生理的にダメ。