あの頃映画 秋刀魚の味 [DVD]

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監督 : 小津安二郎 
出演 : 笠智衆  岩下志麻  佐田啓二  岡田茉莉子  東野英治郎 
  • 松竹 (2013年7月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988105066656

あの頃映画 秋刀魚の味 [DVD]の感想・レビュー・書評

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  • 小津安二郎監督は食にこだわりがあるのか。妻に先立たれ、よくできた娘を嫁にやるのを渋っていた父親が心変わりするまでをほとんど酒場のシーンで描き切った名作。

    要素としては、戦争の気配、戦後の右肩上がりの家庭内の様子、職業婦人、妻に先立たれたら娘がおさんどんをするのが当たり前という常識と、家庭内ではそれでも女が強いという様子、注目すべき要素はいろいろあるのに、7割くらいはオッサンが酒屋で飲んでいるシーンで、もはや飲み映画なのかという域。

    この飲みシーンの多さといい(娘の嫁入りに揺れる親父の心の変化をほとんど酒場だけで描き切る意図的な視野狭窄ぶりはもはや力技の領域)、娘に嫁がれる苦さを「秋刀魚の味」と呼ぶことといい(作中には秋刀魚など微塵も出てこない)小津監督は食通というか、飲み食いにこだわりのある監督だったんだろうかと思わせる内容ですが、現代人がこの映画を見て第一に感じるのはもしかすると、当時の家庭内労働にまつわる認識の差かもしれない。

    たとえばこの映画の中に出てくる女性たちは皆、職業婦人でありながら、家事労働もすべて引き受けている。一方の男たちは、飲むか遊ぶかで、この主人公の父親も、娘を「まだ子どもだ」なんて言いながら、家に帰れば当たり前にしっかり者の娘に頼り切りで、娘の嫁入りが実際に決まるまで、一切の家事労働を自分でこなそうとはしない。それどころか、娘に頼り切りの自分や息子たちに、娘の嫁入りを機に自分で家事をさせるよう仕向けるシーンが終盤で実に印象的に組み込まれている。「子ども」と自らが呼ぶ存在に、「妻」の代わりをさせてしまっているので手放しがたいと明確に描かれているのに、主人公はかたくなに「娘はまだ子どもだ」といって、その嫁入りを先延ばし先延ばしにしているわけで、ここらへんは現代人ならば、この主人公からずるさを感じ取ってしかるべき部分。ついでにいうと、現代では家事を妻に頼り切りとはいかがなものかという風潮も根付いてきましたので、そういう意味でもけしからん男たちが存分に描かれている。小津監督がそれを意図したかどうかはともかく、結果的に時代精神をよく反映している映画になっている。

    よくよく見れば戦争経験によって作られた絆や老い、そういうものもテーマとしてしっかり描かれていて、非常に見どころの多い作品。でもそれらすべてがオッサンのおはようからおやすみまでを飲みシーン中心に描くことで淡々と語られているので、このテーマの多様さ、強烈な時代精神、にもかかわらず、非常に淡々とした作風でもある。

    現代人ならお勉強目的で見る映画になってしまいそうだけれども、一見しておく価値はある。

    ※本稿は、2016年5月に自分のTwitterにあげたものをもとに加筆修正したものです。

  • 小津安二郎監督の遺作。妻に先立たれた夫、娘を嫁に出す父親という小津が生涯を通し描いてきたテーマが、遺作である本作でも描かれる。

  • 娘を嫁に出す父のさみしさが主題の映画なのだと思う。でも言い出せなくて始めることさえできなかったみちこの恋が不憫で不憫で。だれも悪くないけど。

    みちこの着物姿、黒のカーディガンに赤いスカートの着こなしがとてもかわいかった。義姉のワンピース、留袖もかわいかった。ビジュアル的に男どもはぱっとしないけれど、女子はみんな感じがある映画だった。

  • なんかすげえいいな。加東大介がトリスバーで曲に合わせて行進するシーンとか、すげえいいや。笠智衆ってすげえいいし、佐田啓二が中井貴一に激似。「これってもしかして中井貴一のお父さん?」って思うレベル。

  • とってもよかったです。笠智衆さん、朴訥とした雰囲気が、いいですねえ。娘を思う気持ちが溢れています。岩下志麻さん、美しいです。凛とした立ち姿が素敵です。岸田今日子さん、綺麗です。戦後をまだ引きずっている時代なんだなあとも実感。

  • 映画館で観ました。ほっこりするような温かい作品。基本的に、こういう作品は好きです。

    この作品は、『晩春』と違い、周囲の人間関係など情報が多く、ストーリーが絞られてない。解説記事によると、それがより現実感を表現しているらしい、、、けど、だから何なのでしょう? 余計な情報が多くなった結果、父娘の関係、および娘そのものの描写が少なすぎのように思います。特に、娘があっさり片付きすぎかと。。。『晩春』のそれがレア過ぎて、非現実的なのかもしれませんが、そもそも映画はフィクションなのだから。一般的=現実的に近づけすぎのように思いました。

    岩下志麻が、かわいい&綺麗。でもそれ以上のインパクトがなかったように感じました。

  • Autumn Afternoon(1962)-Yasujirō Ozu

    赤をキレイに取り込んだカラー映画
    60年安保の二年後
    岩下志麻・岡田茉莉子・岸田今日子
    あとはいつものメンバー
    懐かしい人ばかりが出ている

    久し振りの映画
    男と父の喜怒哀楽と虚栄と寂しさ
    女と母の静かな格闘と哀愁

    日常を冒険することもなく
    発見の愉しさにワクワクすこともなく
    過去という安全圏に隠れながら生きる現状に
    不安定な美を見つけ出して
    ささやかに時間を乗り越えていく

    特にストーリーが重要なわけでもないし
    景色を綴った詩のような後腐れのない
    しかし物憂げな気持ちが残る映画である
    正に秋刀魚の味なのかもしれない

    英語のサブタイトルがもう一つの面白さだ

  • 笠智衆演じる父親が娘を嫁に出す話って、「晩春」とまったく一緒じゃないですか。正直、なぜこれを作ったの理解に苦しみますね。若い岩下志麻の魅力もわかりますが、原節子に較べるとなぁ。しかも、嫁にいく娘のほかに兄も弟にいるので、父親は決して孤独とはいえない。うーん、わからない。

  • ~メモ~
    【演出効果】
    ・建物の遠景を映してから、部屋へ
    ・カメラの位置は腰の辺りかそれより下(そこから見上げるような視点)
    ・会話のシーンでは真正面からのカットが多い
    →登場人物の視点になる
    ※全てのカメラが人物の視点ではない
    ⇔一方で気持ちにズレや照れのある会話は横向きの画
    ex)息子夫婦の会話
    ・同窓会におけるひょうたんは全て主人公目線のカメラで映されている
    →似たような境遇を持つ主人公からの親しみ?
    ・ひょうたんの家では寂しげな雰囲気とは逆の軽快な音楽が流れる
    →物語が重苦しくなりすぎるのを防ぐ、悲しみといよりは哀愁を印象付ける
    ・照明の具合で登場人物の心情を表現

    【物語】
    ・主人公一家、息子夫婦、同級生と若い妻、ひょうたんと娘などいくつかの家族の形がそれぞれ対比されながら登場する
    ・ひょうたんの姿は主人公に我が身を省みる契機を与える(娘を嫁に出すことを決心)
    ex)「つい便利に娘を使い過ぎた」
    ・息子夫婦はアパートに住み、妻が主導権を握る「新しい」夫婦の形として描かれている
    ・海軍時代の部下と遭遇し、彼は既に娘を嫁に出したことを知る
    →主人公に過去を振り返らせ、1つの区切りをつけるような気持ちにさせたのではないか
    ・娘は「今のままがいい」父も同じ気持ち
    →おそらく娘を持つ父にとって、嫁に出す前の成長した娘と過ごすのは最良のときなのだろう。しかしそれを延長しようと思えばひょうたんのように悲しい結果が待っている。
    ・友人と若い妻の様子が「今では不潔に見える」
    ・娘が嫁に行った後の主人公の寂しさ
    ex)「娘なんて育てがいないなあ」
      「お葬式ですか?」「まあそんなものだよ」

    【感想】
    当時の家族や住宅がカラーで記録されている映画として興味深く観た。まだ整備されきっていない街路があり、かと思えばビルの屋上には立派なゴルフ練習場。こうした風景がかつてこの日本にあったことを想像するのは楽しい。

    物語については、自分が本当の意味でこれを理解するのはまだまだ先になりそうだという印象を受けた。ただ、歳をとること、娘と別れること、戦争を振り返ること、全編を通して泣き笑いの情感が漂っているように思えた。23歳のときにこれを観たことを覚えておきたい。

    演出などについては多少聞きかじった知識があったのでバイアスのかかった視点で観ていたかもしれない。正直なところ、この監督がどう偉大だったのかはまだ分からない。

  • 誰も大げさに泣いたり怒ったり大笑いしたりしないのに、登場人物の気持ちがしみるように伝わってくる。深い。
    映像もストーリーも淡々としていながら、全く無駄なものはない。
    飄々としたユーモアのオブラートに包まれていて、テーマの重さに引くことなく、最後まで飽きずに見入ってしまう。
    岩下志麻姐さんに、こんなに可愛く初々しい時があったのだなあ。
    花嫁姿のあまりの美しさに、短いシーンながら、泣いてしまった。

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