検証・真珠湾の謎と真実 ルーズベルトは知っていたか (中公文庫) [Kindle]

制作 : 秦郁彦 
  • 中央公論新社
3.00
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 4
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (254ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 歴史は陰謀で動くほど単純でもなければ、何ほどかの陰謀の影のない歴史もない。陰謀を暴き立てて快哉を叫ぶのも、陰謀論に冷水を浴びせて悦に入るのも共に滑稽である。もちろん客観的な歴史の検証は重要である。その意味で本書は貴重な労作である。肝心なことはそこから何を学ぶかである。陰謀論を巡る論争の背後に見え隠れするのは、陰謀を企てる者が悪であり、それに踊らされた者が無垢なる犠牲者であるという幼児的思考である。陰謀論を一概に否定するつもりはないが、どうもこの傾向は陰謀論者に多いように思われる。

    日米開戦の局面においてどちらがより戦争をしたがっていたかと言えば、紛れもなくアメリカである。そのために日本を追い詰めるような様々な手練手管を用いたであろう。それを広義の「陰謀」と言うならば疑いなく「陰謀」はあった。狭義の陰謀を否定する著者達も、おそらくそれについては異論はないだろう。しかし、それはアメリカにとって戦争による利益がその不利益を上回っており、自らの利益最大化のために冷徹なリアリズムを貫いたというだけのことである。そして彼らの方が少々利巧であったというに過ぎない。

    またこの問題を巡るアメリカ国内での論争は日本におけるそれと異なる位相にあることも忘れてはならない。外交において他国を出し抜くのは当たり前とは言わぬまでも珍しいことではない。一方自国民を欺くのは余程のことでない限り許されない。大きな犠牲を伴うものであればなおさらである。だからルーズベルトが真珠湾攻撃を事前に知っていたかどうかは米国民にとって大問題だ。日本国民にとっては歴史の大局から見れば些事に過ぎない。一つ意味があるとすれば、将来他国に出し抜かれないためにも、開戦に至る情報戦を改めて検証し、今後の糧とすることをおいて他にない。そこをはき違えると問題の本質を見誤る。

  • 結論、ルーズヴェルトが知っていたとする客観的な証拠はない。というだけの本。学術的だけど、面白くはないね。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1932年,山口県生まれ。東京大学法学部卒業。官僚として大蔵省、防衛庁などに勤務の後、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。専門は日本近現代史、軍事史。法学博士。著書に、『日中戦争史』(河出書房新社)、『慰安婦と戦場の性』(新潮社)、『昭和史の軍人たち』(文春学藝ライブラリー)、『南京事件―虐殺の構造』(中公新書)、『昭和史の謎を追う』(文春文庫)、『盧溝橋事件の研究』(東京大学出版会)、『病気の日本近代史―幕末からコロナ禍まで』(小学館新書)、『官僚の研究―日本を創った不滅の集団』(講談社学術文庫)など多数。

「2023年 『明と暗のノモンハン戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

秦郁彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×