プルトニウムファイル [Kindle]

  • 翔泳社
5.00
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (409ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • テレビで見て 気になっていた内容の本です。

    放射能実験は長い間 アメリカで行われていたけれど
    ずっと隠されていたのです。
    それを 調べた ドキュメントです。

    最初は マンハッタン計画から始まります。
    戦時下において 核を使う場合の放射能の影響を調べるために 大量のお金をかけて 優秀な科学者たちを集めていった。

    広島長崎の被爆者の様子は 勿論調べた。
    さらに アメリカ国内で
    入院、通院してきた 症状の重い人
    末期のがん患者などに プルトニウムやウランを 注射していった。
    勿論 患者たちには 何を打ったのかなどの説明は一切なかった。
    しかし 時として 誤診で まだ長生きする人にも打ってしまった。

    長生きした人達は 長く病気に苦しめられた。
    けがなどで入院した人は 今まで元気だったのにと
    家族が不思議に思った。

    これらの 患者のファイルは 名前ではなく
    アルファベットと数字で表されていた。

    これらの ファイルは 人目につかないように
    隠されていった。

    戦争が終了しても ロシアとの にらみ合いで
    核兵器の開発はすすめられた。
    (ロシアのスパイがいたので すぐに追いつかれてしまった)
    そうした中 人体実験は続けられてしまった。
    巨額の研究費が当てが割れた医師たちは 
    人体実験を エスカレートさせていった。

    妊婦たちには 飲み物に混ぜて 栄養補給のためのように伝えて飲ませたりした。
    その後 胎児に悪影響が出たし 母体も痛めつけられた。

    そして 障碍者や 心身疾患などで 入院している人たちも実験対象にされていった。

    爆弾の実験場も 海上だと 遠いので
    国内で 行うようにして 被爆を調べる為に
    兵士たちを 各場所に 配置させて 様子をみた。

    核実験場の近くは危ないと思われたが
    住民を避難させると 悪い噂が立つことがまずいので
    避難させなかった。

    実際に空気中に飛散している放射能が
    肺に入り込んで 内部被ばくを予見できたにも関わらず
    軽く見積もって 注意喚起しなかった。

    これらの実験などは 対ソ連の為だったので
    かなり強引に行う事ができた。

    被爆についての危険度は わかっていたが
    軍の高官は 兵士など危険にさらしてもかまわないと 考えていた。

    そして 閃光失明実験も 行われた。兵士だけではなく
    兎も使われた。閃光で網膜が焼けた兵士や兎がいた。

    兵器製造の現場でも事故が起こり 被曝し 35時間で亡くなった。
    その遺体を 科学者たちが こぞって持っていった。

    10回以上行った 大気中核実験では
    毎回人体実験が行われていた。

    放射線投射実験では囚人をという意見も出たが
    戦後ナチの行った事を 裁いていたので
    同じような事をやるのは いけないという事になり
    ボランティアを募る方法を模索していた。

    研究者にとっては 広島・長崎は20万人以上の実験だったと語ってる。

    最終的には健常人ではなく 
    ガン患者を実験に使うという事になった。
    ガンを改善するために放射線を当てるということで
    多くに人が放射線を浴びせさせられた。

    刑務所では 一応希望を聞いた。
    中性子を当てて 睾丸がどうなるか調べた。
    囚人はこの実験でお金ももらえるし 喜んでいたものの
    のちに苦しめられることになった。

    他にも 食物連鎖を調べる為に
    草、牛、ミルク、人という 流れの実験も行った。

    そして 過去の実験について
    当時の医師などに問い合わすと 記憶にないとか
    今更掘り起こしてどうするのだという ような 回答で まともに答えてくれなかった。

    多くの軍人たちが 放射能人体実験について声をあげていった。
    1993年 ヘイゼル・オリアリーが長官となった。
    彼女は今までの政府の隠し事を 暴露していった。
    その中にこの 人体実験もあった。
    世論も興味を示しはじめていった。

    クリントン大統領がこの件について文書を公開せよという事になり 調査委員会もできた。

    多くの人たちが証言をしたが
    証言した人たちへの脅迫などもあったりした。
    残念ながら 時間がなくなり 委員会がまとめられずに終わってしまった。
    多くの人が 謝罪と補償から外れてしまった。

    95年に やっと クリントン大統領が謝罪をした。
    しかし もうこの時は当事者が 両方とも少なくなっていて 被害者の名前など 細かい事がわからず。
    研究者たちは 反省などなかった。
    むしろ 当時は必要だったと思い続けていた。

    この人体実験の時
    国などが 安全だと言っていたし
    被験者に対しては 問題ないとか 治療に役立つとか 嘘を言ったりしていた。
    いつの時代も 国が 「安全」という事は
    あやしむのが よさそうに思えました。
    日本の原発について 安全だと 主張しているけど
    本当のデータなどについては 未公開の部分が多い。
    だから あやしむのが いいのでしょう。

    ヘビーな内容でしたが 
    こういう事は どこの国でもありうると 思えた本でした。
    粘り強く調べてくれた 著者に感謝です。

  • 1945年から1947年にかけて、プルトニウムの人体に与える影響を調べるために18人にプルトニウム注射の人体実験が行われたという、ショッキングな事実を描いた本。著者は記号でしかなかった被験者を辿り、その名前を明らかにし、遺族に会って話を聞いてきた。

    まだ放射能の影響がよく理解されていなかったとはいえ、現在の放射能を巡る政府や世間の対応からは想像できない杜撰さである。余命が短いとされた人を選んだ(結果としてそうでなく長く生きた人もいた)とはいえ、その注射が原因で苦しんで死んでいった人も多い。そのような中でも、人体実験が継続され、核の機密のためということで本人に対してさえも秘匿され科学者と軍によって研究は進められた。

    本書では、筆者がこの問題を追いかけることとなったプルトニウム実験の他に、核爆発実験における兵隊への放射能の影響、妊婦829名に放射性鉄をに投与したナシュビル・ヴァンダービルド大学のトレーサー実験、孤児などの施設の子供に放射性物質を含むシリアルを食べさせ続けたファーノルド校実験、患者700人に対して無用な全身照射試験を行ったシンシナチ大学の実験、囚人131人に対して精子への放射能の影響を調べるための精巣照射実験、など数多くの放射能実験の事実を明らかにしていく。

    これらの多くはクリントン政権の文書公開の過程で明らかになったことだが、筆者はその経緯の検証や被験者となった人への謝罪と補償が十分ではないと指摘する。

    こういったことが実際に広く行われてはいたが、おそらくは極悪人たちの大掛かりな陰謀の下に行われたということではない。核戦争への強迫観念と科学者と政治家の名誉欲と保身によって結果として発生したものだ。その構造を明らかにして断罪と反省を行わない限り、歴史として同じことを違う形で繰り返すのだろう。ここに綴られた数々の実験を見て、過去のことであり、今はもうこんなことは起らない、と思うのは正しいことだろうか。そうではない、と筆者は不満足気に警鐘を鳴らす。政府や科学の情報公開と機密についても多くの問題を残していると言う。

    「知りながら害をなすな」、ドラッカーがプロフェッショナルの倫理として挙げた古代ギリシアの医者ヒポクラテスの言葉を思い出す。

    書物としては、章立ても親切ではなく、訳もいまいちこなれていない。それでも、核開発競争の下、何が起きたのか、そして何が起きえるのかということを考える上で知っておくべき内容であった。

全2件中 1 - 2件を表示

Eileen Welsomeの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×