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- / ISBN・EAN: 4988105101890
感想・レビュー・書評
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今回で観るのは何度目だろうか。
最近、小学生の娘が昔の(昭和初期くらいの)日本のマナー/作法に、謎な興味を示しているので、いっしょに観てみた。
彼女にとって生まれて初めて観る実写版邦画だ。シブすぎる。。。
それはさておき、同郷、尾道の三人のおじさん達が、戦争の心傷を表に出さないようにしながら(というのも彼らはみなわが子を戦争で失っているからだ)、東京の飲み屋で酔っ払って管を巻く場面で、今回もちょっと鼻の奥がツンとした。
ところが娘は酔っ払いにただただ大爆笑。
ちょっと複雑な思いになりつつも、文脈を知らない子どもの開かれた解釈に、なんだか常識に風穴を開けられた心地になった。そうやって観てもいいんだ、と。
(一つ些細な発見。尾道から上京した老夫婦が息子娘たちに邪険に扱われ熱海の安宿に追い払われる場面。熱海は海を介して尾道につながっていた。さらに、海はあの世にはつながっていたのだと今さら気がついた) -
「たかが世界の終わり」でムズムズするような家族のディスコミュニケーションを見せられ、こちらの作品をふと思い出した。
老夫婦の周吉ととみが、東京に暮らす子供たちに会いに尾道から東京に訪れる数日間を描きながら、家族関係という絶対的な繋がりを持ってしても、時の流れとともに脆く希薄なものになってしまう残酷さをじわりじわりと見せつけられていく。
これは勝手な思い込みだけど、1950年代の家族ってもっと親に対して丁寧な印象を受けたが、いまとちっとも変わらないことに少し衝撃を受けた。
杉村春子演じる長女の冷淡さや、長男の両親に対する無関心さに、なんか心がずっとザワザワしてしまう。
結婚して家族や仕事を持つことによって、大切だったはずの両親の存在が自分の人生にとって一番ではないないものとなり、逆に血の繋がりのない戦死した次男の嫁の紀子だけが、義両親を敬う姿に、大切な人を失った人だけが持つ慈愛の心を感じて、なにか切なかった。
美しくて、よくできた嫁である、原節子演じる紀子像は世の中の理想の嫁の姿を描いているようで、最初は不自然さすら感じたが、ラストで周吉に自分の狡さや弱音を吐露する場面で一気に泣いた。
始まりは淡々とあるがままの日常を描きながら、ラスト30分に誰の心にも響くように、作品の重みを乗せていく感じは小津安二郎監督が国外問わずに支持される理由なのだと思う。
老夫婦と共に旅をするように今とは全く違う東京の街並みを観光したり、小津安二郎監督独特なカメラワークによって、わたしもあの時代の生活の一部となり、戦後間もないあの時期にタイムスリップできたような気分になれたことも、この作品の魅力の1つだったと思う。
とにかく親を大切にしよう。そう思う今日この頃。 -
尾道で暮らす老夫婦が子供たちを訪ねて東京に出てくる。しかし子供たちは皆、自分たちの生活にばかり気をとられて、両親にぞんざいな扱いをしてしまうのだった。唯一、戦死した次男の未亡人だけが心温かく接してくれるのだったが。。。
冷たい子供や孫の態度に腹立たしくもあり、身につまされる思いでもあり。老夫婦の淡々とした態度が、派手に嘆くよりも何倍も強くそれを訴えかけてくる。終盤に末っ子と未亡人のやり取りである意味、観客の葛藤を代弁してくれるのだけれど、その当の未亡人があそこまでできるというのは、親しき中にも礼儀ありを意識せざるを得ない立場だからだろうという気もし、だけれどやっぱりなかなかできることではないと感心したり。
淡々と描かれる高度成長期の東京や熱海の風景も、親孝行なんてものが軽視されるような人の心を映しているようにも思えた。 -
古い東京。親の年頃に近づいて笠智衆の心を知る
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年末にNHK BSプレミアムで、亡くなられた女優「原節子(享年95)」を偲んで放映された「小津安二郎」監督作品の『東京物語 デジタル・リマスター版 /1963』を観ました。
-----story-------------
日本映画を代表する傑作の1本。
巨匠「小津安二郎監督」が、戦後変わりつつある家族の関係をテーマに人間の生と死までをも見つめた深淵なドラマ。
故郷の尾道から20年ぶりに東京へ出てきた老夫婦。
成人した子どもたちの家を訪ねるが、みなそれぞれの生活に精一杯だった。
唯一、戦死した次男の未亡人だけが皮肉にも優しい心遣いを示すのだった……。
いまでは失われつつある思いやりや慎ましさといった“日本のこころ”とでもいうべきものを「原節子」が体現している。
家でひとり侘しくたたずむ「笠智衆」を捉えたショットは映画史上に残る名ラスト・シーンのひとつ。
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初めて『東京物語』を観たのは20歳代前半だったかなぁ… 趣味的な映画を放映している映画館のオールナイトだったなぁ、、、
それ以来ずっと大好きな作品です。
1953年の作品なんですが、その後の核家族化を予想していたような内容、、、
尾道に暮らす「周吉」とその妻「とみ」が東京に暮らす子供たちの家を訪ねるが… 長男「幸一」も長女「志げ」も毎日仕事が忙しくて両親をかまってやれず、寂しい思いをする二人を慰めたのは、戦死した次男の妻「紀子」だった。
「紀子」はわざわざ仕事を休んで、二人を東京名所の観光に連れて行ってくれ… 「周吉」と「とみ」は、子供たちからはあまり温かく接してもらえなかったがそれでも満足した表情を見せて尾道へ帰った、、、
ところが、「とみ」は帰郷途中から体調を崩し、帰郷して数日もしないうちに危篤状態に陥る… 子供たちが尾道の実家に到着した翌日の未明に、「とみ」は死去した。
「とみ」の葬儀が終わった後、「志げ」は次女「京子」に形見の品をよこすよう催促… 「紀子」以外の子供たちは、葬儀が終わるとそそくさと帰って行き、「京子」は憤慨するが、「紀子は」義兄姉をかばい若い「京子」を静かに諭す。
「紀子」が東京に帰る前に、「周吉」は上京した際の「紀子」の優しさに感謝を表し、妻の形見だといって時計を渡すと「紀子」は号泣する… 「紀子」が尾道を離れ、がらんとした部屋で一人、「周吉」は静かな尾道の海を眺めるのだった。
うーん、名シーンがいっぱいで、目を閉じても色んなシーンが蘇えってきますね、、、
「原節子」が演じる次男の妻「紀子」が、現代では失われ(つつある?)た、日本人のこころを体現していて心を打ちますね。
そして、「杉村春子」が長女「志げ」を憎まれ役として好演しているのが印象的… 「杉村春子」って、巧いなぁ。
他にも名演、名場面がいっぱい、、、
何度観ても、イイなぁ… と感じさせる作品です。
-----staff/cast-------------
監督:小津安二郎
製作:山本武
脚本:野田高梧
小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄
衣裳:斎藤耐二
編集:浜村義康
音楽:斎藤高順
出演:
笠智衆 平山周吉
東山千栄子 妻・とみ
原節子 二男の嫁・紀子
杉村春子 長女・金子志げ
山村聡 長男・平山幸一
三宅邦子 妻・文子
香川京子 二女・京子
東野英治郎 沼田三平
中村伸郎 志げの夫・金子庫造
大坂志郎 三男・平山敬三
十朱久雄 服部修
長岡輝子 妻・よね
桜むつ子 おでん屋の女
高橋豊子 隣家の細君
安部徹 鉄道職員
三谷幸子 アパートの女
村瀬禪 平山実
毛利充宏 平山勇
阿南純子 美容院の助手
水木涼子 美容院の客
戸川美子 美容院の客
糸川和広 下宿の青年
遠山文雄 患者の男
諸角啓二郎 巡査
新島勉 会社の課長
鈴木彰三 事務員
田代芳子 旅館の女中
秩父晴子 旅館の女中
三木隆 艶歌師
長尾敏之助 尾道の医師 -
2022/04/12
保坂和志の本に小津安二郎の名前が出てたので気になって観てみた。
良かったなー。
会話が淡々と続く場面が多いのに単調に感じないし飽きない不思議さ
画面がサザエさんみたいだ