作者のやりたかった事が痛いほど伝わってくる一枚。褒めてません。シングルに効果音は入れちゃだめ!
………てだけでは余りに投げやりなので詳述してみます。
1曲目の、テレビ版の印象を置き去りに2番からまるで迷子になったかのようにどんどん別の曲になっていきつつも最後に戻る構成であったり、2曲目に1曲目をふと回想するようなアイデアであったり、3曲目の終わりに冒頭へ戻るかのような仕掛けを施している点など、面白いと思います。
歌詞にしても、各フレーズが物語に沿って編み出されている事を(アニメしか知らない筆者にさえ)容易に想像できる点、作者の作品への愛情も伝わってきて、このタイアップが決して投げやりや当てつけではない事がハッキリわかります。ここまでは好評価。
あ、歌詞カード読み辛い云々は正直どうでも良いです。テキストだけなら今時ググれば出てくるでしょう。むしろ女子力全開(?)な当て字のオンパレード、ちょっと笑いましたが、そういうビジュアル面で特異な表現に挑戦できるのは、画一化された配信も当たり前な世の中でパッケージ製品の優位点といえます。
今回この作品の最も許せなかったところは、このCDに期待されていたことが裏切られただけでなく、それまでの印象をも否定しているかのような暴力的アレンジでもって、こうして最初の公式バージョンとして世に出されてしまった、ということです。
このCDを求めていた人の大半は、アニメの映像と共に第一印象を持ったものと仮定するのですが、そういう人達が主題歌を含むCDに期待したのは、せいぜいテレビ版と同等もしくはやや拡張した程度のスケールだったことと思います。
その期待を裏切る自体は大いに構わないと思います。この主題歌には続きがある!本当はこういう歌なんだ!と驚かせる姿勢は歓迎します。
しかし、いざ発売されたこのCDを聴いてみると、1曲目の始めから早速げんなりしてしまったのが、まさに冒頭に挙げた効果音であったり、追加のナレーション(まさかのSascha!)。音質を犠牲にしてまで吹き込まれています。弦一徹ストリングスなんて豪華なオケを起用していながらです。
これらが吹き込まれている意図は、もっぱら曲を映像的に仕立てて盛り上げたい、ひいては3曲の連綿をより大河的に表現したい、という事と想像できますが、効果音と音声という記号を多用することは、その記号以外の印象について聴き手に自由に想像させる余地を完全に潰しているといえます。
少なくとも筆者には、作者の「この曲にはこういう風景を予め決めているのだ」という押し付けのもと、まるでPVを音だけ聴かされているようで、むしろ物足りなく感じ、それがCD版の第一印象として耳にこびりついてしまったのです。
まあ、「TVバージョンも収録していてくれれば」という意見をだらだら引き伸ばして書いているだけかもしれませんが、それこそ最も残念な点で、TVバージョンを収録していない点にすら作者の「このアレンジが正当だ、それ以外は認めない」という姿勢が表れているかのように穿って見えてきてしまい、大変印象が悪かったわけです。
勿論、このようなTVタイアップの印象と音源の印象をガラリと変える試みは特段珍しい事ではありませんので、前述で仮定した以外のルート(作者の作風を予め分かっている、など)でこの作品の発売を待っていられたのなら、純粋に興奮もできたかのかもしれません。
しかし、近年稀にみる熱量でもって製作されている(と感じる)当アニメの主題歌が初めて収録された作品に、こうも作者の我が強く反映されてしまった事は、やはり残念でなりません。
P.S.そうは言ってもTV版から得ているカッコ良さの虜になっている点から、★の数を1→2に修正しました。TV版が入っていればな!★4ぐらいは堅かったんだがな!