世にも奇妙な人体実験の歴史 [Kindle]

制作 : 赤根洋子 
  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 訳者あとがきにある、どのページにも、いかにもイギリス的なユーモアがそこはかとなく漂っている。と述べられているが、それも納得な文章である。
    例えば「愛は過ぎ去るが、梅毒は留まる」という格言の正しさは、ハネムーンで梅毒を移されたビート夫人によって実証された。とか、一九九二年、エリツィン大統領(珍しく素面のとき)などとウィットに富んだ冗談めかした皮肉や社会風刺が散りばめられた文章と合わせて舌蜂鋭く語られる常識人からの目からしてみればイッちゃってるよこいつら未来に生きてんなという感想を思わず漏らさずに負えないそんな奴らの姿は狂気ともいえるが、ある種の崇高さを携えている。成し遂げる為の信念や自己犠牲ともいえる献身もあるが、そこには好奇心や探究心に囚われ、得るために身をもって捧げ、見えざる力に魅了されてしまった者の哀しさもある。
    その中でアメリカの放射線学者ジョージ ・ストーヴァーの死ぬ直前の「有用な事実が一つ明らかになるなら 、それと引き替えに数人の科学者が死んだり手足を失ったりすることなど大したことではない 」がこの本書での象徴的な言葉として残っている。
    貧困者、囚人、孤児、そして、名もなき者への敬意と尊重は私も贈りたい。高い確率で巻き込まれる助手たちには哀悼の意を捧げる。

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