赤ひげ診療譚(新潮文庫) [Kindle]

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作品紹介・あらすじ

幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の"赤ひげ"とよばれる医長新出去定に呼び出され、医員見習い勤務を命ぜられる。貧しく蒙昧な最下層の男女の中に埋もれる現実への幻滅から、登は尽く赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第に惹かれてゆく。傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く快作。

感想・レビュー・書評

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  • 長崎へ遊学し蘭方医学を学んだ保本登。その知識を持って幕府の御番医になる心づもりでいたのに、江戸へ帰って来るとその話がなくなり、更には結婚を約束した女性は他の男に嫁いでいた。
    やさぐれた気持ちで、命じられた小石川養生所への勤務を始めるが、その所長である髭が特徴の通称「赤ひげ」医師の粗暴な振る舞いに反発する。
    けれど勤めているうちに赤ひげ先生の言動が合理的であり、弱者にも優しい理想の医師として映るようになる。
    『さぶ』が面白かったので手に取った本。
    読後感は似ていて、地に足を着けて地道に生きて行こう、という気持ちに。

  • 「さぶ」に引き続き読んだ。人情味あふれる内容で、隣近所が誰か分からず他人とのお付き合いが希薄になってきている現代の人たちに読んでもらって色々と感じ取ってもらいたい。

  • みんなそれぞれに持つ業深さ。 患者も、治す医師もまた人間である。 赦せる弱さと、許すまじき所業との危うい境目。 締め方の爽快さも素晴らしい。 さすがの名作。 やはり年に1冊は、山本周五郎作品。 読み続けて行こう。

  •  長崎で遊学後、幕府で出世するつもりでいた保本登。しかし、赤ひげこと新出法定が医長の小石川養成所での勤務を命じられる。当初養成所の仕事や赤ひげに反発する保本だったが。
     三船敏郎主演の映画は観ました。赤ひげと三船のイメージはぴったり合っています。腕が立つし腕っ節も強い赤ひげ。さらに患者に優しいだけでは無く、時に手荒く言葉も乱暴だったり。それでも無知と貧困がもたらす自身の無力さを、憂う様がとても感動的でした。

  • 黒澤明の赤ひげが大好きで、思い切って読んでみたらとてもとても面白かった。
    映画とは違う部分、色々あったけど、そこもまた楽しめた。
    医療という現場から少しでも貧しい人たちの力になろうと奮闘する赤ひげ先生と、そんな彼に反発しながらもいつしか見せられるようになる新米医師。
    赤ひげ先生は立派なのに決して偉ぶらず、自分がただの人間でしかないんだというものの見方とか、とにかくすごい。
    人の魂が感じられる、力強い小説。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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