さぶ(新潮文庫) [Kindle]

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  • 人足寄場。江戸末期に石川島にあったという軽犯罪者などの自立更生施設。たしか、歴史の教科書で太字の単語を覚えたような記憶がある(笑)。

    そこに無実の罪で放り込まれたしまった青年(栄二)と、その親友(さぶ)、将来の妻(おすえ)、飲み屋の友人(おのぶ)、そして人足寄場での様々なできごととそこでであった仲間たちとの人間ドラマの物語。

    初めから終わりまで、すべて栄二をとりまく事件の物語。この小説の主人公は間違いなく栄二だ。

    栄二のほうは、仕事ができ、めっぽう強くて、頭もよい。リーダーシップもあって、周りからの信頼も集める、とても魅力的な男。いっぽうさぶは、あまりぱっとしない、めだたない存在。

    なのになぜ、著者は「さぶ」というタイトルにしたのだろうか?

    人足寄場で知り合った老人から栄二が説教される場面がある。
    「世の中には生まれつき一流になるような能を備えた者がたくさんいるよ、けれどもねえ、そういう生まれつきの能を持っている人間でも、自分ひとりだけじゃあなんにもできやしない。能のある一人の人間が、その能を生かすためには、能のない幾十人という人間が、眼に見えない力をかしているんだよ、ここをよく考えておくれ、栄さん」

    こういう考えが反映されているのかなぁなどと考えたりもした。

    自分の職場がある浅草あたりが中心に話が展開される点にも興味を感じたが、恋愛あり、友情あり、また悪を徹底的にのしてしまう勧善懲悪の爽快感あり、そして何より最後のどんでん返しは、推理小説的要素すらある。

    いい本でした!(笑)

  • 人を 更生させる力がある本

    物語の中心人物は 栄二だが、著者は さぶ のような脇役にスポットを当てたかったのだと思う

  • タイトルに反して、栄二が主人公にも思えるが、さぶの献身的な友情は、ちょっとホモ?とも思いながら読み進めたが、本当にピュアな想いだったように、読後、感じた。

  • 『名作うしろ読み』で斎藤美奈子があんまりほめてるものだから読んでみました。
    やはりこの人の言うことは素直に聞いておくもんだ、と思いました。

  • 人を信じられること、人を愛すること。
    とてもくすぐったいことだけど、でもバカみたいな一途さでずっとちゃんと人を大事に出来るってこんなにも力強いことなんだなって、この小説を読んで感じた。
    みんな必死で生きている姿、登場人物一人ひとりみんなに人格があってないがしろにされていない。
    その中で、幸せを思い求める彼等の姿があまりにも印象的。
    一度読み出したら、最後まで止まらない。極上の面白さ。読み終わった瞬間、また読み返したくなる不思議。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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