- Amazon.co.jp ・電子書籍 (160ページ)
感想・レビュー・書評
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ブランスで映画化されている作品です。
不思議と引き込まれる世界感から冷たい空気さえ伝わってきます。官能とホラーを混ぜ合わせたような、どちらともつかないような?
女性ならではの繊細な観点からの深層心理の変化に悲しくもあり美しさを感じます。
そういう考え方・生き方もあるんだろうな、と活字から理解はできるんだけど、それは終わり方として良いのか悪いのかは各読み手次第で変わりそうな気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
#小川洋子 さんのお話はどれも少し不思議で静かに悲しいんだけど、読後は悪くない。読んだ後、しばらくぼうっとしてしまうんだけど。たぶん、小川さんはいつも「なにか決定的に失ったもの」を書いていて、それが私に刺さるんだと思う。
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不気味さが残る。著者の他の作品も読みたい。
p141
本人の意志や努力によって運命を切り開けると信じている人もいるかもしれません。けれど、意志や努力が既に運命なのだと、わたしは感じます。決して人生を否定しているのではありません。次の瞬間何が起こるか、わたしたちには少しも知らされていないのですから、やはり常に自分の力で選択したり判断したり築いていったりしなければならないでしょう。いくら運命が動かしがたいものだとしても、すべてをあきらめてしまうなんて愚かです。誰にとっても運命の終着は死ですが、だからと言って最初から生きる気力を失う人は、たぶんあまりいないはずです。 -
頭全部持っていかれちゃうような、強烈な物語が読みたいと言ったら、友人が薦めてくれた作品です。
吸い込まれるようにして、ほとんど一日で読み終えました。
「自由になんてなりたくないんです。この靴をはいたまま、標本室で、彼に封じ込められていたいんです。」
標本室で事務員として働くことになった主人公と、標本技術士である弟子丸との密やかな物語。
不思議で暗くて耽美な世界観にうっとりしました。
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小川さんの文体はなぜこんなに不思議な感情を呼び起こすのだろう?
読み進める中で、透明感、という単語が必ず頭に浮かぶ。きれいな水晶玉か何かを通して世界を見ているような気持ちになる。
愛に対する異なる反応を描く少し変わった世界の物語。 -
小川洋子作品は最近になって読み始めるようになったけど、文章がそこはかとなく仄暗い雰囲気があって、官能的というか艶みたいなのを感じる。
束縛したい、されたいっていうのをこんな形で表現できるもんなんだなーと目から鱗でもあった。靴に人間が浸食されていく…ねー。
「薬指の標本」も「六角形の小部屋」も結果がこうだって明確にされてるわけじゃなくて、敢えて書かずに終わってるんだけど、それが逆に想像力をかき立てる。ラストはどうなったのやら。
自ら標本にされてしまったのか?とかね。こうなると、その欠けた指が左手の薬指ってところも意図があったのかとか色々と想像を巡らせてしまう。 -
静かで清潔で美しい。夢みたいなのに、どこか覚えのある感覚。読み返す度に不思議なきもちになる。映画は正直あんまり響かなくて二回くらいしか観ていないけれど、原作は毎年どこかで読み返してるかも。浴槽で逢瀬したい
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小川洋子さんの物語に出てくる職業がいつも素敵で、標本室の事務職は特に憧れている仕事。時々読み返したくなって、レトロで秘密めいた標本室に想いを馳せてる。
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弟子丸氏が怪しくどこか恐ろしいのに惹かれて仕方ない主人公を見てああ若いなと思いました。でもそんな恋を人生に一度はしておきたいものです。
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ファンタジーチックでぼんやり話を終わらせる感じ。好き嫌い分かれそう。
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本がたくさんあって、好きに自由に読んでいいカフェで、席のそばにあってタイトルに惹かれて手に取ってみた
もちろんカフェの滞在時間では読みきれず、その後図書館で借りて読んだ
そういえば小川洋子は名前は知っているものの、『博士の愛した数式』を学生の頃読んだくらいだったな、と思い、読んだ記憶と読了感を薄らと覚えているだけで文体や好き嫌いの感想を思い出せなかった
設定自体は面白く、物語はどうなっていくのかな、とわくわくしたものの(昔の出版物、というのが大きいのだろうけれど)表題作ももう一方も、どちらの話も登場人物に気持ちが寄り添えず、寄り添えないままページは巡って、いつの間にか終わった、という感じだった。とりあえず読み終えた、という感じ。少し不気味な雰囲気は、好きな人にはとても刺さる気はするけれど、これは私向きではなかった。
他にも気になる作品はいくつかあるので、懲りずに作品には手を出していきたいと思う。 -
期待してたからか面白くなかったな。
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不思議で不気味で惹き込まれた
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一つ目は好きだったけど二つ目はあんまり。こういう訳分からない恋愛小説好き!
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表題作はたぶんあの人とあの人も好き。
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楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。人々が思い出の品々を持ち込む「標本室」で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは…。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。
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『薬指の標本』は、ちょっと村上春樹の世界観にも通じる印象。
まずは「標本にする」という行為に着目したセンスには感心する。
主人公の女性が、無意識のうちに危うい香りのする状況に入り込んでいく過程の、長閑な一方微妙に恐ろしげな空気感にの描出が秀逸と思う。
『六角形の小部屋』も日常から繋がったちょっと不思議な異空間を舞台にしている点は共通。
が、こちらの設定はややありきたりかな、という気はする。
むしろ、男には窺い知れない、女性にとっての恋愛感情(が消長する瞬間)が作品に刻み込まれているところにドキッとした。
いずれも小品だが、先を読ませる力はある。
が、オリジナリティという点では今一歩であるようにも感じた。